「かわいそうに…」かつては港区美女、今では老けた子育て女に――都落ちした親友に感じた優越感

ミドリマチ 作家・ライター
更新日:2026-02-07 11:45
投稿日:2026-02-07 11:45

【戸塚の女・塚本優梨愛29歳#1】

 東海道線に品川で乗り換えて30分、そこからバスで5分、バス停から10分の位置に、優梨愛の新居はあった。

 奈江は目黒に住んでいる。家からまっすぐ来たはずなのに、もうすでに1時間以上は経っていた。

 バス停に降り立ちひとつ、白い息を吐く。ハッキリ言ってありふれた郊外――本人は「新築マンションの見晴らしのいい最上階」だと言っていた。だけど、実は駅からも遠い丘の上にある、10階程度の中層マンションだった。

「遠いところをわざわざありがとう」

 インターフォンを鳴らすと、乳児を抱いた優梨愛が出迎えてくれた。飾り気のないその笑顔に、ドアを開けるなり奈江は目を見開いた。

 奈江の記憶の中にある彼女と、だいぶ印象が違っていたから…。

【関連記事】「世帯年収1500万じゃ恥ずかしい」御茶ノ水からの“都落ち”…武蔵小杉のタワマンを選んだ女のプライド【武蔵小杉の女・鈴木綾乃 35歳】

すっかり老けてしまった友人、美貌はどこへ?

 奈江と同じ29歳なのに、目の前の女は40歳前後と言ってもいいくらい老け込んでいる。全体的な肉付きもよくなったようにも見える。

 それ以前に、こんな状態で人前に出ても平気である感覚に幻滅した。

「これ、出産祝い。シャネルのクリスマスコフレ、とっておいたの」
「わ、ありがとう。買い物に行く暇、全然ないからうれしい!」

 奈江は、恐る恐る白い小さな紙袋を優梨愛に渡した。優梨愛は中も見ずにリビングテーブルの傍らにそっと置く。

 シャネルは彼女のお気に入りのコスメブランドだったはず。すぐに開けて、ルージュをお試ししてくれると思っていたのに。

 奈江が優梨愛と会うのは1年ぶりだった。

 みなとみらいのインターコンチネンタルホテルで開かれた、参列者が200人を超える豪勢な披露宴以来だ。その時はろくに話すことができなかったから、ちゃんと顔を合わせたのは1年半前になる。

 優梨愛は結婚前まで、大手IT企業の美人広報としてメディアにも出演するほど、界隈では有名人だった。

 中学から青山学院で華やかな友人も多い、輪の中心が似合う美女。男の子はもちろん、女の子からも好かれていて、港区辺りで開催される何かしらのパーティーには、必ず彼女の姿があった。

 しかし、そんな優梨愛が選んだ結婚相手は、スーパーで正社員をしているという一般男性だった。その職業が悪いというわけではない。ただ、彼女がその人を選んだのが意外だったのだ。

 てっきり有名人か経営者の誰かを捕まえるものだとばかり思っていたから。

 しかも、相手は体重が100キロ近い巨漢で、ハッキリ言ってさえない容貌だったことが、なおいっそうびっくりだった。何かの秘密を握られているのではと勘繰ってしまうほどの。

ミドリマチ
記事一覧
作家・ライター
静岡県生まれ。大手損害保険会社勤務を経て作家業に転身。女子SPA!、文春オンライン、東京カレンダーwebなどに小説や記事を寄稿する。
好きな作家は林真理子、西村賢太、花村萬月など。休日は中央線沿線を徘徊している。

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


月経ディスクにベットする女の覚悟「ストレスを減らす手伝いがしたい」
 生理用品の一種で使い捨て可能な「月経ディスク」を企画・販売する「MONA company」代表取締役の向井桃子さん(3...
3万のフレンチ? 1カ月の食費ですけどー!心で泣いた“女子飲み”の誘い
 仲良くしている友達や、恋愛対象として見ていた人との会話で「私とは住む世界が違う……」と感じた経験はありませんか? 今回...
【45歳からの歯科矯正】歯科矯正の洗礼か! 頬がこけ、そして便秘に…
 総費用160万円かけてワイヤー矯正(表側)に踏み切った“40代半ば婦人”の歯科矯正ほぼほぼリアタイ体験談です。  今...
男性用のレース下着って知ってる?トム・クルーズと極道の「色気」の正体
 コミックや書籍など数々の表紙デザインを手がけてきた元・装丁デザイナーの山口明さん(63)。多忙な現役時代を経て、56歳...
やっぱりハブられてる? 飲み会に自分だけ誘われない理由と3つの対処法
 自分は仲良しだと思っていたグループで、自分以外のメンバーが飲み会をしていた…… なんてことが発覚したら、かなりショック...
察知できないから危険でヤバい!「ステルス地雷系の競わせ屋」の罠こわっ
 みなさんの周りには、どんなヤバい人がいますか? あ、いると決めつけてすみません……。でも正直、「この人、ヤバいな」とす...
縦も横もななめも…直線だけで造られた街の違和感と落ち着き
「なんだか不思議な風景だな」とファインダーを覗いたら、その理由に気がついた。  縦も横もななめも、すべて直線だけで...
私は佳代だよ、レイちゃんってかすりもしねえ! 関係が終わった決定打!!
 仲良しの女友達や意中の彼からのLINEでも、幻滅したり、縁を切りたいと思ったりすることはありますよね。  今回は...
40女スーパー銭湯でととのえず、ぴーちくぱーちくな先客にモヤった話
 スーパー銭湯が好きです。週末のランニングがてら、あちこちの施設に出向いております。広い湯船にざっばーん! からの~、サ...
まるで御神体のよう! 美しく雄々しい“たまたま”に幸せを祈ります…
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
どれくらい実践してますか? 家でできる環境にいいこと「7つの習慣」
 子供たちに限りある資源を残すためには、私たちの日々の努力が欠かせません。今回は、みんなが普段心がけている環境にいいこと...
胡蝶蘭はお祝い専用? 寺の住職から聞いた「お悔やみ花」としての需要
「つかぬことをお伺いしますが……」  猫店長「さぶ」率いる愛すべき我が花屋には、お客様から毎日のように“ちょっと困...
台無しなんですけど!家族旅行なのに「夫のイライラ言動」と4つの予防策
 世の女性の中には、せっかくの家族旅行中、「夫のイライラする言動」によって、楽しい雰囲気が台無しになってしまうケースも…...
“頑張り屋のメンヘラ”が「セルフラブ」という人生の処方箋を知りました
「セルフラブ」という考え方は、確実に私の人生に大きな影響を及ぼしています。  セルフラブについて学び始めた時「世界...
【にわか呑み鉄】電車とビール好きにたまらない「流鉄BEER電車」に参戦
 さる9月2日(土)、千葉県流山市で「電車好き」と「ビール好き」垂涎の1日限りのイベントが開催されました。  通常は入...
かつて入り浸った店も 横丁の思い出も時代と共に変わってゆく
 昼間の細い路地を軽装の観光客が闊歩する。  誰かにとってはノスタルジーでも、また違う誰かにとっては新鮮に映るんだ...