映画「国宝」ブームに水を差す歌舞伎界の醜聞…人間国宝の孫が“極秘妻”に凄絶DV

更新日:2025-06-29 17:03
投稿日:2025-06-29 17:00

 映画「国宝」は、歌舞伎ファンではない私でも時を忘れて楽しめた、“100年に1本の芸道映画”である。

 芥川賞作家の吉田修一が3年間、自ら黒衣をまとい、楽屋に入って書き上げた。監督は映画「フラガール」などを撮った李相日。任侠の一門に生まれながら歌舞伎に魅せられた喜久雄と、上方歌舞伎の名門の嫡男として生まれた俊介が、一門の芸を守り抜くために生き、死んでいく物語。

 人気俳優の吉沢亮と横浜流星が1年半近く、歌舞伎の所作を基礎から学び「女形」という難役に挑んだことも話題だ。

 動きはカメラワークで何とかなるが、歌舞伎独特の言い回しは「口パク」ではないかと思ったが、「吉沢と横浜は、吹き替えなしでしかと表現」(読売新聞オンライン6月5日)したそうだから驚く。

 人間国宝の女形、小野川万菊を演じた田中泯と寺島しのぶがいい。寺島は役者(渡辺謙)の妻を演じ、実の息子・俊介(横浜)ではなく喜久雄(吉沢)に跡目を継がせようとする夫をなじる。寺島自身、女に生まれたが故に歌舞伎役者になれなかった。その悲しみと怒りを込めたであろう表情が万感迫る。

 この映画の白眉は、兵庫県出石(いずし)にある近畿地方最古の芝居小屋「永楽館」などで撮影されたという「藤娘」「鷺娘」「曽根崎心中」の華麗な舞台である。

 美術を映画「キル・ビル」の種田陽平が担当している。ふりしきる雪の中、恋の悲しみにもがく鷺の精を演じた万菊のシーンは圧巻。

 私は、歌舞伎の世界を描いた作品では、溝口健二の「残菊物語」と、有馬稲子自身が「私が一番きれいに撮れた作品」といっている「浪花の恋の物語」(内田吐夢)が好きだが、これに「国宝」が加わった。

 もはや「国宝」ブームといっていいだろう。このところ沈滞気味の歌舞伎だったが、この映画で歌舞伎の魅力を知った若い人たちが、足を運ぶようになるのではないか。

■歌舞伎役者が見直されている折なのに

 だが、そんなブームに水を差すような名門役者のDV話が週刊新潮(6月26日号)で報じられた。中村児太郎(31)の祖父は人間国宝の7代目中村芝翫。父親は9代目中村福助(64)。名門「成駒屋」の若手で、将来は歌舞伎界を背負っていく一人である。

 2021年1月に児太郎は結婚したが、“2人の意向”で公表されていないという。彼の妻・梢(仮名)への暴力は結婚から数カ月後のことだった。

 タクシーの車内で口論になり、梢は児太郎に髪の毛をつかまれた。タクシーを降りると、児太郎に倒され、地面に顔を押し付けられたという。その後、目撃者の通報を受けて駆け付けてきた警察官に付き添われ、2人は家路に就いた。だが、それで事は終わらなかった。

「家の中に入って私が“離婚したい”と言うと、腕を首に叩きつけられて……」

 児太郎は梢の髪をふたたびつかむと、馬乗りになり、そのまま彼女の顔を殴り続けたという。当時の彼女の写真を見せてもらうと、目の周りなど顔中が異常に腫れ上がっていたと新潮は伝える。

 避難していた実家に、児太郎は父・福助と一緒に謝罪に来て土下座したという。児太郎は、今度暴力をふるったら1000万円払うと誓約書を書いたが、結局、今は離婚へ向けて代理人を立てて話し合っているようだ。新潮が児太郎を電話で直撃すると、

「結婚、していないですよ。(中略)こういうの初めてで。今、舞台や稽古があって疲れてて、すぐにかけ直しますから。ああ、びっくりした」

 と言って、一方的に電話を切ったという。

 不祥事続きの歌舞伎界は、映画「国宝」で描かれた「芸一筋」ではないようだ。(文中敬称略)

(元木昌彦/「週刊現代」「フライデー」元編集長)

エンタメ 新着一覧


梅丸少女歌劇団による山寺でのダンスシーンはニュースになった“アレ”
 山寺でのストライキが続く中で、大和礼子(蒼井優)はスズ子(趣里)に自分の過去の話をする。両親に反対されて、縁を切ってま...
桧山珠美 2023-10-24 17:03 エンタメ
道枝駿佑“マイハル”の無表情は拙い?いいえ、ラストの笑顔のためだった!
 秋の新ドラマがスタートしています。いくつかチェックしましたが、ミステリーや考察ドラマって疲れて帰ってきた頭と体にはなん...
色恋に敏感なリリー、昭和8年が舞台の朝ドラに「百合」の描写は必要?
 大和礼子(蒼井優)はストライキをするしかないと言い出す。一方、橘アオイ(翼和希)は、お客様が大切だと言い、また、礼子が...
桧山珠美 2023-10-20 16:20 エンタメ
直撃!俳優・藤原大祐の恋愛観「告白するなら年上、1回目のデートで」
 10月20日から全国公開となる新感覚ホラー映画「リゾートバイト」。小さな島の民宿でアルバイトする大学生たちに様々な怪奇...
2023-10-20 06:00 エンタメ
【写真特集】藤原大祐を直撃! ここでしか見られない本編&未公開カット含む全29枚!!
                                        ...
2023-10-20 06:00 エンタメ
労働争議で板挟み…“スズ子の恩人”林部長役・橋本じゅんの意外な一面
 世界恐慌の波が押し寄せ、USKの賃金削減と人員削減が告げられる。一部の楽団員と新人の劇団員は解雇されてしまった。 ...
桧山珠美 2023-10-19 15:40 エンタメ
大和礼子(蒼井優)さまの箴言…誰にも負けないスズ子の個性とは?
 昭和8年。デビューから6年が経ち、スズ子(趣里)は脇役ながら劇団の中心メンバーとして活躍し、新人の教育係にもなっていた...
桧山珠美 2023-10-16 14:30 エンタメ
タバコの逢引き場面にズキュン!“喫煙イケメン”柳俊太郎にやられます
 コンプライアンスなるもののせいで、昨今のドラマはなにかと不自然なことが多いようで。  犯人が車で逃げるシーンで「...
朝ドラ本編とは別にオリジナルの舞台演目フルver.も制作、手が込んでいる
 鈴子(澤井梨丘)は1週間で稽古に復帰し、同期3人で切磋琢磨して稽古を続けた。  単独公演まで1カ月となり、鈴子た...
桧山珠美 2023-10-14 13:30 エンタメ
宝塚からセクシー女優に転身、“芸能人の有名税”となぶっていいのか
 セクシー女優という職業は、昔と比べると女性にとっても身近に感じる職業となってきました。モデルやグラビア、アイドルなど、...
大和礼子(蒼井優)が手渡したトンボ柄の布は…主人公・鈴子そのもの
 公演で橘アオイ(翼和希)の衣装の羽を忘れたことをきっかけに鈴子(澤井梨丘)たち3人は仲違いをしてしまう。  そん...
桧山珠美 2023-10-11 16:15 エンタメ
物語が動き出した2週目、鈴子指導役は宝塚不合格の現役OSK男役スター
 鈴子(澤井梨丘)は梅丸少女歌劇団(USK)に研究生として入団する。鈴子たち新入生は、まず先輩の稽古を朝から見て覚えてい...
桧山珠美 2023-10-09 15:20 エンタメ
ご意見番GACKTがバカなフリしてジャニーズ問題連投の訳、「貝」も得意
GACKT様(歌手、実業家・50歳)  GACKT様はセルフブランディングに余念がなく、常に自身の好感度アップのた...
堺屋大地 2023-11-14 16:25 エンタメ
ジャニーズの看板消滅…北公次のバク転から始まったイケメンアイドルたち
 ジャニーズ事務所の名称が10月17日からSMILE-UP.(スマイルアップ)に変更されるそうですね。頭では理解している...
近藤真彦がジャニーズの長男坊と呼ばれた必然、逃げ上手と無責任のプロ
近藤真彦様(歌手・59歳)  近藤真彦さんことマッチ様と言えば、40年以上にわたりジャニーズ事務所のタレントとして...
堺屋大地 2023-11-14 16:26 エンタメ
「清く 正しく 美しく」改め「清く 素直に 華やかに」におこだわり?
 自分の将来について悩んでいた鈴子(澤井梨丘)は、ツヤ(水川あさみ)から言われた「自分がこれやと思うことで生きていくんや...
桧山珠美 2023-10-05 16:35 エンタメ