「年齢なんてただの数字!」45歳、気持ちはアラサー。変わり続ける渋谷で“迷走する女”が見た現実

ミドリマチ 作家・ライター
更新日:2025-12-13 11:45
投稿日:2025-12-13 11:45

彼の薬指に指輪はなかった

「ごめん、アサヒしかないけど、いいかな?」

「え?」

 ふと、思い出す。あの頃の私は、黒ラベルしか飲まないという妙なこだわりを持っていたことを。もう、とっくにどうでもよくなっているのだが。

「なら、ハイボールでいいよ」

 昔のいつもの笑顔で彼は頷いた。

 客席はカウンターのみで10席ほど。私の他に、お客さんは2組いる。1人は男性、あとは30代くらいのカップルだった。いずれもお酒を飲むというより、空間を楽しみに来た常連さんのようだった。

「タカさん、知り合い?」

「ああ、まあ、昔の、ね」

 崇は男性客の問いに、含んだような笑みを浮かべた。我が物顔で端の席を陣取っている黒縁メガネにニット帽のその男は、若作りしているがたぶん年上だ。年齢は態度の大きさに出る。

 常連面をしているが、その男は私がこの店の第一号の客で、一番の古参だということを知らないだろう。バーの名の由来になった女だということも。

「入ってきた途端、妙な雰囲気になったから、マスターの奥さんかと思った」

「鋭いね。でも奥さんって、いつの話だよ。ハハハ」

意味深な空気は何?

 かき消された会話に意味深な空気を感じ取る。私が彼と会っていない連絡をとっていない20年、何があったのだろうか。

 そんなこと、今の自分にとっては、どうでもいい話。

 だけど、おもむろに、彼の左手を見てしまう。あるはずのしるしは、そこになかった。

 わたしの中で、何かが動きだす予感がした。

#2へつづく:「私、まだ終わってない」出世は現場からのリストラだ…50前、あがく女が縋った“男との復縁”という選択】

ミドリマチ
記事一覧
作家・ライター
静岡県生まれ。大手損害保険会社勤務を経て作家業に転身。女子SPA!、文春オンライン、東京カレンダーwebなどに小説や記事を寄稿する。
好きな作家は林真理子、西村賢太、花村萬月など。休日は中央線沿線を徘徊している。

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


くねくねコロンは信頼の証♡ 無防備な“たまたま”をガン見しちゃおう
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
【難解女ことば】「婆」の部首はさんずいではない。正解は?
 知っているようで意外と知らない「ことば」ってたくさんありますよね。「女ことば」では、女性にまつわる漢字や熟語、表現、地...
40女と20代男子、親子並みの年齢差だけど…! ホンネの残念LINE3選
 40女と20代男子とでは、親子並みの年齢差があります。だからこそ、LINEの送り方には注意したほうがよいかもしれません...
玄関でモワ~ン、子供の足が臭い! 家庭で簡単にできる3つのニオイ対策
 子供が成長するにつれて気になってくるのが「子供の足の臭い」です。特にスポーツをやっている子供や、汗をかきやすい夏などは...
母と夫がまさか…流行りの性格診断で腰抜かす『16Personalities』が怖い
 SNSのプロフィールに診断結果のアルファベットを入れたり、それぞれの性格をコンテンツにまとめたりと、若者を中心に流行し...
2024-07-06 06:00 ライフスタイル
えっ、そんな理由で? スナック「出禁客」がやらかすアウトな共通点
 みなさん、行きつけの飲食店で「出禁」の人って実際に見たことありますか?  スナックなんかだと多そうだし、そうい...
神秘的な尊さの“たまたま”…会えなくなるその日まで雄姿を記録しよう
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
ストレス発散で爆買い! それでも後悔しない3大成功例と3大失敗例
 女性のストレス発散方法といえば? そうですね、ショッピングです。気のむくままに爆買いをするとなぜか爽快な気分になります...
2024-07-04 06:00 ライフスタイル
ガーデナーの必見「服部牧場」ルポ ペレニアルガーデンってなんですか?
 神奈川の片田舎が立地の猫店長「さぶ」率いる我がお花屋にも夏がやってきました。店先には鮮やかな夏の花が、屋外にはガーデニ...
3大加工アプリ有料版比較!K-POPアイドル“名指しフィルター”の実力は…
 SNSで写真を投稿するのが当たり前になった今、プリクラ並みに盛れる加工アプリも続々と登場しています。無料でも十分ハイレ...
無重力空間みたい! クネクネころんな“たまたま”君をパチリ
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
夕暮れ時に浮かび上がる曲線美
 夕暮れ時に浮かび上がる曲線美――。  それに気づく人はあまりいないようだ。  あなたはどうですか?
【難解女ことば】「御御御付」はなんて読む? ヒントは日本食
 知っているようで意外と知らない「ことば」ってたくさんありますよね。「女ことば」では、女性にまつわる漢字や熟語、表現、地...
毎月誰かに「誕生日おめでとう」義家族グループLINEは面倒くさいの極み
 結婚した夫の母親から、ある日突然「家族のLINEグループを作ったんだけど、入ってくれるわよね?」と言われたら、あなたは...
酒癖悪い夫の最悪エピ集「口臭いんですけどいつも歯磨きしてます?」
 酒癖の悪い夫を持つと、女性は苦労するもの。場合によっては周りに迷惑をかけてしまうため、夫の代わりに謝罪したり止めに入っ...
海外旅行と整形手術、そして私。
 久しぶりの海外旅行だ。まだ「コロナ」といえばメキシコのビールでしかなかった頃に、友人と台湾へ茶を飲みに行って以来である...