ヤムおんちゃん草吉はあんぱん代をきっちり集金。ジャムおじさんとは違う“先導”に期待膨らむ

桧山珠美 TVコラムニスト
更新日:2025-04-07 17:20
投稿日:2025-04-07 17:20

第2週「フシアワセさん今日は」#6

 草吉(阿部サダヲ)のあんぱんを食べて、生きる力をもらった朝田家。羽多子(江口のりこ)は内職の仕事を始め、釜次(吉田鋼太郎)たちは石屋の仕事に精を出す。こうして結太郎(加瀬亮)の死をなんとか乗り越えようとしていた。

 一方、登美子(松嶋菜々子)が帰らず不安がる嵩(木村優来)に、寛(竹野内豊)はある少年雑誌を見せる。目を輝かせた嵩は、漫画の世界に没頭する。そんなある日、メイコ(永谷咲笑)が釜次の作業場に入り込み…!

【こちらもどうぞ】初週からブチかまし!細部に神経が行き届いた作品だと印象付けた中園脚本

【本日のツボ】

有言実行のヤムおんちゃん

 ※※以下、ネタバレあります※※

「あんぱん」第2週スタートです。先週、金曜の放送を見終えたあと、あまりにも楽しかったので、もう1度最初から通して見直しました。もちろん土曜の総集編も拝見しました。おかわりもおいしい「あんぱん」です。

 その先週ですが、のぶにとっては父、釜じいとくらばあ(浅田美代子)にとっては息子、そして、羽多子にとっては夫である結太郎を突然亡くした朝田家の人びとが、ヤムおんちゃんの作ったおいしいホカホカのあんぱんに笑顔を取り戻し、生きる力を貰うというとてもハートウォーミングなお話でした。

 たしかにあの時、ヤムおんちゃんは「お代はあとでちゃんといただきますよ~」と言っていました。言っていましたが、本当に集金に来るなんて…。

「その節はホカホカのあんぱんをありがとうございました。あんなにおいしいあんぱんは食べたことないがです」と羽多子が言えば、「おかげさまで、あても力が出ました」とくらばあも感謝します。

「あ~それはよかった。では、ひぃ、ふぅ、みぃ、よぉ。おとな4人で40銭です」とさらっとあんぱんの代金を請求するヤムおんちゃん。

「えっ?」「えっ?」

 朝田家の人びとの反応と同様、私たち視聴者もまさか代金を請求するとは思いもしませんでした。

「ほんまに銭取るがか?」と釜じい。

「当たり前でしょ。言いましたよね? お代は後でいただきますって」

 ヤムおんちゃんの言葉に「人の弱みにつけ込んでぇ、足元見おってぇ」と憤る釜じい。

「失礼ですけど、あんたが一番バクバク食べてたでしょ?」。そこに、両手であんぱんをバクバク貪る釜じいの回想シーンが入り、「そうだ。あんたあんぱんおかわりしてたから、あんたからは20銭いただきます。しめて50銭です」とヤムおんちゃん。

「あこぎな商売しゆうねや~」「おまんみたいがなにビタ一文払うか~」と飛びかかろうとせんばかりの釜じいをみんながひきとめ、結果、くらばあがへそくりで支払います。

 代金を受け取り、「毎度あり~。またいつでもどうぞ~」と立ち去ろうとするヤムおんちゃんをかばうように、「おじさんは悪い人じゃないんです。ただ、お金が無くて困ってて。汽車賃も払えない…」と嵩。

アニメ版ジャムおじさんとは違う


 たしかに材料費だってかかるでしょうし、ヤムおんちゃんにも生活があるわけで、料金を請求するのは、当然のことです。なのに、朝田家の人たちはともかく私たち視聴者も「お代はあとで」と言いながら、結局、取らないんだろうなあと勝手思っていたのは、無意識にヤムおんちゃんをアニメ版「アンパンマン」のジャムおじさんに重ねていたからかもしれません。

 アンパンマンに新しい顔を提供する際、「アンパンマン、お代金はあとで」などとジャムおじさんが言うのを見たことありませんでしたから…。

 労働に対し正当な対価を要求するのは当たり前のこと。いいひとではご飯が食べられません。とはいえ子どもから代金をとらないという優しさもあります。

 釜じいとのやり合いも絶妙で、「あんぱん」前半の名物になりそうな予感。そんな有言実行のヤムおんちゃんが、嵩とのぶの人生にどんな影響を与えてくれるのか、ますます楽しみになりました。

桧山珠美
記事一覧
TVコラムニスト
大阪府大阪市生まれ。出版社、編集プロダクションを経て、フリーライターに。現在はTVコラムニストとして、ラジオ・テレビを中心としたコラムを執筆。放送批評誌「GALAC」、日刊ゲンダイ「あれもこれも言わせて」などで連載中。

エンタメ 新着一覧


りつ子スパークのラインダンス必見!ワクワクズキズキと笑顔が溢れる回
 羽鳥善一(草彅剛)作曲二千曲記念ビッグパーティーの日が近づいてくる。羽鳥はスズ子(趣里)たちに、パーティーで余興をして...
桧山珠美 2024-03-11 15:30 エンタメ
“ユーミンドラマ”で見せたクソ女の夏帆、そして金子大地と中島歩に注目!
この投稿をInstagramで見る 【公式】「ユーミンストーリーズ」オムニバス夜ド...
真木よう子“まっけんセクハラ発言”はわざと?昭和の価値観をエンタメ化説
 ドラマ『SP 警視庁警備部警護課第四係』(2007年/フジテレビ系)や『最高の離婚』(2013年/同)などでの演技が好...
堺屋大地 2024-03-09 06:00 エンタメ
第111回ブギウギの“三大なぁぜなぁぜ”…畑仕事する農家の手じゃない!
 梅吉(柳葉敏郎)が亡くなった。葬儀では松吉(木内義一)が号泣しながら、遺影の自慢をする。  そんな中、スズ子(趣...
桧山珠美 2024-03-08 15:50 エンタメ
死の間際までユーモア忘れず、父娘で歌った「父ちゃんブギ」
 久しぶりに香川に戻ったスズ子(趣里)は、梅吉(柳葉敏郎)が写真館を切り盛りし、繁盛していた話を聞く。梅吉が大切にしてい...
桧山珠美 2024-03-07 15:40 エンタメ
NHKさん、経費削減のあおりですか?スズ子の米公演シーンは写真だけ
 アメリカ行きを決めたスズ子(趣里)だったが、愛子(小野美音)は置いていかれることにすねてしまう。  旅立ちの直前...
桧山珠美 2024-03-05 15:35 エンタメ
“電撃婚”大谷翔平の心を射止めた妻はプロ中のプロ彼女。目標はダル夫婦?
 2月29日16時42分のことでした。NHKで衆院政治倫理審査会(政倫審)の中継を見ていたら、<大リーグ・大谷翔平選手 ...
【台湾ルポ】台湾人の祈り方「拜拜」が酔狂的でエキセントリックすぎる!
 日本からのアクセスも良く、週末や連休を利用して旅行が楽しめる海外として人気の「台湾」。台湾グルメを満喫したり、観光スポ...
2024-03-07 18:24 エンタメ
「買い物ブギ」圧巻のステージ!“キングカズ長男”覚醒、スズ子の虜に
 ワンマンショーに向けて稽古や衣装合わせが続く中、スズ子(趣里)は新しいマネージャーのタケシ(三浦獠太)の様子を見て不安...
桧山珠美 2024-03-01 14:30 エンタメ
タナケン「業界」発言に違和感 喜劇界でも演劇界でもないワードチョイス
 タナケン(生瀬勝久)が入院したと聞き、山下(近藤芳正)とスズ子(趣里)は、タナケンの見舞いに行くことにする。  ...
桧山珠美 2024-02-27 15:05 エンタメ
NHKさん、スーパー家政婦・大野さんのレシピ本出版のご予定は?
 大野(木野花)が家政婦としてスズ子(趣里)の家に来て半年、愛子(小野美音)はニンジンを食べられずにスズ子を困らせていた...
桧山珠美 2024-02-26 16:00 エンタメ
芦田愛菜が少し嫌いになりそう…「さよならマエストロ」本筋以外が楽しみ
 イケメンの息子はやっぱりイケメンです。TBS日曜劇場「さよならマエストロ~父と私のアパッシオナート~」を見ながら、確信...
恐るべし、大野さん! おてんば愛子を“瞬殺教育”、白い割烹着は信頼の証
 茨田りつ子(菊地凛子)の紹介で、大野晶子(木野花)がスズ子(趣里)の家政婦として働くことになる。  この日のスズ...
桧山珠美 2024-02-24 13:55 エンタメ
錦戸亮“主演抹消過去”もバネに復活!山ピー、平野ら民放地上波で続々躍動
 2月23日、「不適切にもほどがある!」(TBS系、以下「ふてほど」)に錦戸亮(39)がゲストで登場し、大反響を巻き起こ...
こじらぶ 2024-02-24 16:04 エンタメ
痛快すぎるりつ子のひと言、“眼鏡会計ババア”でざわつかせた女優登場!
 スズ子(趣里)は、羽鳥善一(草彅剛)に新曲にはブギの歌を書いてほしいとお願いする。  はじめは、ブギが続けば面白...
桧山珠美 2024-02-22 15:05 エンタメ
デカッ!急成長を遂げた2歳の愛子にびっくり、愛助さん似?
「東京ブギウギ」に続き、「ジャングル・ブギー」もヒットさせたスズ子(趣里)は、仕事に育児に大忙しの日々を送っている。 ...
桧山珠美 2024-02-19 17:00 エンタメ