炭酸水は危険な飲み物
更年期の女性は“むせる”と知っているだろうか。この文章を目で追いながら「ワタシ…?」と我が身を振り返っている人もいるかもしれない。自律神経を崩してメンヘラにさせ、汗をかかせるだけが更年期の仕業ではない。バーリトゥード方式にありとあらゆる現象が訪れてくる。今回はまさか縁はないよね? と思っていた、むせがやってきた話し。
その日は酷暑厳しいある日。ずっと顔を出してなかったバーへ行った。
「ひさしぶりじゃん」
店主は私を覚えていてくれて、最近の仕事ぶりを褒めてくれた。
「ご活躍で。ラジオレギュラーなんてすごいじゃん」
「え、本を書いてるんですか? 私、買います!」
同じカウンター席にいた女性客も乗っかってきて、ひとしきり騒ぐ。大物ならまだしも、私レベルの書き手の話、小っ恥ずかしいだけだ。ちなみにこういうシーンで「買います♡」そう言う女性は99%、拙著を買わない。もし全員が買っていたらもっと重版がかかったはずだ。
テーブルに運ばれてきたバーボンソーダ(酒セレクションに感じる、平成の名残)を何も考えずに飲み込んだ。
「ゲフッ、ゲフッ…なんか変なところに入ったみたいで…」
苦し紛れにその場を取り繕おうとする姿だけでも褒めてくれ。
「久乃ちゃん、それもう年だよ(笑)。俺も全然まともに飲めないし、詰まっちゃうんだって。水、もっと飲む?」
店主のフォローもむなしい。この店に通っていた10年前は、むせることなんてなかったのに。
「やだなあ、失礼しました。普段飲んでないから炭酸がきつかったんだよ。次はロックで飲もうかな」
きつい炭酸は大好物。ハイボールの炭酸水をペットボトルではなく、マシンから出してくれる店をひたすら探している女のくせに、どの口がそんなことを言う。私のむせデビューはこんな感じで突然現れた。口、鼻、耳など体中の穴という穴から酒が飛び出してしまわなかっただけ、救われた。そんな事件になったら、あの店にはもう一生いけない。
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