「車内という密室」だからこその関係
――素晴らしいセックスだったのですね。
「はい……こうしている今も、体が震えるほど幸せでした」
――先生とはその後も?
「はい、続いています。ただ、じき私が教習所を卒業するので、会うのは外でのみとなってしまう。それがちょっと不安なんです」
――不安とは?
「ご存知のとおり、先生とは『車内という密室』だからこそ付き合いが始まったんです。
私が卒業しても先生との関係は続いていくと思いますが……第二の私――つまり、別な女性と親密にならないか心配なんです。
あ、奥さんは別ですよ。奥さんには嫉妬の感情が湧きません。ただ、密室ゆえに、私のような積極的な女性が、先生に誘いをかけたらと思うと心配で――」
――わかります。恋愛には常に不安がつきまといますよね
「それとは別に、先日、同い年の恋人にドキッとすることを言われたんです。
彼の誘いを断り切れなくて、セックスに応じていたら『あれ? お前、フェラ上手くなったな。なんかあったのか?』って、いぶかしがられて。
S先生とのセックスで、テクニックが上達したようです」
――それは大変! 大丈夫でしたか?
「はい、『アナタのためにAVを見て練習したの』って、うまくごまかしました。
彼はニンマリしていましたが、相変わらず自分本位なセックスで……だから私、彼に抱かれている時は目を閉じて『今はS先生に抱かれているんだ』って自分に暗示をかけているんです。
そうすると、多少強引な行為も、脳内変換できますから……」
M子さんはふっと微笑んだ。
不倫に困惑しながらも、女としての幸せを存分に謳歌している――そんな印象だ。
そして彼女はインタビューする私を見すえて、きっぱりこう言った。
「不安は拭えませんが、『なるようになる』って言い聞かせています。
運命って言葉を軽々しく使うのは好きじゃありませんが、きっと『起きていることがすべて正しい』と思える流れになるんだと。
先生との関係がこのまま続いても、別れても……それは私にとって正しい道、運命なのだと信じています」
そう凜と表情を引きしめた。
おわりに
――M子さんに取材をしたのが2月。
現在、新型コロナウィルスの影響で、自動車教習所が自粛要請を受けている状態だ。
私はM子さんに連絡をした。無事、免許を取得できたのか、S先生とのその後はどうなっているのか。メールを送ってみたが、まだ返信が来ない。取材の時はあれほどこまめに連絡を取り合っていたのに――。
ふと、彼女の言葉が思いだされた。
「起きていることはすべて正しい」
キッパリ告げた彼女のこと。どのような結果になっても、彼女は抗うことなく受け入れ、進むべき道を歩いていくのだろう。ならば――彼女自ら連絡をくれるまで、そっとしておきたい。
エロコク 新着一覧