【東戸塚の女・山森麗菜30歳 #3】
タワーマンションが立ち並ぶ街・東戸塚に暮らす麗菜。現在は育休中であるが、復帰後もバリバリ働く予定だ。年収2000万超えのパワーカップル。先々を見据えたライフプラン通りに、要領よく生きていることを自負しているが……。【前回はこちら】【初回はこちら】
◇ ◇ ◇
『麗菜さん、うちのマンションにパーティールームがあるの。もしよければ、ご近所のママさんたちもいるからみんなでランチしない?』
麗菜の元に、謎のLINEアカウントからメッセージが届いた。
少し既読放置した末に改めてみると、小学生くらいの男の子が乳児と写っているアイコンが目に入った。akiko(荒川・吉川)というアカウント名で、晶子からのメッセージであることを推測し、慌てて返信した。
会社員時代にやりとりしたものから、発掘してきたのだろうか。
『ぜひ、参加したいです』
地域コミュニティへの参加も戦略だ
本心は、あまり気乗りがしなかった。ただ、近所のママさんがくるというのは魅力的な誘い文句だった。
『了解です。当日は楽しみにしています』
復帰したら、地域の縁をほとんど繋ぐことはできないだろう。育休中に、できる限りのご近所のコミュニティを作っておく。これも、今後生きやすくするための戦略のひとつだ。
そして当日。
麗菜が、晶子が暮らすマンションのパーティールームを子どもと共に訪れると、同じような年代の、乳児連れのママさんが6組ほどいた。
テーブルの上には、オーガニックのクッキーとローズヒップティー。子ども用に天然のオレンジジュースとアップルジュースも用意してある。
「お昼には軽食を頼んであるから、その時間までは楽しくお喋りしましょう」
キッズエリアも併設されているパーティールーム。子どもはお昼寝させたり、おもちゃで遊ぶのを見守りながらおしゃべりができるようだ。飾り付けもされた、見栄えのいい雰囲気だ。
だが、内輪のゆるい集まりをイメージしていた麗菜はそのサロン的な光景に軽く仰天した。
晶子の「仕事」ってなに?
「麗菜さんは、晶子さんとはどちらでお知り合いに?」
部屋の隅で恐縮していると、おっとりとした雰囲気のママさんに話しかけられた。彼女は、ナナミと名乗った。
「晶子さんとは昔、一緒の会社で働いていたことがあったんです」
「へぇ、いいなあ。晶子さんが上司なんて」
「そうですね。営業力も能力も、会社の中でずば抜けていました」
「でしょうねえ。彼女なら」
ママ同士の付き合いだけでも、デキる女だったことはわかるらしい。麗菜は余計今の状況に甘んじる晶子を恨めしくおもった。ナナミは続ける。
「晶子さんは有能ですものね。仕事を手伝いたいという方も多いんですよ」
「仕事?」
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