グループの“可愛い”を一手に担った長濱
しかし本人の理想とは真逆に、彼女のルックスや声質はとても“可愛らしく愛嬌いっぱい”がよく似合った。“クールでカッコいい”欅坂46の楽曲たちの中で、彼女のソロや少人数でのユニット曲は王道のアイドルソングばかりで、グループの“可愛い”を一手に担った。平手が長く欅坂46のセンターで叩きに遭ったように、人気者であるがゆえに長濱も大いに叩かれた。
そして“クールでカッコいい”を求められる坂道AKBセンターでは、周りの先輩が上手くできる鋭い表情も自身は納得するものが出せず苦しんだ。ここでもまた心ないバッシングに遭うこととなったのだ。
長濱が欅坂46を卒業するに至ったのは、一部報道にあるようなメンバーとの確執などではなく、人々に求められる“可愛くて愛嬌いっぱいの優等生”と“クールでカッコいい”楽曲の表現への葛藤、壮絶なネット叩きといった背景が重なって、本人の卒業イベントでの発言通り、自身が持ち得るものを放電しすぎて空っぽになってしまったこと、そして人前に出ることから距離を置きたいというのが真相だ。またアイドルとして紅白連続出場、武道館ライブ到達、各メディアでの露出やラジオMC、写真集女王を経験し「やり切った」という言葉も嘘偽りない真実だ。
その決心をする約半年前、グループから離れていた平手が18年7月に復帰して以降も、長濱は常に平手を思いやった。平手が音楽番組で欅坂46に合流し初めて「ガラスを割れ」のセンターに皇帝然と帰ってきた時も、「最後のてっちゃん(平手の愛称)の目を閉じているところが好き」と褒めた。
同年8月発売の7thシングル「アンビバレント」のMVについても「てっちゃんの最後の笑ってる顔が好き」と言い、同曲の音楽番組披露では「『感情は二律背反』のてっちゃんの決めポーズが好きで後ろからこっそり見ている」と明かした。
一方の平手も自身のラジオ「SCHOOL OF LOCK」(TOKYO FM)にて、アンビバレントで長濱の両膝を自身の両手でつかんで側転する大技を2人で本番前に何度も練習したこと、次第に2人のあうんの呼吸でできるようになり事前練習も不要になっていったことを、絵付きで解説していた。
この大技は下手をして失敗すると大怪我にもなりかねないもので、平手の身体能力とそれを支える長濱の体幹、そして何よりお互いの信頼関係がなければ成立し得ないものだ。
メンバーは皆、おえつ交じりに号泣
また同年8月から始まった欅坂46の全国ツアーでも、平手が上手くファンサービスをできずにいたところへ長濱が頭を撫でて、笑い合うシーンも見られた。
9月のツアー千秋楽では4曲目の「ガラスを割れ」で感情のすべてを爆発させ、“ビーストモード”に入った平手は誤って花道で2mの高さから転落し、公演中に病院へ救急搬送された(このパフォーマンスの様子は前述のドキュメンタリー映画予告編でも一部確認できる)。
その後は残されたメンバーでライブは進行し、途中、キャプテン菅井友香(24)から説明がなされファンにも非常事態だと伝わった。
検査結果で軽い打撲と診断された平手はすぐに公演へ戻ろうとした。このままではツアーは終われないという思いからだ。アンコールを含めた19曲目の後、平手は間に合った。ダブルアンコールに登場し多くのメンバーが涙した。メンバーのあまりの号泣ぶりに平手は穏やかに微笑み返した。その中でも、平手は後ろで号泣する長濱を抱きしめたのだ(このことも後に長濱はとても嬉しかったと話していた)。
曲中、平手はアドリブでメンバーの方を向いて、とても柔らかい笑顔で両手を広げた。それを見たメンバーは皆、おえつが入るほど号泣した。
ダブルアンコールが終わり全曲目を終え、舞台から掃けたメンバーたちだったが、カーテンが開いたままで、客席からはメンバー皆が平手の元へ集まり泣いていたのが見えたという。
また同年9月に収録された、メンバーがスタッフ抜きで豪邸で1日を過ごす企画「KEYAKI HOUSE」(8thシングル「黒い羊」初回限定盤特典映像)では、長濱が平手に「『微笑みが悲しい』またやりたいねー! やろうねー!」と語りかけるシーンがあった。
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