「NHKの顔」だった元アナ川端義明さんは退職後、いくつもの不幸を乗り越えていた

更新日:2025-05-05 17:03
投稿日:2025-05-05 17:00

【あの人は今こうしている】

 川端義明さん
 (元NHKアナウンサー/73歳)

 テレビを見ない人が増えているが、夜のニュース番組、なかでもNHKの7時からのニュースは必ずチェックするという人は今も多いのではないか。1993年に大型ニュース枠としてスタートした「ニュース7」の初代キャスターを務めたのが川端義明さんだ。今どうしているのか。

  ◇  ◇  ◇

 川端さんに会ったのは、JR渋谷駅から徒歩5分の「セルリアンタワー東急ホテル」のガーデンラウンジ「坐忘」。

「このホテルはNHKの近くだから、職員時代には取材などでよく来ていました。今も後輩らに会いに、渋谷にはときどき来ます。でも、渋谷の街は再開発で変わってしまった。寂しいですね」

 こう語る川端さん、テレビ画面に出ていた頃とくらべ、痩せたようだし、だいぶ風貌が変わった印象だ。

「テレビに出ていた頃は、人生で一番太っていたかも。あれから健康のために走ったりして、ダイエットしたんですよ」

 川端さんがアナウンス職を離れたのは2003年、51歳の時だった。

「僕はただ原稿を読むだけではなく、取材もするNHKアナウンサーのハシリで、選挙速報や昭和天皇崩御などを原稿なしで報じ、アドリブを得意としていました。ところが、次に何を言えばいいか言葉が出てこず、頭が真っ白になる時があるように。これは、いつか世間をミスリードして迷惑をかけるかもしれないと恐れ、自分から上司に申し出てテレビ画面から去ったんです」

 その後は沖縄放送局局長などを経て、57歳の役職定年でNHKサービスセンターに転籍。NHKホール支配人などを務め、65歳で定年退職した。

動静脈瘻で開頭手術、その4年後には27歳の次女が亡くなり…

「今は新宿にある目白大学メディア学部メディア学科の学生に、3カ月に1度ほどジャーナリズムとは何かなどの講義をしています。また去年9月から地元・鎌倉の生涯学習センターで希望者を募り、11人に詩や文芸作品の朗読の指導を月3回。定年後することがなくて、家でボーッとしているものだから、『やったら?』と妻が勧めてくれて始めたんです」

 だれもがぶつかる「定年後のカベ」だ。

■定年後、やっと見つめた趣味はピアノ

「定年になったら、趣味の自転車やランニングを思いっきりやってやるぞ! と思っていたけど、いざ定年を迎えるとやらないんですよね(笑)。それで、自転車とかは趣味ではなく、仕事の合間の気晴らしだったんだと気付きました。2年前にピアノを習い始め、去年の発表会では妻と連弾を披露。ようやく趣味らしい趣味ができました(笑)」

 いい奥さんで、よかった。

「妻は、立命館大学時代に所属していた放送研究会の1年後輩。妻が卒業後すぐに結婚し、転勤族の僕に東京へ来るまで10年間、ずっとついてきてくれました。妻にもやりたいことがあったはずだよなと後々気づき、10年以上前からねぎらいの気持ちをこめて、毎日野菜スープなどの朝食を作っています」

 2人の娘さんに恵まれ長女は大手企業勤務のエンジニアと結婚。小学校5年生の孫娘が1人。

「次女は僕がNHKホールの支配人をしていたとき、27歳の若さで亡くなりました。こんなに悲しいことがあるのかと思うほどでしたね。それから1年ぐらい、僕はうつ状態でした」

 その4年前の08年には、脳動静脈瘻という脳内の動脈と静脈がつながってしまう珍しい病気を発症。

「ひどい頭痛があり、開頭手術を受けました。幸い、一過性のもので、後遺症も再発もありません」

 テレビ画面から去った後の川端さんには、大変な苦労があったのだ。

 京都出身の川端さんは小学生の頃からアナウンサーに憧れ、75年、NHKにアナウンサーとして入局。室蘭、山形、宇都宮を経て85年、東京アナウンス室へ。「NHKモーニングワイド」キャスターなどを歴任し、93年にスタートした「NHKニュース7」の初代キャスターに。“NHKの顔”として活躍し、96年には「NHKスペシャル」の阪神大震災シリーズでギャラクシー賞を受賞した。

「アナウンサー人生を今振り返ると、周りがいつも僕を支え推してくれた。そのおかげで順風満帆だったんだなとつくづく思います」

 鎌倉市内で夫人と2人暮らしだ。

 (取材・文=中野裕子)

▽川端義明(かわばた・よしあき)1951年京都生まれ。立命館大学を卒業しNHKにアナウンサーとして入局。93~95年、「NHKニュース7」の初代キャスター。65歳で退職しフリーアナウンサーに。

エンタメ 新着一覧


「そんな若じゃき、ワシは愛したじゃが」竹雄の言葉に蘇る2人の歴史…
 逸馬(宮野真守)が連れてきた資産家の永守(中川大志)は、万太郎(神木隆之介)の図鑑の出版や標本の保存に投資をしたいと申...
桧山珠美 2023-09-16 16:20 エンタメ
田中みな実「三太郎」CMの鬼嫁が好評、元彼ネタ散りばめ行きつく先は?
 フリーアナウンサーで俳優の田中みな実(36)が絶好調だ。12日にはティファニー表参道のオープニングイベントにベージュの...
野暮な演出はナシ!万太郎と早川(宮野真守)感動の再会までテンポよく
 徳永教授(田中哲司)から、国が推し進める神社合祀令を神狩りだと断じ、反対する南方熊楠には深入りするな、と釘を刺された万...
桧山珠美 2023-09-14 14:50 エンタメ
配役に一本の筋…小林一三役・海宝直人は日本のミュージカル界を背負う男
 日本全国の植物を載せた図鑑がまもなく完成しようとしていた。が、浮かない様子の万太郎(神木隆之介)。これまで応援してくれ...
桧山珠美 2023-09-11 16:10 エンタメ
ジャニーズ会見で水がぶ飲みの東山新社長、イノッチは結婚指輪はめる派だった【写真付き】
 先週のトピックはなんといっても、7日に行われた故・ジャニー喜多川氏の性加害問題についてのジャニーズ事務所会見でしょう。...
安藤美姫は私生活の切り売りも辞さない…愛娘との2SHOTの先に“奥の手”
 フィギュアスケートの元世界選手権女王、安藤美姫(35)が6日に自身のInstagramに投稿した10歳の娘・ひまわりち...
万太郎夫婦の2カ月ぶりの夜…寿恵子お手製渋谷マップは一見価値あり!
「歩いて、観察して、万太郎さんならそうする。行こう、渋谷が私の横倉山になるまで」  新たな決意を胸に、再び渋谷へ向...
桧山珠美 2023-09-08 16:06 エンタメ
ただ落涙!去りゆくひとに“花道”、万太郎の手には亡き長女・園子の絵
 大学に辞表を提出した野宮(亀田佳明)、東京を去る前に長屋を訪れ、生まれたばかりの千鶴を含む槙野家の肖像画を描く。 ...
桧山珠美 2023-09-06 14:11 エンタメ
竹雄と綾の屋台「土佐」開店が超高速すぎる! 材料はいつ調達したの?
 十徳長屋の古参住人、牛久亭久兵衛(住田隆)が真打に昇進し、長屋を去ることに。万太郎(神木隆之介)らの前で落語を一席、披...
桧山珠美 2023-09-04 18:19 エンタメ
市原隼人のセクシービーム“大量注入”で盛り上がったのは間違いない
 市原隼人(36)はいつも眩しそうです。どうしてあんなに眩しそうなのか。私が考えるに、自分が放つセクシービームが乱反射し...
アイクぬわらの“おはガール”自宅連れ込み報道も「新社屋の呪い」にぴたり
 お笑いタレントのアイクぬわら(37)が8月28日、テレビ東京系の子供向けバラエティ番組「おはスタ」の卒業を突然、発表し...
2023-09-01 06:00 エンタメ
お見事!寺田心から濱田龍臣への人気子役リレー、キャスティングの妙
 万太郎(神木隆之介)が台湾に旅立ってしばらくのこと。大荷物を背負って、ひとりの青年が、万太郎を訪ねて長屋にやってきた。...
桧山珠美 2023-08-31 15:10 エンタメ
ピストル持たずに台湾入りした万太郎、なにやら凄い経歴の朝井大智!
 里中(いとうせいこう)や岩崎(皆川猿時)からの推薦で、万太郎(神木隆之介)は学術調査団の研究員として台湾に派遣されるこ...
桧山珠美 2023-08-30 16:13 エンタメ
バチェラー5完結!男が落ちるのは笑顔より泣きなのね 2023.8.29 (火)
 成功を収めた1人の独身男性=バチェラーとの“真実の愛”を得るため、様々な女性たちが競い合う婚活サバイバルシリーズ、「バ...
万太郎7年ぶりの植物学教室返り咲き、挨拶も小道具も“ドイツ一色”に
 明治26年。徳永教授(田中哲司)に正式な助手として迎えられた万太郎(神木隆之介)は、7年ぶりに植物学教室に戻ってきた。...
桧山珠美 2023-08-28 11:40 エンタメ
「ハヤブサ消防団」中村倫也と岡部たかしは“出世魚俳優”で大物感マシマシ
「ハヤブサ消防団」(テレビ朝日系)にハマっています。「VIVANT」(TBS系)ほどの派手さはありませんが、そこはそれ、...