物事の終わりの「残念です〜」に、どう答えればよかったか。そして心に残る本当の気持ち。

新井見枝香 元書店員・エッセイスト・踊り子
更新日:2026-02-14 11:45
投稿日:2026-02-14 11:45

物事の終わりはいつも慌ただしい

 そうこうするうちに、ストリップ劇場も1つ2つ閉館して、そのたびに「残念です~」と、ほとんど劇場で会ったことのない人たちから声を掛けられる。そんなことを言われても、私にはどうにもできない。

 できるならもう、とっくにしている。そして今度は、隔週で配信していたラジオ番組が終了した。パーソナリティをクビになったわけではなく、これもまたえらい人がどうこうして、サービス自体が終了したのだ。よって、今までたくさんのゲストを呼んで交わした言葉たちが全て、消えた。

 それはかつてエッセイの連載をしていた「cakes」というWeb媒体も同じで、コツコツ書き連ねた大量の文章が全て、消えた。これらに関しても、「残念です~」に対応することに追われ、本当に自分は残念だったのかどうか、わからないままだ。物事の終わりはいつも慌ただしく、騒がしい。

 初めて閉店を経験した書店では、お店を閉めた日からが戦いだった。閉店作業は、滅入る暇もないほど大変だったのである。こんな経験をしてなお、また新たに始めようと思えるなんて、人間ってすごいな、としぶとさに感心する。

 全てを片付け終えた完全撤退の日、からっぽになった売り場で、大量にテイクアウトした飲茶を、みんなでもりもり食べた。そして広々とした店内で人狼ゲームをして、まだ残っていたプロジェクターに映し、壁一面のテレビゲームで遊び尽くした。

 終わりだからこその、やりたい放題だ。人間には時折、そういう〝終わり〟が必要なのかもしれない。終わりだけれど、それぞれが前を向いているような、妙な晴々しさがあった。

「残念です~」はいりません

 そういうわけで、「コクハク」は終了しますが、「残念です~」はいらないです。終わるのはたぶん、私のせいではありませんし、私ひとりががんばってどうにかできた話でもない。ここに書き連ねた文字は、ただ消えるのみ。

 そんなエッセイは死ぬほどある。私がきちんと管理しないから、あっちの雑誌、こっちのweb、と何年も書き散らかしっぱなしで、書いた本人がもう思い出せない。でもそれらは私の仕事で、得た収入で私はごはんを食べ、今に命をつないでいる。

 コクハクのギャラで食べた大好物の回転寿司や、原稿を送り終えたら飲む最高の生ビールが、私の血肉になっている。でも、死んで焼かれれば、それも消えてなくなるだけ。それでいい。何かを残したいとはこれっぽっちも思っていない。

 ただ、明日になればお腹が空くし、ビールが飲みたくなるから、仕事をしないとならない。それがまた「コクハク」連載みたいに、自分にとって愉快なものであれば、これ以上の幸せはない。ありがとうございました。

新井見枝香
記事一覧
元書店員・エッセイスト・踊り子
1980年、東京都生まれ。書店員として文芸書の魅力を伝えるイベントを積極的に行い、芥川賞・直木賞と同日に発表される、一人選考の「新井賞」は読書家たちの注目の的に。著書に「本屋の新井」、「この世界は思ってたほどうまくいかないみたいだ」、「胃が合うふたり」(千早茜と共著)ほか。23年1月発売の新著「きれいな言葉より素直な叫び」は性の屈託が詰まった一冊。

XInstagram

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


暑い暑い東京の夏の思い出
 一緒に連れて来てもらったんだ。  いいね、こういうの。
ゆらゆら尻尾がたまらにゃい! “たまたま”のほのぼのツーショット
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
「麻婆豆腐」の由来は?
 知っているようで意外と知らない「ことば」ってたくさんありますよね。「女ことば」では、女性にまつわる漢字や熟語、表現、地...
波動、引き寄せ、前世はフランスの作家⁉ スピリチュアルにハマったの人のトンデモLINE3選
 スピリチュアルにハマった人からのLINEに心がざわついた経験はありませんか?  何を信じても本人の人生なので自...
ほっこり癒し漫画/第80回「るーるールルルー」
【連載第80回】  ベストセラー『ねことじいちゃん』の作者が描く話題作が、「コクハク」に登場! 「しっぽのお...
女子のダラダラLINEを終わらせたい時はこれよこれ。既読スルー前に遂行する鉄板テク3つ
 女友達とLINEのやりとりをしていてありがちなのが、目的のないダラダラした会話になること…。  自分は楽しく会話...
非常識な「子持ち様」にイライラが止まらない。子持ちじゃない勢“心の中”の攻防
 最近よく耳にするワード「子持ち様」。「特別扱いされて当たり前」「子持ちの方が偉いでしょ」と勘違いした態度を取っている親...
癒しと勇気を与えるにゃ! 天使みたいな“たまたま”にロックオン
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
炎天下の植え込みで元気に咲き続けた花とは? 暑すぎる夏でも「優勝した植物」答え合わせ 
 猫店長「さぶ」率いる愛すべき我がお花屋の日常業務として、「公共の仕事」なんてものもございます。近隣地域の公園や道路の植...
“幽霊商店会”から「相談がある」と突然言われ、会合に出てみると…何!ナニ!!なにー!!!
 東京下町育ちの私、ここ35年以上都心(港区、渋谷区、目黒区周辺)暮らしをしている。現在は、とある人気神社周辺、そこそこ...
SNSの闇だよね…承認欲求がダダ漏れのウザい投稿あるある5選
 SNSで知人や友人と繋がるのが普通の時代。みんなのプライベートを垣間見れる一方で、「あ〜またやってるよ…」とゲンナリし...
【調香師が推す】夏疲れを絶つ!アルガンオイルで作る簡単アロマ化粧水。フェロモンタイプ別に解説
 夏の疲れが一気に出やすいこの時期は、いつもよりていねいなスキンケアで肌を労(いた)わってあげましょう。今回は、フローラ...
やっかいなママ友トラブルにさようなら! 無駄なストレスを抱えない秘訣とは
 セックスレスやセルフプレジャー、夫婦の在り方などをテーマにブログやコラムを執筆している豆木メイです。  今回は「...
楽天1位常連「-10℃日傘」実力は? 遮光率100%、雨天兼用だけどアラフォーならではの意外な弱点が…
 話題のコスメや、広告でよく見かける化粧品や日用品。「webでよく見るあの商品、本当にイイの?」「買ってみたいけれど、口...
どんな対応が正解? 陰謀論にハマった家族や友達への対応方法3つ。諦める前に試したい!
 さまざまな情報に溢れたネット社会では、正しい情報と間違った情報を見抜く目が必要です。でも、孤独や不安などから冷静な判断...
お地蔵さんのパワー
 街道の片隅で、どれだけの仏が力を合わせれば良い世の中になるのだろう。  日本全国津々浦々でも足りないの?