更新日:2019-11-14 17:02
                                投稿日:2019-11-07 06:00
                                
                                                                
                            私はこの人に犯されたのだ
彼女がはっと振り返りました。一瞬、バツの悪そうな顔をしました。そして、「わあ」と、まるでいま気づいたというふうに、手にした布巾を広げます。
G「うっかりこれで、床を拭いちゃったぁ」
私「……いいですよ。私もたまにやりますし」
私はとにかく全裸の彼女を正視できませんでした。
G「ねえ、お腹空いた? 私がなにか作ってあげる。一緒にお買い物に行こう」
私「今日はこれから、やらなきゃいけない仕事があるので」
G「そんなの、明日だっていいでしょ。どこの会社の原稿? 私が見てあげるよ」
私「Gさんの会社に送る原稿なんです。ちゃんと集中してやりたいんので」
Gを尊重するような言い方で何度も伝えると、彼女はなんとか了承し、それでもシャワーを浴びたり丁寧にスキンケアしたりと一時間以上がかかり、ようやく帰り支度を終えた彼女を玄関まで送ろうとすると、彼女がおもむろに私に近づき、囁くのでした。
G「ねえ、キスして」
苦い液が口中に湧きました。でも、これで帰ってくれるのだから……
私は自分より背の低い彼女のために、身を屈めました。すると、彼女はさらに顔を俯かせるのでした。まるではにかむ少女のように。
私はさらに、身を屈めなければなりませんでした。その屈んだとき、私はもっとも、自分はこの人に犯されたのだ、との実感を持ち、脳味噌が床に引きずり落とされるような感覚を覚えました。
次回に続きます。
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