キャスト2人が原作と見事に調和
本作は、美倉を稲垣吾郎さんが、ばるぼらを二階堂ふみさんが演じている点も作品に没頭してしまう理由の1つです。
読書家で芸術にも造詣が深く、ほんのりと影があるうえに上品な雰囲気を持つ稲垣さんは、美倉と見事に調和。
手塚治虫先生のご子息で本作の監督と編集を手がけた手塚眞氏が、別インタビューで「僕は、二階堂さんご自身をばるぼらっぽい人だと感じていた」と語っていたように、作中の二階堂さんはばるぼらそのもの。
お2人とも、原作から飛び出てきたかのようなのです。
ところでみなさまは、映画と原作の両方をチェックするタイプでしょうか。
筆者は、原作を先に読んでいたら映画は仕事ではないかぎり観ない、映画を観たら原作は極力読まない派でした。インタビューした何人かの監督が、口をそろえて言っていたからです。
「原作を、約2時間という尺の中にすべて収めることは難しい」と。
原作を知っているからこそ、映画で失望したくない。映画を先に観て原作を読んだら、はがゆい思いを抱えてしまうかもしれないという懸念があったからですーー「ばるぼら」に出会うまでは。
タブーに満ちた映像美をご堪能あれ
ですが、本作に関しては、映画と原作両方をぜひ、堪能していただきたいです。
「原作は連載当時、小学生の頃から読んでいた」という手塚眞氏の手腕により、映像化不可能といわれてきた名作が、完璧なまでに描かれています。美倉が異常性欲をむき出しにする、「マネキン」や「犬」のシーンも、下品ではなく上品すぎずという、絶妙なバランスで表現されています。
大人向け漫画の映画化なので、裸体や濡れ場のシーンが多いところも見どころの1つですが、もはやアート。エロティックでありながらも、下卑た印象は微塵もありません。稲垣さんにとっては挑戦作となるかもしれませんが、ファンのみなさまも芸術として鑑賞できると思います。
禁断の愛とミステリー、芸術とエロス、スキャンダル、オカルティズムなど、種々のタブーに挑んだ秀作。劇場で映像美を味わってみては。
11月20日(金)よりシネマート新宿、ユーロスペースほか全国公開。出演:稲垣吾郎、二階堂ふみ、渋川清彦、石橋静河、美波、大谷亮介、ISSAY、片山萌美、渡辺えりほか。監督:手塚眞
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