「性的合意」を描く舞台に主演俳優が思うこと。傷に蓋をしても「消える」わけじゃない【内田慈インタビュー】

望月ふみ
更新日:2025-01-14 06:00
投稿日:2025-01-14 06:00

蓋をしたことは「見えない」だけで、消えてはいない

――大変な決断をされました。

 とてもきつい作業でしたが結果、「私は1ミリも悪くなかった」と、何年も経って、ようやく自分を認めてあげることができたんです。私は相手をつるし上げてその人の人生をボロボロにしたいと思っているわけではありませんでした。

 ただ、自分がなぜ蓋をしてしまったのか、どうして言えないのか、言えなかったのか、埋もれてしまったのかを知ってもらいたくて書きました。

――様々な「違和感」を掘り下げていきたかった内田さんですから、再び向き合うという大変なパワーを出せたのかもしれませんね。

 蓋をしてしまったことって、見えないだけで、存在していて消えないんですよね。生きていくなかで、1人で抱え込んだ違和感に、対抗する知識もないし、どう向き合えば分からないなか、忙しい日常に追われて時間が過ぎていく。それでもやっぱり消えていなくて、忘れたと思ったころに、また頭の中をかすめる。

――たしかにそうですね。

「違和感」を流していくのは、私にとって「違和感」です。『Yes Means Yes』にもさまざまな問題が扱われていますが、作品の力を、みんなの力を借りて、これからも違和感にじっくりと向き合い、そして他者に寄り添いたい。結果として何かが誰かに届けばすごく嬉しいし、自分にも還ってくるんです。

 今回の舞台はそれが、ステキな形で実現できたのでは? と思える作品です。ぜひ劇場にいらしてください。

内田慈さんプロフィール

内田慈・うちだちか
1983年、神奈川県生まれ。オーディションにより早くから新進気鋭の作家・演出家の作品に数多く出演し舞台にてキャリアを積む。08年に橋口亮輔監督『ぐるりのこと。』でスクリーンデビュー後は、舞台・映画・ドラマ・声優、ナレーターと、ジャンルを問わず活躍の場を広げている。最新の出演作に映画『ありきたりな言葉じゃなくて』、ドラマ『それでも俺は、妻としたい』、主演舞台serial number12『Yes Means Yes』。

主演舞台serial number12『Yes Means Yes』は2025年1月10日(金)~1月20日(月)下北沢ザ・スズナリにて公演中。
詳細 https://serialnumber.jp/next.html

望月ふみ
記事一覧
70年代生まれのライター(ときどき撮影)。映画やドラマ、タレント本などのエンタメ関連記事を執筆。現在はインタビューが中心で、月に20本ほど取材。ねこ検定上級、2級愛玩動物飼養管理士取得と愛猫家街道をばく進中。

X

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


ギャラ飲み収入だけで年400万円の貯金達成!元キャバ嬢が浪費しないワケ
 経営者や著名人、人気のインフルエンサーも利用する「ギャラ飲み」なるサービスって知っていますか? 東京都内のみならず、全...
【求む2期生!】頑張るシンママの収入UPをサポート☆応募して豪華プレゼントGET!
 日刊ゲンダイが運営する女性webメディア「コクハク」では、メディア制作に協力してくださる「コクハクリーダーズ第2期生」...
雪解けの水とハミングと。
 雪解けの水がすごい勢いで山からくだってくる。  流れの音に耳をすませば春の訪れを知る。  澄んだ空気を感じ...
ぽかぽか陽気♪ ノスタルジーな小道で見つけた“たまたま”君
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
「立ちんぼ女子」は売春行為や街娼を指すことばではなかった
 知っているようで意外と知らない「ことば」ってたくさんありますよね。「女ことば」では、女性にまつわる漢字や熟語、表現、地...
朝立ち、オマン湖、チンチン!普通の会話なのに下ネタかました的なLINE
 普通に会話しているだけなのに、相手からしたらどう考えても下ネタにしか聞こえない言葉ってありますよね。引きつった相手の表...
大谷の“一平ちゃん騒動”で不安 友人との金銭トラブルQ&A~弁護士解説
 ドジャースの大谷翔平(29)の専属通訳を務めていた水原一平氏(39)が、違法賭博に関与したとして球団から今月20日、電...
【スナック超入門編】どんな場所?若葉印のホステスが実感する5大特徴
 みなさんは、そもそも「スナック」がどんなところかご存知でしょうか?  キャバクラやガールズバーとは何が違うの?...
高級クラブのホステス→ギャラ飲み嬢に 面識なしで突然10万円ギフトが…
 経営者や著名人、人気のインフルエンサーも利用する「ギャラ飲み」なるサービスって知っていますか? 東京都内のみならず、全...
「正しくないこと」が「美しくない」とは限らないと知った
 北海道で暮らす、まん丸で真っ白な小さな鳥「シマエナガちゃん」。動物写真家の小原玲さんが撮影した可愛くて凛々しいシマエナ...
松田聖子まさかの中大法学部を卒業! 通信制の学び直しで成功する人は?
 先日、歌手の松田聖子さん(62)が中央大学法学部の通信教育過程を卒業したことが話題になりました。近頃、通信制大学で学び...
瞬き厳禁! 春到来の歓びを表現する黒“たまたま”を見逃すな
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
スタレビの名曲が聞きたい!仏教と深い関係のある「木蓮」とその仲間たち
 猫店長「さぶ」率いる我が愛すべきお花屋は、ただいま卒業式や送別など春特有のイベント仕事で、いつにも増して花まみれの毎日...
“炎上常連”麻生さん級の「ルッキズム失言」していませんか?
 最近、よく耳にするのが「ルッキズム」という言葉です。政治家や芸能人が、何気なく言った一言で「ルッキズム発言だ」と叩かれ...
女の敵は女だから?忘れた頃にぼっ発する「専業主婦論争」をガチで考える
 セックスレスやセルフプレジャー、夫婦の在り方などをテーマにブログやコラムを執筆しているまめです。  X(旧Twi...
職場の同僚ランチが苦痛すぎる…一人の時間を確保する4つの冴えた処世術
 業務内容へのストレスより、職場でのランチタイムが苦痛という人は多いですよね。正直、仕事で疲れているのに、休憩時間まで同...