「あの人が…なんで?」地味ママの“富豪人脈”に呆然。勝ち組を演じていた女の勘違い

ミドリマチ 作家・ライター
更新日:2025-09-13 11:45
投稿日:2025-09-13 11:45

セレブとの再会。そこに意外な人物が

 当日。案の定、藤堂さんはハイヤーでやって来た。

 エントランス前で出迎えた綾乃は、左手に下げられたHermèsの紙袋に目を奪われた。藤堂さんはその視線を見逃さないわけなく、すぐに綾乃に差し出した。

「これ、お土産」

 中をちらりと覗くと、同じ色の小箱が入っていた。綾乃はその大きさから、キーケースかパスケースと踏んだ。

「ありがとうございます。いいんですか、こんな高価なもの」

「いいのよ。帰国前にお世話になっていた店舗を覗いたら、ちょうど担当さんがいらして、お付き合いで買っただけなの」

 藤堂さんは口元に手を当てて微笑んだ。

 相変わらず気さくで上品ないでたち。綾乃は嫉妬さえしない。この再会のために彼女はお子さんを、専属のシッターに預けてきたという。綾乃は片道2時間かかる実家の母の元に預けに行った。

「じゃあ、さっそくこちらにどうぞ」

 綾乃は、ゲストルームに藤堂さんを案内すべく、背筋を伸ばして高層階のエレベーターホールに彼女を誘った。

「素敵なマンションね!」

「ありがとう。でも藤堂さんのおうちに比べたら恥ずかしくて」

 彼女の住むドバイのマンションはもっとすごいのだろうか。いえいえ、と謙遜する藤堂さんの横を、見知った影が横切った。

 スーパーの袋を持ち、乳児を抱いた、黒髪の女性…たっくんママだった。

あの人がなぜ「高層階」に行くの?

 避けようと顔を背けるも――彼女が向かったその先は、自分たちが今行こうとしている高層階行きのホールだった。

 思わず、二度見してしまう。

 ――え、高層階?

 動揺する気持ちがないわけでない。ふいに立ち止まる。

 すると、彼女が振り向き「ああ」という顔で綾乃に気づいた。冷静を装って、挨拶をしようとしたその時だった。

 藤堂さんは上ずった声でつぶやいた。

「…マコ?」

「ゆりー!?」

 たっくんママは目を見開いている。ふたりは自ずと手を取り合い、少女のような柔らかい表情になった。

 驚きが波のように次々と押し寄せ、綾乃は、わけがわからなかった。

#3へつづく:「着飾るのは何もないから」偽セレブがマウントを取る理由。“本物の令嬢”の前で見つけた本当の自分】

ミドリマチ
記事一覧
作家・ライター
静岡県生まれ。大手損害保険会社勤務を経て作家業に転身。女子SPA!、文春オンライン、東京カレンダーwebなどに小説や記事を寄稿する。
好きな作家は林真理子、西村賢太、花村萬月など。休日は中央線沿線を徘徊している。

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


【45歳からの歯科矯正】ワイヤー矯正終わったのにマウスピースを装着。毎日キッチン泡ハイターが手放せない
 ワイヤー矯正が終了し、1年半装着していた矯正器具を外しました。食後の歯磨きのしやすさに感動するのもつかの間、今度は「マ...
子育ては「完璧主義」だと詰む! SNSの“キラキラママ”に振り回されないためには?
 セックスレスやセルフプレジャー、夫婦の在り方をテーマにブログやコラムを執筆している豆木メイです。
小馬鹿にする人って実は…。隠された心理とメンタルを死守するための3つの対処法
 会話の節々で「私のことを小馬鹿にしてる…?」と感じるような言動をとってくる人、いますよね。今回は、他人を小馬鹿にする人...
「寝香水」って知ってる?【10月前半】調香師が睡眠の質を高めるアロマをタイプ別に解説
 少しずつ寒くなる季節の変わり目は、しっかり睡眠をとって自律神経を整えましょう。今回は、調香師ならではの裏ワザ【幸福感に...
秋の祭りを共に過ごす時間
 このひと時が宝物だなって気が付くのは、  まだまだ先の話。
老化、苦労、ボトックスとも無縁な御年50のハローキティちゃん
 踊り子として舞台に立ち、エッセイも書く新井見枝香さんの月イチ連載です。アラフォーいろいろあるけど、楽しいよ…!
見せ場もばっちりにゃん! プロレスごっこの“たまたま”が可愛すぎる~
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
ほっこり癒し漫画/第82回「ウシオの大変身」
【連載第82回】  ベストセラー『ねことじいちゃん』の作者が描く話題作が、「コクハク」に登場! 「しっぽのお...
「破瓜」って何歳? バージン喪失の意味もある!?
 知っているようで意外と知らない「ことば」ってたくさんありますよね。「女ことば」では、女性にまつわる漢字や熟語、表現、地...
昭和レトロぎゃふん!「ほの字のカレのため、がんばりマッスル」あえての昭和言葉がエモいLINE3選
 令和の今、昭和は遥か昔の時代に感じますよね。40代女性の皆さんは、必死に「昭和感」が出ないよう、細心の注意を払ってきた...
令和のコメ不足、その手があった!価格高騰の秋も使える我が家の対策6選
 新米シーズンに突入し、少し落ち着きを見せているものの、この夏みんなが気になって仕方なかったニュースといえば、令和の米騒...
刺さるわあ…親の“結婚しろ圧”LINE3選。OVER30が涙した「いつまでも元気でいられないから」
 30代半ばを超えると、親からの結婚に対する圧もより一層強くなってきますよね。  LINEに忍ばせた小さなプレッシャー...
自己顕示欲バンザイ! スナックママが教える「自分らしく生きる」ヒント
 みなさん、SNSとかで目立つ人は好きですか? 私はついこの間まで、正直めちゃくちゃ苦手でした。  でも先日、スナ...
東京のごちゃごちゃに疲れる…貸切コンパクトボートで“泡飲み”東京湾クルージングが当たりだった
 都会とは、長年いると何をしていいのか分からなくなる場所である。おいしいご飯もお酒も、どの街にいても味わえる。新しいスポ...
イイ男が大集合♡ 素敵“たまたま”がいっぱいで目の焦点が合わない~!
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
面倒な“かまってLINE”への返信うざ。寂しがり屋のド定番「寝てないアピ」は華麗にスルーがよろし
 いつも話題の中心にいたくて、寂しがりやな「かまってちゃん」。時々ならいいですが、LINEメッセージでもかまってアピール...