ほどよいシャキシャキ感を残すのがポイント
おひたしは家庭の食卓にも並ぶような地味な料理です。メインになるのは小松菜やホウレン草、三つ葉などの葉野菜。高級な食材は使いません。それだけに作り手の技量がハッキリと出ます。船生さんは「おひたしをほめられるのが一番うれしいですね」と言います。
実際に腕のいい料理人は、このおひたしが抜群に上手だし、船生さんが作るそれは澄んだ優しい味わいになります。同じように作っているはずなのに、素人のおひたしとは雲泥の差です。どうすれば船生さんのようなおひたしを作れるのでしょうか。
「大事なのは、野菜を茹ですぎないことです。これは、ホウレン草でも三つ葉でも同じ。ほどよいシャキシャキ感を残すのがポイントです」
小松菜の場合、目安は20秒と10秒。沸騰したお湯に茎の部分を沈め、20秒ぐらいしたら葉っぱの部分まで入れて10秒ぐらいで取り出し、すぐに氷水で冷やす。ここでモタモタしているとクタクタになってしまいます。
「おいしいと思う歯応えになっているかどうかを確かめるには、茎の方をちょっと食べてみることです。私もいつもそうやって確認しています」
もうひとつのポイントが、茹でた小松菜の水気をしっかりと絞ってからだしに漬け込むこと。
「余分な水気があると味がぼやけてしまいます」
少しはプロの味に近づけるかも。
材料
・小松菜 1束
・油揚げ 1枚
・えのき茸 1束
・だし 300㏄
・薄口醤油 30㏄
・みりん 30㏄
・炒りごま 少々
・削り鰹 少々
レシピ
(1)油揚げは細かく刻み、えのき茸は根元を切り落として半分に切る
(2)鍋にだし、薄口醤油、みりんと1の油揚げとえのき茸を入れて火にかけ、沸騰したらアクを取り鍋ごと氷水で冷やす
(3)別の鍋に水を張って火にかけ、沸騰したら小松菜を色よく茹で、氷水に取って冷やしてから水気を絞り、3センチくらいの長さに切る
(4)冷やした2と3の小松菜を混ぜ合わせ、冷蔵庫に半日くらい置いて味を馴染ませる
(5)器に盛り付け、仕上げにごまと削り節をかける
本日のダンツマ達人…船生宜之さん
▽船生宜之(ふにゅう・よしゆき)
1974年、栃木県日光市生まれ。中学生の頃から料理やお菓子作りをするようになり、高校3年生の夏に料理人になると決意。調理師学校を卒業後は「器、食材、サービスを含めて最高のものを見たほうがいい」と考え「なだ万本店 山茶花荘」へ。その後、神楽坂の割烹料理店や飛騨牛専門店を経て、2011年に「割烹船生」をオープンした。
▽割烹 船生(かっぽう ふにゅう)
本格的な和食を手頃な価格で食べられる下町の人気店。無農薬の野菜など体に優しい食材を使ったメニューの数々で世のグルマンたちを魅了している。「おいしい料理でお腹いっぱいになってもらいたい」という店主の思いがあふれるコース料理はボリューム満点。自家製のカラスミや名物のだし巻き卵サンドなど丁寧な仕事がなされた料理がズラリと並ぶ八寸は圧巻だ。季節の食材を使ったシメの土鍋のご飯も絶品。東京都墨田区東駒形3-5-6 千葉ビル1階。
(日刊ゲンダイ2021年11月18日付記事を再編集)
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