広末涼子は世間と時代の破壊者たれ!キルケゴールを読みこなす彼女の一面から見えるもの

更新日:2025-04-20 17:03
投稿日:2025-04-20 17:00

【週刊誌からみた「ニッポンの後退」】

「広末涼子は菩薩である」

 これは作家・五木寛之が幾千万の戦後のコピーの中でもベスト3に入る傑作だとした、評論家・平岡正明の「山口百恵は菩薩である」(講談社)の二番煎じである。

 百恵と広末がどうつながるのかは後で触れるとして、一人の貧しい少女が歌手となり、ひたむきな歌の力で日本を浄化した。優雅な美しさに至った百恵は菩薩といわれるにふさわしいと、約半世紀前に平岡は熱く論じた。往時、“時代と寝た女”といわれた百恵の他に中森明菜、松田聖子、桜田淳子がいた。

 明菜は近藤真彦との愛憎の果てに自殺未遂を起こし、芸能活動を一時休止。聖子はその近藤とのニューヨークの「あいびき」をはじめ、数々の浮名を流し、桜田は統一教会入信問題で芸能界から去っていった。

 平岡は、フォークソングには反体制はあるが、反社会性はない。反社会性の核心は破壊であるとして、「ジャズ、艶歌、ロックンロールにはこの方向がある」と支持した。

 時は移り、幾多のアイドルが輩出した。しかし、浮気や不倫は掃いて捨てるほどあったが、時代を破壊するようなパワーを持った女性はついぞ現れなかった。

 私は、広末涼子が起こした今回の「事件」を見ていて、彼女が久々に現れた菩薩ではないかと思ったのである。

 彼女は中学時代から芸能活動を始め、1996年、NTTドコモポケベルのCM「広末涼子、ポケベルはじめる」で一躍人気アイドルになった。翌年、「MajiでKoiする5秒前」で歌手デビューし、紅白歌合戦にも出場してトップアイドルの座を確かなものにした。

 しかし、事務所やファンから押し付けられた「清純派」のイメージに苦しんでいた彼女は、自らそれを破壊していくのである。多くの男たちにまみれ、出来ちゃった婚や離婚を繰り返し、2023年には有名シェフとのダブル不倫が発覚し、相手の家庭まで破壊してしまった。そこには映画「鉄道員(ぽっぽや)」で演じた女子高校生の可憐さは跡形もない。

 その上、今回の不可解な衝突事故と看護師暴行容疑での逮捕。メディアは、広末はヤク中か精神的におかしいのではとはやし立てている。

 しかし、彼女が3年前、41歳の時に出した「ヒロスエの思考地図」(宝島社)によると、学生時代から哲学書を読むのが好きだったという。S・キルケゴールの言葉を引用して、「今までの価値があったものに価値を見出せなくなったり、今までの仕事や生き方に関心を失い始めたりする。そんなことが、私にもそろそろ起こるのだろうか?」と不安を口にしている。三木清の「怒り」についての言葉を引用して、「どんな状況であろうと、どんな理由があろうと自分でアンガーマネジメントすることが重要。だって大人なんだから。自分で自分の『落とし前』はつけましょう」と言いながら、「けれども、どんな人でも“喜怒哀楽”があって当然。人間だもの」と肯定もしている。この本を読む限り彼女は心を病んではいない。

 私は、広末が破壊しようとしているのは自己だけではなく、マスコミやパパラッチ、平和ボケして惰眠を貪っている日本人ではないのか……と考えている。

 4月16日に釈放された広末は、悟りを求める者(菩薩)として、百恵の何倍もの破壊力で、自らの信じる道を突き進むのではないか。その先にあるのは安穏か悲劇だろうか。 (文中敬称略)

(元木昌彦/「週刊現代」「フライデー」元編集長)

エンタメ 新着一覧


【おむすびにモヤっと】商品開発7年目なのに、なっちゃんの知識不足設定と結への謝罪が不憫すぎる
 結(橋本環奈)と菜摘(田畑志真)は、考案したコンビニ弁当がなぜダメだったかを製造担当の管理栄養士から聞き、開発を断念す...
桧山珠美 2025-03-05 18:15 エンタメ
【おむすびにモヤっと】変顔炸裂の第22週。名も無き管理栄養士が大手コンビニで商品共同開発の“ミラクル”
 結(橋本環奈)は仕事柄、栄養指導をする立場にあるため、患者から怖いとか厳しいと言われ、そのことに複雑な気持ちになってい...
桧山珠美 2025-03-03 17:30 エンタメ
大倉忠義“授かり婚”でますます追い風…イクメン俳優花盛り! 林遣都は赤ちゃん言葉で子育て奮闘
 大倉忠義(39)、結婚! またひとり独身イケメンが旅立ってしまいました。お相手は<一般女性>とのこと。またしても<一般...
【朝ドラおむすび】通夜の親族席最前列に知らない中年女2人…永吉の娘? 一言の台詞もなく忽然と姿を消した
 聖人(北村有起哉)の大学進学用のお金を勝手に人に貸した永吉(松平健)の行為が、米田家の呪いである人助けだったのかどうか...
桧山珠美 2025-03-01 06:00 エンタメ
【朝ドラおむすび】気の毒過ぎる委託会社の栄養士・柿沼。大鶴義丹チョイ登場で気になる“大鶴の恩返し”
 結(橋本環奈)は、聖人(北村有起哉)に永吉(松平健)が大学進学用のお金を何に使ったのかを話し始める。結は米田家の呪いの...
桧山珠美 2025-02-26 17:30 エンタメ
SNSで目立つ「新生timelesz」への厳しい声 オーディション番組なぜ荒れる? マニアでも予想不能な展開に
 話題のオーディション番組『timelesz project -AUDITION-』(Netflix)が最終回を迎え、待...
【おむすび】米田家4代食卓トークにモヤっ。盛り上がらないドラマで盛り上がらない万博の“宣伝”効果は?
 福岡・糸島に住んでいる永吉(松平健)と佳代(宮崎美子)が神戸にやって来る。結(橋本環奈)はてっきり聖人(北村有起哉)の...
桧山珠美 2025-02-24 17:30 エンタメ
新生timeleszに国民的人気グループの目。タイプロ開催で佐藤、菊池、松島メンバーの3人が自ら選んだ意義
 旧ジャニーズのグループのなかでも「Sexy Zone」という名前はいかがなものかと常々思っておりました。中国表記だと「...
現役芸人が見た『ホットスポット』のすごさ。お笑いのテクをドラマに落とし込む「バカリズム脚本」の妙
 バカリズムが脚本を担当したドラマ『ホットスポット』(日本テレビ系、日曜22時30分~)が話題だ。毎回の放送終了後にはS...
帽子田 2025-02-23 06:00 エンタメ
【最新回のおむすびにモヤっと】優秀ドクターと管理栄養士の描き方に違和感。次週予告編では喪服姿ちらり…
 結(橋本環奈)たちは、病院で外科医の蒲田(中村アン)から聖人(北村有起哉)の胃がんの手術がうまくいったが、今後5年は経...
桧山珠美 2025-02-22 14:37 エンタメ
KAT-TUN解散で「男性アイドル25周年の壁」説が再燃…SMAP、嵐も超えられないその理由とは
 2月12日、STARTO ENTERTAINMENT(旧ジャニーズ事務所)所属のKAT-TUNが、3月31日をもって解...
こじらぶ 2025-02-22 06:00 エンタメ
矢口真里の「クローゼット不倫」は許された?『Mステ』出演に誕生日会、異様な精神力を高めた結果の大復活
「クローゼット不倫」というパワーワードを生み出してから早10年以上。元・モーニング娘。の矢口真里が、1月20日に42歳の...
堺屋大地 2025-02-20 06:00 エンタメ
【きょうの朝ドラおむすび】北村有起哉と緒形直人の“神回”。証明写真機で“プリ”するおっさんず
 胃の精密検査で気を病む聖人(北村有起哉)は、孝雄(緒形直人)に誘われて大阪の街をおしゃれして歩くことに。そして、聖人は...
桧山珠美 2025-03-12 23:48 エンタメ
【おむすびにモヤっと】おかずのメニューを聞かずに1300kcalをも導き出す“徳積みヒロイン”
 翔也(佐野勇斗)の母・幸子(酒井若菜)が栃木から神戸に孫の顔を見に来て、イチゴ栽培のおもしろさを語る。愛子(麻生久美子...
桧山珠美 2025-02-18 17:30 エンタメ
「KAT-TUN電撃解散」への本音。亀梨和也と田中みな実とくっつくのは、やっぱり嫌だな
“♪ギリギリでいつも生きていたいから~”と私たちの前に現れたKAT-TUN。2006年3月のことでした。結成から5年、デ...
【最新回の朝ドラおむすび】蒲田医師(中村アン)は大門未知子をリスペクト?“パワハラ”の不評が気になる展開
 結(橋本環奈)は、勝手に退院しようとする低栄養の患者・麻利絵(桧山ありす)の病室に行き、このまま退院したら一生後悔する...
桧山珠美 2025-02-15 06:00 エンタメ