我慢強いA型長女は返上! がんがくれた「キャンサーギフト」

コクリコ 編集者
更新日:2019-06-25 06:00
投稿日:2019-06-25 06:00
 私は42歳で子宮頸部腺がんステージ1Bを宣告された未婚女性、がんサバイバー1年生です。がん告知はひとりで受けました。誰にも頼れず、心の内側にずっと不安を抱えながらがんと闘うのはとてもつらいこと。なぜ私が……と思う気持ちと向き合って、そして不確かな情報に惑わされないように、私の体験がお役に立てれば幸いです。

がん告知される前と後では何も変わらない

母娘ともに肝が据わっていた(写真:iStock)
母娘ともに肝が据わっていた (写真:iStock)

【Note.08】

 子宮全摘が決定的になった私。とてもショックなことではありますが、そこで泣くことはありませんでした。

 がんを宣告されてからずっと「この先どうなるんだろう?」と不安だったし、今朝は大量出血をしていて「もうダメなんじゃないか」と絶望していたので、「子宮を取ればとりあえず大丈夫なんですね。はいはい、それじゃ取りますよ!」という気持ちだったのかも……。

 40歳を越えていた、ということも大きかったです。母も同様だったよう。

 先生は私たちに向かって、「ふたりとも精神的に安定してますね。なら大丈夫だ。明日から会社に行って、入院までしっかり働いて」と言います。

 そして、

「出血はおさまってきているし、止血剤も出すし、大丈夫。編集者なんでしょ? バリバリ赤字いれちゃうんでしょ~?」と、ペンで書き殴るしぐさをされます。

「えっ……いいんですか?」

「だって、今どこも具合悪くないでしょ? がんだって知らなかったら今日だって働いてるでしょ?」

 たしかに。がん告知される前と後で、私はなにも変わってないんだ……。

「“子宮をとります”って言うと、たいていの患者さんは、泣き崩れてしまうんだよねぇ。結婚したばかりの人はとくに。旦那さんがつかみかかってきたり、お母さんが泣き崩れたりすることもある。そうなると、こちらの話もまともに聞いてもらえないの」

 それはそうだろうな……。未婚の42歳でもショックなのですから、当然です。

「なにも手につかず、仕事や家事ができなくなったりする人もいる。でも、コクリコさん親子は平気そうだ。だったら、手術までは普通に暮らして、しっかり治療費を稼いできてください。がんはお金がかかるからね」

 がんになるとお金がかかるのか……(これについては改めてお話させていただきますね)。

「じゃあ会社行きます」

「そうして。あと、運動もした方がいいね」

 すると、今度は母が「えっ? 先生、運動なんてしても大丈夫なんですか??」と聞きます。

「大丈夫ですよ。だってこの間まで普通に運動もしてたでしょ? 腹筋があるほうが、術後にすぐ立てるし。ところで……すごい腹筋しているけど、なんのスポーツしてるの?」と先生。

 CT画像を指さし、「これ腹筋なんだよね。2㎝くらいあるの。すごいね」

 がんになるまで、ピラティスに毎週通っていたかいがあり、私のお腹にはがっつり腹筋がついていました。なんだかちょっと恥ずかしい!

「ピラティス、よく知らないけどいいんじゃない。じゃあ入院までピラティスもしておこう。なんでも食べて、手術の日まではできるだけ普通に暮らして」

「お母さんより長生きしてほしいな…」

はい…(写真:iStock)
はい… (写真:iStock)

 婦人科がんを専門にしている先生は、これまでにたくさんのがん患者さんを診てきています。がんになったことで、女性が失う可能性があるもの――仕事、お金、趣味、恋人や夫、健やかな心と身体、そしていつかの未来に産まれたかもしれない子ども……。

 これらのいくつかはきっと失われてしまうけど、それでも「がんにすべてを奪われてはいけない」というメッセージを、先生がくださったような気がしました。

「あ、刺激で出血しちゃうから、性交渉だけはだめね」

 ちなみに出血していなければ性交渉はOKで、当然ながらがんは移りません。

 この日はMRIやCTの正確な画像診断結果が出ておらず、がん転移の有無が不明でしたので遠隔転移がないという前提で、「手術は広汎子宮全摘手術、両卵巣も摘出。後日、診断結果を見て手術日程を決めましょう」ということで診察は終わりました。

 病院を出て、母とカフェに寄ります。

「あの先生はいい先生って気がするな~。お母さんはこれは治るなって思った!」

「私も思った」

「お母さんがコクリコちゃんの病院に行くって言ったら、お父さんが『俺も頭痛いからこれから病院に行くのに……?』って言うのよ! どうやらついて来て欲しかったぽいのよ! 冗談じゃない。あの人、娘にやきもち焼いてるのよ!」

「……お父さん……」

「一人暮らしだと心配だし、入院まではうち(実家)に戻って、そこから会社に行く!?」

「いい。今の家にいる」

 緊張が解けたのか、母はおしゃべりを続け、私はカフェラテをすすりなながら相槌を打ちます。その後、ふたりそろって最寄駅まで歩き、それぞれの家に帰るため、母と私は逆方面の電車に乗ることに。

 別れ際、母が私の背中をさすりながら、「がんばるんだよ。とりあえずコクリコちゃんには、お母さんより長生きしてほしいな……」とつぶやきました。

決断→怒涛の告白LINE

甘えることも大事(写真:iStock)
甘えることも大事 (写真:iStock)

 ひとり電車に乗り、座席につくと涙があふれます。心配させちゃったな……。

 手術して、元気になって、母より長生きしよう。
 できるだけ母に心配をかけないようにしよう。
 でも、辛い日だってあるだろう。
 そんなときは頼れる人にどんどん頼ってしまおう。
 甘えてしまおう。

 積極的に誰かに頼ることのできなかった、意地っ張りで我慢強いA型長女、はじめての決断です。

 帰りの電車で友達にどんどんLINEします。

〈子宮頸がんになっちゃったんだ。今朝は救急車に乗ってね……〉

 こう伝えると

〈そういうときはいつでも連絡して! 夜中でも行くから!〉
〈つらいときはうちにおいで~〉
〈絶対大丈夫! 治るよ!〉
〈知り合いの知り合いがお医者さんだから聞いてみる!〉
〈どうしてもっと早く言ってくれなかったの~〉

 と、たくさんの優しい返事をもらえました。

 大丈夫。私の周りにいる人はみんな優しい。きっとみんなに支えてもらえる。

今あるものをもっと大事にしていこう

コクリコは強い(写真:iStock)
コクリコは強い (写真:iStock)

 手術前に友人宅に集まって、友達3人と私でご飯を食べました。そのことを母に写真つきで報告し、

〈みんながいつでも連絡していいって言ってくれたよ! おばあちゃんになってもみんなで旅行に行こうって言ってたよ!〉

 と伝えると、

〈お母さんは、安心しました。コクリコちゃんがいいお友達に囲まれていることが本当にうれしくて、涙が出ます。きっとコクリコちゃんもお友達に優しくしてきたってことね。あなたはお母さんの誇りです〉と返事が来ました。

 先生の言葉を借りると「キャンサーギフト」

 がんという命にかかわる病気になってはじめて気づく、命の大切さ、時間の大切さ、人のやさしさやあたたかさ。それをがんがくれたギフトだというのです。

 がんになんかならなくても気づきたいものですし、これまでの自分がそれらをないがしろにしてきたとも思いませんが、がんになってから「私は優しい人たちに恵まれているな」とつくづく感じました。

 結婚もしてないし、子どももいないし、と自分を悲観することも多かったですが、今あるものをもっと大事にしていこうと気づかされました。

 さて手術日までのカウントダウン。私がどう過ごしていたかはこの次に――。

(つづく)

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