更新日:2025-12-22 08:00
投稿日:2025-12-22 08:00
普段と変わらない会話なのに
深夜の街は静かで、空気は透き通っていた。最初は他愛もない話をしていた。大学の課題のこと、ゼミの先生の口癖、この前あったテストの珍事件。
普段と変わらないはずの会話なのに、二人きりの空気はどこか少しだけ違っていた。
ふと、美帆がつまずきかけた。その瞬間、祐介が反射的に腕を伸ばす。指先が触れ、そして離れる。それだけで鼓動が跳ねるように速くなる。
その後、しばらく沈黙が続いた。気まずさよりも、言葉を挟んでしまうのが惜しいような静けさだった。美帆が俯いて歩いていると、突然、手がそっと包まれた。
「…大丈夫?」
祐介の声は小さく、少しだけ震えていた。美帆はその時の感触を、今でもはっきり覚えているという。
暖かくて、優しくて、でもどこか頼りなくて。まるで「離したくない」と言われているように感じた。
言葉はなくても満たされて
歩幅が自然と合っていき、指が絡まるたびに胸が苦しくなるほどドキドキした。並んで歩いているだけなのに、体温がゆっくり上がっていく。
お互いほとんど喋らなかったのに、不思議と心は満たされていった。
「この夜が終わったら、もう友達には戻れない」
美帆は直感的にそう思ったという。そして、その直感は当たっていた。
その後、二人は正式に付き合ったわけではない。気持ちを伝えたタイミングが合わなかったり、それぞれ就活が忙しくなったりして、関係は曖昧なままゆっくり薄れていった。
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