今も風間杜夫を突き動かす盟友つかこうへいとの愛憎の共存
【今週グサッときた名言珍言】
「どうしてああいう嘘つくんですかね」
(風間杜夫/テレビ朝日系「徹子の部屋」7月3日放送)
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76歳となった現在もドラマや映画はもちろん、舞台にも精力的に出演して活躍し続けている風間杜夫。そんな彼を最初に見いだしたのは、つかこうへいだ。つかこうへいも以前「徹子の部屋」に出演していた。その映像を見て風間が漏らした一言を今週は取り上げたい。
つかは劇団だけでは食えなかった頃に、ぬいぐるみショーで全国を回っていた。東北のご飯がおいしくて食べ過ぎてしまい、ぬいぐるみのチャックが上がらなくなってクビになったことがあるという笑い話をしていたのだが、実はこれはほぼそのまま風間のエピソード(クビにはなっていない)なのだ。
風間はヒーローショー以外にもさまざまなバイトをしながら生活していたが、「役者で食べていけるようにならなきゃ意味がない」(小学館「女性セブン」2024年2月15日号)と宣材用の写真をあちこちに配っていた。結果、ちょうど立ち上がったばかりのレーベル「日活ロマンポルノ」への出演を機に仕事が増えていった。そして1975年、つかこうへいと出会ったのだ。
舞台の稽古中、つかが突然やってきた。稽古場の雰囲気は一変。緊張が走った。風間の芝居をじっくり見ていたつかは、稽古が終わると風間に言った。
「お前の芝居には垢がついている。俺のところでわらじを脱いで、垢を落としていけ」(講談社「週刊現代」15年8月8日号)
そこから2人の蜜月関係は始まった。つかの方が年上とはいっても1歳しか年齢は違わないが、完全な上下関係。「お前の正義感や甘い幼児性もいいよ。でも、その卑屈なところや狂気じみたところとか、全部芝居に出さなきゃダメだ。一色になるな」(中央公論新社「婦人公論」24年3月号)、「お前らが芝居できないのはゴールデン街なんかで飲んでるからだ!」(ウェッジ社「ひととき」24年1月号)などと厳しく指導された。その愛憎の共存ぶりはまさに「蒲田行進曲」の銀ちゃんとヤスのそれだったと振り返る(同前)。
冒頭の番組では「彼のそばにいると、もうとにかく楽しくてね」と懐かしんでいた。
83年放送開始の「スチュワーデス物語」(TBS系)でブレークしたときは、つかに会うのが怖かったという。あんなものに出やがってと言われると思ったのだ。だが意外にもつかは「あの役はぴったりだ。あの路線で行け」と喜んだ(「女性セブン」=前出)。
風間が今も舞台を精力的に続けているのは、つかにその姿を見せたいからなのかもしれない。
(てれびのスキマ 戸部田誠/ライタ―)
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