櫻坂46エース候補 森田センターの黒い羊
一方、その平手が絶対的センターであった欅坂46は今月12日、13日の無観客配信ラストライブをもって活動休止、櫻坂46と改名し再スタートを切る。今年は脱退した平手の他にも4人の1期生が卒業しており、グループの今後を不安視する声もある。しかし先月27日に「欅坂46イオンカード」会員向けに限定でオンライン配信されたライブ「KEYAKIZAKA46 Live Online, AEON CARD with YOU!」では櫻坂46のエースとなりうる2期生の森田ひかる(19)が躍動した。
同ライブではこれまで平手がセンターを務めてきた6曲中5曲を代理センター経験があり、安定感のある菅井友香(24)、小林由依(20)、土生瑞穂(23)ら1期生が代わりに務めた。森田もグループトップクラスの人気を誇る逸材として、2期生で唯一、センターポジションに入った。それも、おそらく平手以外が表現するには最も難しい「黒い羊」で、だ。
そもそも平手にとってもこの曲をパフォーマンスすることは多大な負担のかかるものだった。黒い羊とは「厄介者」を意味し、他人と分かり合おうとするも拒絶され続ける“僕”が主人公。明らかに秋元康氏が平手にあて書きしたものだ。平手がこの曲に入り込むことは容易、というより問題はむしろ入り込みすぎてしまうことだった。この楽曲披露にあたっては当日を含め前後数日間、「黒い羊」の僕に入り込んでしまうこともあった。
ゆえにこの楽曲が公に平手センターで披露されたのはシングルとしてはごくわずかに留まった。多くの楽曲で連続してさまざまな人物に憑依しなければならないライブでは、必ず最後の楽曲として配置されていた。
森田ひかるの“僕”で魅了!最後には涙も…
ところがイオン配信ライブで「黒い羊」は、7曲目「世界には愛しかない」、8曲目「二人セゾン」という欅坂46初期の瑞々しさ溢れる2曲と、未発表だった爽やかなナンバーの10曲目「10月のプールに飛び込んだ」の間に“放り込まれた”。「二人セゾン」に続くMCで、キャプテン菅井の「イオンカードさんのCMでたくさん使っていただいた曲たち」という紹介から空気感がガラリと変わる「黒い羊」の披露へ繋がった。短いMCの間に、平手のために書き下ろされた「黒い羊」の世界観に入り込むことは容易ではなかっただろう。
だが同曲で森田は彼女なりの“僕”に没頭した。分かり合おうとしても周囲に幾度も突き飛ばされ絶望へと追い込まれていく様が、森田の苦痛の表情から見て取れた。主人公に入り込んだ森田が迫真のパフォーマンスを終える頃、目には涙を浮かべていた。
次の楽曲「10月のプールに飛び込んだ」は、学校内でやや反抗的な“僕”が笑顔で自由や平等を追い求める疾走感に満ちた青春ソング。「黒い羊」の絶望の世界から真逆の、現実的な世界観に一気に帰って来なければならなかった。同曲に平手は参加しておらず、誰が立っても代理ではない正式なセンターとなる。
“異例のセトリ”が森田の才能を印象付けた
公式の発表はないが、立ち位置としてはセンターは引き続き、森田だった。冒頭こそ瞳には涙が溜まったままで、振りも少し遅れるなどやや気持ちを立て直すのに時間を要したようにも見えた。だが、サビから始まるソロダンスでは力強さを見せたり、同じく2期生の藤吉夏鈴(19)や田村保乃(21)といった周りのメンバーを巻き込んで、笑顔でやんちゃな同曲主人公になりきった。
この爽やかなアイドルソングの流れに「黒い羊」が無理やり組み込まれたセットリストは、同曲と「10月のプールに飛び込んだ」どちらもがイオンカードのCMソングとして使用されていたという事情がなければ絶対ありえない並び順だろう。それでも、森田は気持ちをよく切り替えた。結果的にこの無茶なセットリストが森田の才能を浮き彫りにした。
エンタメ 新着一覧