“清純系”女の視線にゾッ…地獄を見せるはずだったのに。29歳の妻が企んだ稚拙な復讐

ミドリマチ 作家・ライター
更新日:2025-08-10 16:29
投稿日:2025-08-09 11:45

私と正反対な容姿の彼女。話しかけた反応は…

「カンタ、だめだよ。そこ、隣の人の」

「え、そうなの?」

 息子はすぐに立ち上がった。女は無反応だった。気づいているのかいないのか…。

 しかし、サングラスの奥はもしかしたら目が開いていて、私たちの謝罪を待っているのかもしれない――そう思うと、ふっと背筋が冷える。

 無視するのは簡単なことだ。だが万が一、彼女が私のことを彼の妻だと知った時や気づいた時、“浮気されても当然な、性格悪い礼儀なし女”だと思われるのは癪だった。

「…すみませーーん」

 私は、軽さを装いながらも声を震わせて、女に呼びかけた。

「私のことですか?」

 女は一旦周囲をきょろきょろ見回して、サングラスを外した。どうやら息子の無礼に気づいていなかったようだ。

 ――しまった。なら声かけなきゃよかった。

「ええと。そちらのサンベッドに息子が座ってしまったようで。本当にすみません。ヤンチャ盛りなので…」

 しどろもどろの私を、女はじっと私を見ている。

 長いまつげ、すこし垂れた大きい瞳。いわゆるタヌキ顔のかわいらしい雰囲気。女優であれば清純派と言われて相応しい、そんな容姿。

 私と正反対な容姿なのが意外だった。そういうものなのだろうか。

ゾッとする女の視線。これから地獄を見るはず

 とにかく私は、息子の頭を掴み、そのまま押し下げた。

「ほら、謝りなさい」

「ごめんなさーい、お姉さん」

 息子はそれだけ言って、逃げるようにプールへ入って行ってしまった。私は乳児を抱いて、彼を追いかけた。

「ちょっとお、カンタ!!!」

 早足で息子を追いながら、正直、逃げてくれてよかったと安堵する。――あの女の視線が怖かったから。

 ちゃんと謝罪したのに、彼女は突き刺すような瞳で私を見ていた。あの反応なら、カンタが座ったことなど、気づいていなかったはず。

 ――「気にしてませんよ」くらい、言ってくれればいいのに。

 まあいい。これから、彼女は修羅場で地獄を見る。

 その時が来るまで、私は女へのヘイトをためる。ためにためまくる。時が来たら、こころゆくまでスッキリしたいから。

 私のシナリオではこうだ。

ミドリマチ
記事一覧
作家・ライター
静岡県生まれ。大手損害保険会社勤務を経て作家業に転身。女子SPA!、文春オンライン、東京カレンダーwebなどに小説や記事を寄稿する。
好きな作家は林真理子、西村賢太、花村萬月など。休日は中央線沿線を徘徊している。

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


世帯年収1500万円でも越えられない壁。耐え難い屈辱を喰らった女の選択
 御茶ノ水駅が最寄りの持ち家で2歳年上の夫・孝憲と4歳の娘・香那と3人家族で余裕ある生活を送る彼女は、ママ友と共に充実し...
たまにはこんな日もあるよね? 終電を見送ってしまった夜
 久しぶりの仲間との時間が楽しくて、「あと1杯だけ」「あと10分だけ」を続けていたら終電を見送ってしまった。  だ...
「自責と他責」バランス上手な大人が口癖にしている神ワード
 ここ数年、自責思考・他責思考みたいな話題をよく見かけませんか? 私はもう見るたびに「うるせぇ~!」となっている反面、し...
出張ホスト、ママ活、女風…女性の金目当てに上京する男性が増えている!
 近頃は地方移住が話題となっていますが、その逆に「地方では稼げないから上京する」男性も出てきています。  出張ホストや...
ご飯をありがとにゃ! お母さんが大好きな“たまたま”君たち
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
荒れる2024年幕開け 花屋が祈りを込めた「復興と希望」の花束
 2024年が明けました。今年は元旦から思いもよらないことが起こって、まさに辰年。大きな変化の年が始まったようでございま...
2024年こそシンデレラボディ!フェロモンジャッジで分かるケア&香り術
 素敵な女性はいい香りがする――。  そう感じるのは、肌から放たれるフェロモンの効果。フェロモンが高まると色気だけ...
動物は「あったかい場所」を見つける才能があるみたい
 北海道で暮らす、まん丸で真っ白な小さな鳥「シマエナガちゃん」。動物写真家の小原玲さんが撮影した可愛くて凛々しいシマエナ...
暇すぎ死にそう…大きな声じゃ言えないけど仕事中にばれない暇つぶし5選
 同じ仕事でも、忙しいと時間は早く過ぎ、暇すぎると永遠に時計が止まったように見えるもの…。とはいえ、仕事の拘束時間なので...
見上げた青空が眼に染みて…1日に1回くらいは空を眺めてみる
 青空が眼に染みると思ったら、しばらく空を見上げていなかった自分に気が付いた。  うつむいて歩くのがクセになってい...
私「復縁希望?」女友達「あと2年で吹っ切る」失恋かまってちゃんLINE
 失恋をして心が傷つくと、少しでも誰かに気持ちを聞いてもらいたくなるもの。  でも、あまりにしつこかったり、常識が...
キャンプより安近短なべランピング!楽しむコツ&それでも失敗したエピ
 空前のキャンプブームが到来していますが、やはりイチからキャンプギアを集めてテントを張って…となると、ハードルが高いと感...
これって誘拐ですよね!? 遊んでいたら詰められた恐ろしいご近所トラブル
 ステップファミリー6年目になる占い師ライターtumugiです。私は10代でデキ婚→子ども2人連れて離婚→シングルマザー...
「俺のソーセージも試食して」じゃねえ! 40女の成人の日の思い出
 1月8日は成人の日。晴れ着やスーツに身を包んだ新成人たちの姿は、眩しいものです。  成年年齢が18歳に引き下げられま...
神秘的! 宝石のようなオッドアイの純白“たまたま”に幸福祈願
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
「緑の黒髪」があるなら、白髪の“褒め言葉”は?
 知っているようで意外と知らない「ことば」ってたくさんありますよね。「女ことば」では、女性にまつわる漢字や熟語、表現、地...