有能だったのに…出産で辞めたのは何故?
170cm近い長身で、細身のパンツスーツを華麗に着こなす、ショートカットの女性上司だった。仕事もバリバリできて、当時彼女は30代半ばだったろうか。
自分も将来はあんなふうなキャリアウーマンになりたいと麗菜は憧れたものだ。
しかし、既婚だった彼女は出産すると、育休取得後にあっさり会社を辞めてしまった。
麗菜の会社は、制度も充実しているし、育休をとった職員の同僚には祝い金が支給されるなど、子育てに理解のある風通しのいい職場のはずだ。
――あんなに仕事が好きだった人なのに、なぜ……。
育休から復帰せず、2年近く取りきって、そのまま会社を後にした彼女。人生の見本とするはずだったのに、裏切られた気分だった。
家庭という小さな世界に閉じ込められた結果、やればできることさえ考えられなくなった結果だろうか。
退社の挨拶に、乳児の子どもと共に来た彼女の顔は、もはや別人だった。イオンの2階で売っていそうな花柄のマザーズバッグを手にしていた。
彼女を見た麗菜は決意した。晶子を見本ではなく反面教師にしようと。
聞き覚えのある声。そこには…
絶対に、ああはならない。家庭や子どもを得ようとも、自分を見失わずにいたい。だからこそ、行き当たりばったりではなく、目標を高く見積もって計画的に進んでいきたい――と。
確固たる決意に燃えながら、時間を忘れ参考書に向き合う。育児に追われていると、勉強の時間でさえくつろぎを感じる。
その時だった。
「あら……もしかして、麗菜さん?」
聞き覚えのある声が背後からした。咄嗟に、顔を上げ、振り向く。
何気なく彼女の名前を思い出したのは、どこかでその姿が視界に入ったからなのかもしれない。
「晶子さん……?」
反面教師が、そこにはいた。
【#2へつづく:バリキャリ→量産型主婦への変貌に愕然「仕事も結婚も…なんて無理だよ」心配ぶった“呪い”はもうウンザリ】
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