大好きなテレビ鑑賞中、ふと襲われた「不安感」はなんだ? 更年期、不調の新フェーズに突入か

小林久乃 コラムニスト・編集者
更新日:2025-08-27 11:45
投稿日:2025-08-27 11:45

いよいよ始まったホルモン補充

 続けて誰にも頼んでいないのに、窓のない我が家の風呂場、マンションのエレベーター、地下鉄といった密室空間が浮かんでくる。同時に不安感が強くなっていると気づいた。

(パニック障害かもしれない)

 素人医者の浅い知識が病名を連想させた。いや、待て。この数ヶ月間の私はこの連載に似つかわしくないほど、更年期障害の症状が和らいでいる。でも巨大組織・更年期障害のメンバーだ。原因はおそらく更年期のはずだと、18年近く通う婦人科へ診療に行くと決めた。まずは自分の体調をよく知ってくれている医師の判断を仰ごう。出かける前、私はここ最近の不調を箇条書きにしてまとめた。物忘れ力が異常に高まっているおばさん、自分の病状も伝え忘れてしまうかもしれないと危惧したからだ。

 婦人科へ向かう途中、バスに乗った。自分の心理状態を慮ると、密室空間が気になったが何も起こらず。でもこれから生涯、自分の中に芽生えてしまった圧迫感と不安感を抱えて生きるのは避けたい。

「僕はだいぶ長く小林さんを診ていますけど、今までで一番体調が悪いですね。状態を聞くと更年期による症状です。不安感もあると思うのですが、本当に精神が病んでいる人は自分の体調を文書にまとめることはできないから安心してください」

 かかりつけの医師はそう静かに話して、ホルモン補充と漢方薬の治療、1週間だけ更年期によく使われるごく軽い安定剤を処方するとか。加えて「寝たきりの人生にならないための準備です」と、骨疽粗しょう症などを予防する薬も。以前も医師から40代後半から将来を見据えた服薬を話してもらっていたが、今ひとつピンときていなかった。ただ、下降するジェットコースターの勢いで、精神が不安定になってしまった今の私にはよく分かる。

 藁にもすがる思いで薬を飲み始めると、症状はみるみるうちに落ち着いた。明日からは普通に地下鉄も地下道もエレベーターも、利用できる。なんの不安感もない。たったの1週間足らずで回復してしまう薬の影響もやや怖いけれど、とりあえずは元気でこんなエッセイを書いている。染色体の組み合わせで女性に生まれただけなのに、ホルモンに振り回される一生なのだと思うと、やや複雑。でも焼肉のホルモンは好きだ。

 ホルモン補充に関しては、またこの連載で書く予定。

小林久乃
記事一覧
コラムニスト・編集者
出版社勤務後、独立。2019年「結婚してもしなくてもうるわしきかな人生」にてデビュー。最新刊はドラマオタクの知識を活かした「ベスト・オブ・平成ドラマ!」(青春出版社刊)。現在はエッセイ、コラムの執筆、各メディアの構成と編集、プロモーション業が主な仕事。正々堂々の独身。最新情報は公式HP

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


出費額は100万円!? なぜ筋肉マッチョは「ミスターコンテスト」に挑むのか
 女性の外見や内面の美を競うミスコンテスト(以下、ミスコン)。ルッキズムの議論が広がる昨今、ミスコンの意義を問う議論が絶...
記憶鮮明な阪神・淡路大震災発生前夜の“異変”。冬眠モードのカメが突然大騒ぎして…
 8月8日16時42分ごろ、日向灘を震源とする最大震度6弱の地震が発生。その後、気象庁が初めて「南海トラフ地震臨時情報(...
“たまたま”チェックに余念のない茶トラ君♡ 写真集の表紙になれるかな?
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
「妊娠アウティング」経験者たちのエピソード 悲劇はどうすれば防げたのか
 皆さんは、「妊娠アウティング」という言葉を知っていますか? もしかしたら、実際に被害を受けたことがある人もいるかもしれ...
あの人気観葉植物が地震を予知!? 植物の異変から事前兆候を察知する話
 テレビ画面に映し出される南海トラフの「巨大地震注意」の文字…。不安で心が押しつぶされそうになりますな。ワタクシが生...
アプローチ中のおんにゃの子は塩対応? “たまたま”の恋の行方にドキドキ
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
盆地を見下ろす丘で
 盆地を見下ろす丘で。  くるくると回る風に吹かれ、空に風の交差点を観た。
ほっこり癒し漫画/第79回「来るかな? ニャー」
【連載第79回】  ベストセラー『ねことじいちゃん』の作者が描く話題作が、「コクハク」に登場! 「しっぽのお...
「女郎花と男郎花」読める? ヒント:ジョロウは間違い。初秋に愛でたい
 知っているようで意外と知らない「ことば」ってたくさんありますよね。「女ことば」では、女性にまつわる漢字や熟語、表現、地...
ミルクに難色、昭和育児の「母乳信仰」って何なん? 押しつけがましい上から目線LINEにイラッ
 初めての育児や、何人もの育児をしているお母さんは、とりわけ、毎日大変! そんなお母さんを追い詰める身内、どうにかならな...
セレブ妻が赤羽のサイゼリヤに落ちるまで 上流階級との「品格の差」に絶望
 悠々自適なセレブ生活を送っている医師の妻・大宮由香。ある日、お嬢様学校に通う娘のクラスメイト・愛舞(らぶ)とその母親・...
勝ち組ママ友が放った屈辱的な一言。私を「一般人」と一緒にしないで!
 四ツ谷・番町エリアに暮らす医師の妻である大宮由香は、娘・葵を名門お嬢様学校に通わせている。小学校に入った葵から友人がで...
嘘でしょ…娘の友達が「キラキラネーム」? 玉の輿セレブの大きな誤算
 都会の中心でありながらも、ハイグレードな住宅街として知られる四ツ谷・番町エリア。  大宮由香は、小学校に入ったば...
スメハラ? 90年代の出版社は“異臭”がプ~ン…男と香水と時代の変化
 コミックや書籍など数々の表紙デザインを手がけてきた元・装丁デザイナーの山口明さん(64)。多忙な現役時代を経て、56歳...
移住の思わぬ落とし穴。収入激減で大後悔!こんなはずじゃなかった…
 コロナ禍でリモートワークに対応する会社が多くなり、地方への移住を一つの選択肢として捉える人は増えました。でも、あまり調...