元日本テレビ番組広報で危機管理の専門家が「TOKIO国分太一問題会見」を読み解く

更新日:2025-06-26 17:03
投稿日:2025-06-26 17:00

根本的な話は一出演者の降板。番組ファンへのお詫び

 TOKIOの国分太一(50)が重大なコンプライアンス違反による番組降板について、日本テレビの福田博之社長が会見に応じたのは20日のこと。詳細を語らずの消化不良会見とも揶揄されたが、日本テレビ出身の危機管理専門家、片岡英彦氏に聞いた。

 ──日本テレビ時代は番組宣伝を担当、現キャリアの原点になっています。

「多い時は、深夜、特番含め20番組くらい担当しました。メディアリレーションと危機管理は表裏一体で、PRを中心に教えていますが、1998年の山一証券、2000年の雪印集団食中毒事件で『私は寝てないんだ』と社長が逆ギレを起こしたあたりから、企業トップの危機管理が取りざたされるようになりましたね」

 ──率直に日テレの対応はどうだったのでしょうか。

「リリース対応もありだと思いました。現段階の内容では、日テレは第三者的立場で、事件に社員が関わっていない。話す立場にないという点から、会見をしないという選択もあったわけです」

 ──ではなぜ会見を行ったのでしょうか。

「社会的責任として、番組に対するお詫びで、『ザ!鉄腕!DASH!!』の空気(世界観)を守りたかったのだと思います。根本的な話は“一出演者の降板”ですから、コンプライアンス違反の内容についての謝罪は必要ないのです」

 ──社長1人の会見は詳細語らずで消化不良だという意見も多かったが。

「詳細については、自社の社員が加害、被害ともに関わっていないので言及できない。話す立場にないのに断言するわけにもいかないし、今後どうするかという指針も出せない。トップが一元で説明責任を負い、逃げ隠れしないというのはガバナンス的には正解。ですが、僕も記者時代があるので、詳細を話さないんじゃニュースにならないじゃないか、という記者側の気持ちもわかる。そこを報道陣が突いてくるであろうことをどのくらい想定していたのかは疑問です」

登壇者は必要最低限にすべきです。いろんな口が動くのは良くない

 ──フジテレビの10時間会見では記者側の怒号が飛び交う姿も問題視されていました。

「僕も記者時代に被害者にはこれ以上聞いてはいけないとか、取材者としての暗黙のルールを現場で学びました。現場にはエスタブリッシュな全国紙、庶民の意見を代弁する週刊誌、夕刊紙、芸能リポーターがいて、一定の良識の中で会見が行われていた。しかし今は、ネットメディアを立ち上げるのは容易で、独立系の彼らにとってそんな紳士協定なんて聞いていないし、炎上すればオイシイ、くらいの安直なメディアもいて、どこで炎上するかわからない。これは会見に立つ側も怖くて、避けてしまう。松本人志さん、中居正広さんが公の場に出てコメントしなかったのもここに原因がある。会見から遠ざかり、ますます問題の本質があいまいになります。ビートたけしさんのFRIDAY事件(1986年)の頃とは状況が全く違います」

 ──フジテレビ会見は大爆死と言われるが、どこがNGだったのか。

「フジテレビ問題は、被害者、加害者ともに社員で、そこに大物タレントが絡んでいる。まず、最初の会見でテレビ局を閉め出したのが失敗。自社のテレビ取材を否定し、メディアとしての姿勢を問われたのは命取りでした。危機管理として会見でやってはいけないことは、①比喩表現②主語をあいまいにする③登壇者とメディアを接触させることは、女々しいとか(下手に)比喩を使うほど不適切になりがち。は日本語の特性でもあるけれど、切り取られたときに誤解を生じやすい。は動線の問題。雪印事件のように社長が、報道陣の待ち構えるエレベーターに乗ること自体が間違い。広報側が別動線を用意し、接触を避ければ余計な衝突、炎上を回避できます」

 ──清水社長以外、登壇者全員が退陣しました。

「登壇者は必要最低限にすべきです。いろんな口が動くのは良くない。お互いの責任分散と回避のために大人数で登壇したのでしょうが、各人に質問が飛び、回答の違いを突かれ、問題が広がってしまい、結局、共倒れを起こしたといえます」

 ──古巣日テレを客観的にみて思うことは?

「日本テレビの福田社長が1人で請け負ったおかげで日本テレビのCM出稿取り下げには至っていません。ある意味“テレビCM離れ”を食い止めたことは評価に値する。日本テレビの生真面目で職人的な気質が現れた内容だったのではないでしょうか」

(取材・文=岩渕景子=日刊ゲンダイ)

▽片岡英彦(かたおか・ひでひこ) 戦略PRプロデューサー。1970年、東京都生まれ。94年日本テレビに入社。社会部記者、番組宣伝を経て、2001年にアップルコンピュータ、04年MTVジャパン、日本マクドナルド、ミクシィとキャリアを重ね、11年に戦略広報プロデューサーとして事務所を設立。広報、危機管理のプロとして活躍する傍ら、東北芸術工科大学企画構想学科教授をつとめる。

  ◇  ◇  ◇

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