「ばけばけ」でヘブンさんが好演だが…ドラマに外国人俳優が少ない不思議
【桧山珠美 あれもこれも言わせて】
「♪日に日に世界が悪くなる~」。気がつけばハンバート ハンバートの主題歌「笑ったり転んだり」を口ずさんでいる今日この頃。それほど朝ドラ「ばけばけ」にハマっている。ラフカディオ・ハーン/小泉八雲と妻セツをモデルに、トキ(高石あかり)と夫・ヘブン(トミー・バストウ)の物語が描かれている。
明治のあの時代、地方に外国人が来ること自体珍しい。英語をしゃべれるのは錦織(吉沢亮)だけ。ヘブンの意思が伝わらず誤解も多発。「ビア(ビール)が欲しい」と頼まれてもビアが分からず、ビア? ビワ? と琵琶や枇杷を集めて並べるというコントのような一幕も面白かった。
若干笑い多めだが、言葉の通じない外国人が異国で苦労する様子は十分伝わってきた。
そんな感じでおトキを中心に日本人キャストも素晴らしいが、今回はヘブン役トミー・バストウに注目したい。さすが1767人の中から選ばれただけのことはある。彼は八雲に近づくため、猫背の歩き方や机に丸くなって執筆する姿勢を徹底的に練習したとか。
配信ドラマ「SHOGUN 将軍」にも出演し、幼少期に日本に派遣され、日本語が堪能なポルトガル人のアルヴィト司祭を演じていた。黒沢明の「用心棒」や「羅生門」に心引かれ、日本文化や映画に興味を持ち独学で10年以上、日本語の勉強をしているとか。まさに八雲になるべくしてなったという感じだ。
■海外でも見てもらう時代なのに
「ばけばけ」にはもうひとり、ヘブンの同僚記者イライザ役でシャーロット・ケイト・フォックスも出演している。「マッサン」で主人公の妻・エリーを演じた。「マッサン」の後、芦田愛菜とダブル主演で民放ドラマや日本の映画やドラマに出演していたが、いつのまにやら帰国。今回、久々のお目見えとなる。
朝ドラ60年超の歴史のなかで、外国人が主演クラスをつとめたのはこの2人くらいか。遠い昔には神戸の老舗パン屋フロインドリーブ夫妻をモデルにした「風見鶏」の蟇目良、最近は「カムカムエヴリバディ」のロバート役・村雨辰剛もいるが。
考えてみれば、コンビニや飲食店など、街中に外国人があふれているのに普通に暮らす外国人があまり出てこない。放送中の「シナントロープ」にも外国人労働者が出てくるが、よく見たら厚切りジェイソンだった。
かつてキャラ強め外国人の役といえば大泉滉かE・H・エリック、女性ではイーデス・ハンソンが一手に引き受けていた印象がある。日本在住で日本語が達者な見た目が外国人を重宝してきたわけだが、日本のドラマを海外でも見てもらおうと思うなら外国人をもっと増やす必要がある。ヘブンさんを見て、そんなことを考えた。
(桧山珠美/コラムニスト)
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