私が稼ぐしかない!「月経ディスク」で起業、元居酒屋店員の猪突猛進人生

コクハク編集部
更新日:2023-09-17 06:00
投稿日:2023-09-17 06:00

国内製造の「月経ディスク」を企画・販売する会社を起業

 パワフルの塊のようなアラサー女性がいます。「株式会社MONA company」代表取締役の向井桃子さん(35)。生理用品の一種で使い捨て可能な「月経ディスク」を企画・販売する会社を立ち上げた――というと、MBAを取得したゴリゴリのやり手起業家のようなイメージを持たれるかもしれませんが、180度真逆、全然違う。いい意味で期待を裏切られました。

 もともと経営はズブの素人。コロナ禍で収入が激減した時に、たまたま出会った「月経ディスク」に惚れ込み、「これいけるんちゃう?」の直感で突き進んだ猪突猛進型です。それでいて、しなやかな感性も兼ね備えているから“いいな”って目が離せなくなる。

 前編・後編の2回にわたり、向井さんの覚悟と度胸に迫ります。

父の浮気がきっかけで美容師に…

 月経ディスクはフェムテック商材として注目される生理用品のひとつ、とりわけ日本国内ではまだまだ知名度の低い製品です。向井さんはそれを企画し、国内での製造・販売にまでこぎつけました。となれば、技術系分野に明るいリケジョかなと思いきや、美容専門学校卒の元美容師という経歴の持ち主。

 フェムテックの世界に携わるまでに歩んできた人生にも“ドラマ”があり、美容師の道を選んだ理由からして、なかなか込み入っているのです。

「両親は、父の浮気が原因で離婚しました。私が受験を控えた高校3年生の時です。おかげで家庭は大混乱。正直、勉強どころじゃありませんでした。

 専業主婦だった母からは『人生、いつ何が起こるか分からない。手に職をつけなさい』と口を酸っぱくして言われましたが、やりたいことなんてすぐには見つかりません。

 同居していた祖母がたまたま美容師だったので、手に職=美容師という単純な考えで美容専門学校に進んだのです」

 専門学校卒業後は地元・愛知県の美容室に就職。生まれつきの手先の器用さを発揮し、見習い美容師の時代はシャンプーの指名率で同期NO.1になったことも。

 ──あたし、いけるんちゃう?

 持ち前のポジティブマインドと細かい作業を得意とする大きな手を活かし、シャンプーに特化したサロンで勝負したいと考えるようになったといいます。

社長が来て「社員として働かない?」

 そして、転職活動を始める前の景気づけで鉄板料理の居酒屋で飲んでいると、店長から「最近よく来るじゃん? 美容室辞めたの? だったら少しウチでバイトしない?」と声がかかります。

 高校時代は、おにぎり屋でバイトしていた向井さん。そもそも飲食にも興味があり、二つ返事で働き始めました。躊躇はなしです。

「居酒屋でバイトしたら、めっちゃ楽しくて。自分より年下のバイト仲間のコミュ力の高さにも驚いたんです。同じ接客業でも、美容室はひとりのお客様と接する時間が長いぶん、会話の糸口を探しやすい。それに比べて居酒屋はオーダーを取る時ぐらいなので、“一瞬”が勝負なんですよね。

 それでもお客さんの心をぐっとつかみ、“あの子がいるから通っている”という常連さんも珍しくない。このバイトで集客できなかったら、新しい美容室に就職したとしても、うまくいかないだろうなって。

 学べるものは学んでやろう、少し腰を据えてアルバイトリーダーになるぐらいまで働こう。そんな風に思って始めたら、気がついた時には2年も過ぎていました(笑)」

めちゃイケメンの社長の下で働きたい

 そろそろ転職しようと決めて店長に話すと、わざわざ本社から社長がやって来て、向井さんと面談し「社員として働かないか」とスカウトされます。

「めちゃイケメン! この社長の下で働きたい」とそのまま就職。この時、23歳。2、3年働いたとしても、まだ20代です。もし合わなくても美容業界に戻れると踏んでいたといいます。

「それなのに気が付いたら、楽しすぎてその外食チェーンに10年勤めてしまって(笑)。辞めたのは、昨年の2月です。仕事にやりがいも感じていたので、このままずっと飲食で働くのもありだなぁと思っていました。

 そんな時にイケメン社長から『金持ち父さん 貧乏父さん』の本を教えてもらい、漠然とですが、起業については興味を持ち始めたんです」

コクハク編集部
記事一覧
コクハクの記事を日々更新するアラサー&アラフォー男女。XInstagram のフォローよろしくお願いします!

ライフスタイル 新着一覧


あれ?誰とも喋ってない… 「コミュニケーションにはお金がかかる」という現実。孤独と戦うおばさんの生存術
 女性なら誰でも通る茨の道、更年期。今、まさに更年期障害進行形の小林久乃さんが、自らの身に起きた症状や、40代から始まっ...
「普通が得する時代に…」キラキラネーム世代が陥る“名付け疲れ”。唯一無二の名前=愛の証だった時代の功罪
 キラキラネーム、シワシワネームなど年代によって“名前”の傾向が異なります。名前が“社会的ラベル”になる現代では、名前を...
「あと10分」で4時間待ち!“遅刻”擁護派の私がキレた瞬間。やっと来た友達の信じられない一言
 みなさんは友人間での“遅刻”について、どう考えますか? 遅刻で友情に亀裂が入ったという衝撃エピソードを、みなさんにも共...
なんで“未読スルー”するの!? LINEの返信トラブルあるある。ガン無視される理由、あなたにあるかも…?
 LINEを送っても未読のまま返信がなかったり、それまで盛り上がっていたグループLINEの会話が止まったりすると、「嫌わ...
なんて見事な“にゃんたま”…!毛繕い中のねこ様がひょいっとポージング♡
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
「渡鬼」のよう? 娘の子どもは特別扱い、息子の子どもは…母の“孫びいき”が生んだ深い分断
 娘の孫には深く関わり、息子の孫には一歩引く――。家庭に潜む「実家びいき」と「孫差別」の背景とは?
【動物&飼い主ほっこり漫画】第106回「コテツ妖精になる」
【連載第106回】  ベストセラー『ねことじいちゃん』の作者が描く話題作が、「コクハク」に登場! 「しっぽの...
【漢字探し】「秒(ビョウ)」の中に隠れた一文字は?(難易度★★★☆☆)
 知っているようで意外と知らない「ことば」ってたくさんありますよね。「校閲婦人と学ぶ!意外と知らない女ことば」では、女性...
「気づかなかった」って本当? ズルさを感じる“忙しい”アピLINE3選。それ、やりたくないだけでしょ!
「忙しい」とアピールされたら、相手に少なからず遠慮したり気を遣ったりしますよね。しかしその心理を利用して、あえて忙しいア...
断捨離、終活…「モノを持たない」って本当に幸せなのか? 65歳童貞が提唱する“ミニマリスト”と真逆の生き方
 コミックや書籍など数々の表紙デザインを手がけてきた元・装丁デザイナーの山口明さん(65)。多忙な現役時代を経て、56歳...
お前はアイドルグループか? 更年期の味方「HRT」との出会い。婚活ぐらいマッチングが難しいやつめ
 女性なら誰でも通る茨の道、更年期。今、まさに更年期障害進行形の小林久乃さんが、自らの身に起きた症状や、40代から始まっ...
“にゃんたま”族が大行進!「おいしいオヤツはどこにゃ?」思わずシッポがピン♪
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
ひとりって、寂しいですか? アラフィフ独女が思う“一人旅”の幸福論。「誰にも気を遣わない時間」はなんて楽しいんだ!
 20代からひとり旅を続けてきた私。気づけば、誰かと一緒よりも「ひとり」でいるほうが、ずっと自分らしくいられる気がしてい...
可愛い顔して暴れん坊!“良縁を結ぶツル”の凄まじい繁殖力と開運パワー。室内で楽しむのもオススメ
 猫店長「さぶ」率いる我がお花屋は、神奈川の片田舎でお商売をさせていだいておりますゆえ、応援してくださる農家さんもすぐ近...
上司の「社会人、何年目?笑」にモヤッ。その嫌味、こう返せばスッキリ!私の賢い対処法
 職場で避けて通れない存在、それが「上司」。何気ない一言が嫌味っぽく聞こえる上司にモヤモヤしている人、多いのでは? 面と...