仕事一筋の私が『対岸の家事』詩穂に共感した理由。くだらない「専業主婦vsワーママ」対立してる場合じゃない

森鷹ユキ
更新日:2025-06-14 06:00
投稿日:2025-06-14 06:00

大事なのは「自分で決める」こと

 中谷も最終回である決断をした。中谷は今で言う教育虐待を受けており、母との間に確執があったのだが、訪ねてきた母に対して「待っていてほしい。いつか母さんに会いたいって思えるときがきたら僕から連絡する。だからそれまでは訪ねてこないで」「本当に僕のことを尊重してくれるなら待っていてほしい」と伝える。


 許すか許さないかは自分が決めること――。父との確執があった詩穂に「許すも許さないも決定権は詩穂にある。詩穂の人生なんだから」と声をかけた虎朗のセリフにも通ずる。

 どんな道を選ぶにしても、それを決めるのは自分自身だ。そう言うと「自己責任論」に聞こえるかもしれないが、そうではない。

主婦だの独身だの…ラベルはそれ以上でも、それ以下でもない

 専業主婦、ワーキングマザー、主夫、独身……。世間はすぐにラベルを貼りたがり、「専業主婦は甘えている」「子どもが小さいのに働くなんてかわいそう」「その年で未婚なんて、何か問題があるはず」と、簡単にジャッジし、ラベルを貼られた本人も間に受けてしまう傾向がある。

 でも、ラベルなんて結局は「役割」に過ぎない。それ以上でも、それ以下でもない。

 たとえ自分で選んだ道でも、うまくいかずに後悔することだってある。そんなときは、引き返せばいいし、別の道を探したっていい。その場に止まって気が済むまで迷ったっていい。大事なのは、自分の人生の舵を自分で握って他人に委ねないこと。他人は、誰もその責任をとってはくれないのだから。

 とはいえ、自分の歩く道は、できるだけ歩きやすいほうがいい。隣に並んで歩いてくれる人がいれば、なお心強い。ときには、一緒に歩いていたはずの人が、突然スピードを上げてどんどん先に進んでいくように見えて、焦ってしまうこともあるかもしれない。あるいは、別の道を選んだ人と、ふとした瞬間に並走したり、交差することもあるだろう。

 だからこそ、どんな道を歩いていても、気軽に声をかけ合える関係でいたいと思う。いつまでも「専業主婦vsワーママ」なんて、くだらない対立をしている場合じゃない。私たちは、お互いの道を尊重しながら、ときに励まし合っていけたらいいのだ。

 あ、そうそう。少しでも道を歩きやすく整えるのが、本来は政治の役目だと私は思っている。でも今の政治は、「茨の道かもしれないけど頑張ってね」「選んだ道なんだから自己責任で直してね」と、突き放しているようにしか見えない。

 特に女性には、「介護も仕事も子育ても、ぜんぶうまくやって!」と、気軽に買い物を頼むようなノリで丸投げしているように見える。いつまで「対岸の火事」を決め込むつもりなのだろう。そのあたりは、なぜこのドラマが反響が大きかったのかをよくよく考えていただきたいと思っている。

森鷹ユキ
記事一覧
1982年生まれ。新聞社系エンタメサイトで記者を務めたのちに女性系メディア、ライフスタイル系メディアで編集者兼記者として従事。エンタメ、ライフスタイル、ジェンダーについての取材執筆を行う。

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


スメハラ? 90年代の出版社は“異臭”がプ~ン…男と香水と時代の変化
 コミックや書籍など数々の表紙デザインを手がけてきた元・装丁デザイナーの山口明さん(64)。多忙な現役時代を経て、56歳...
移住の思わぬ落とし穴。収入激減で大後悔!こんなはずじゃなかった…
 コロナ禍でリモートワークに対応する会社が多くなり、地方への移住を一つの選択肢として捉える人は増えました。でも、あまり調...
直木賞作家・荻原浩氏インタビュー 世にはびこる誹謗中傷「耳の痛い意見が人を成長させるとは言い切れない」
 パリ五輪でも選手や審判などに対する誹謗中傷は深刻な問題となっている。誹謗中傷は、他人への悪口(誹謗)と根拠のない出鱈目...
まるで最高級の餡子玉! 黒猫のプリプリ“たまたま”がキュートすぎる
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
江角マキコ芸能界引退から7年、初めてデビュー作を語る(後編)父を亡くした喪失感を「ゆみ子」に重ね合わせた
 芸能界から引退している江角マキコさんが、7年ぶりとなるインタビュー取材に応じた。目的は、石川県輪島市を支援するために特...
2024-08-07 07:00 ライフスタイル
江角マキコ芸能界引退から7年、初めてデビュー作を語る(前編)伴走してくれた能登の人たちに「感謝と恩返し」を
 芸能界から引退している江角マキコさんが、7年ぶりとなるインタビュー取材に応じた。目的は、石川県輪島市を支援するために特...
2024-08-07 07:00 ライフスタイル
「夏の庭の花・植物の水やり問題」災害級の暑さで1週間留守に…対策は?
「災害級の暑さ」なるフレーズ、耳にする日が続いていますが、気付けば夏休みシーズン到来!  我が花屋は神奈川の片田舎の温...
深夜3時にメッセ連続投下!グループ脱退したい…常識知らず&KYなママ友のお騒がせLINE10連発
 保育園や幼稚園の保護者同士でやりとりするママ友LINE。同じクラスのママに誘われて断るわけにもいかず、半ば強制的にグル...
ふるさと納税について夫婦で考えたら、意見が食い違って爆笑の大喧嘩に…「特別vs日常」何が正解?
 選んだ自治体に寄付をしてお礼をもらうことができるだけでなく、一部の税金が還付または控除される、“ふるさと納税”。  ...
2024-08-07 06:00 ライフスタイル
「子どもの夏休み暇対策」どうしてる? 頑張るママのお助けアイデア7選
 子どもが小学生になると、夏休みの過ごし方で悩む大人がたくさんいます。近年では外遊びも猛暑による熱中症の心配があるので、...
【調香師解説】夏バテ解消アロマでフェロモンも復活!睡眠、胃腸、イライラを鎮める香りは?
 毎日暑いですね。フェロモンは最低限の生命力が維持されたうえで、余力から生まれてくるものです。うだるような暑さが続くと心...
【独自】大満足の新作すいか「夕焼けセレブ」を収穫! 白州のすいかばか'24~究極のレシピを求めて#3
 すいか生産量全国47位、ごくごくレアな山梨県ですいか作りに情熱を注ぐ「寿風土(こどぶきふうど)ファーム」代表の小林栄一...
無意識な「フキハラ」あるある4選 職場や家庭でやらかしていない?
 ここ最近でできたハラスメント用語の一つとして「フキハラ」があるのですが、ご存じでしょうか。 「不機嫌ハラスメント」の...
「キメ顔、お願いします!」と念じて叶った“たまたま”な1枚
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
暑いときは「花魁」に限る?
 知っているようで意外と知らない「ことば」ってたくさんありますよね。「女ことば」では、女性にまつわる漢字や熟語、表現、地...