“神俳優”綾野剛主演作「ヤクザと家族」ラストが切なすぎる!

内埜さくら 恋愛コラムニスト
更新日:2021-01-29 06:00
投稿日:2021-01-29 06:00
「この俳優さんの主演作なら絶対におもしろいはず!」と、期待を抱かせてくれる綾野剛さんの主演映画「ヤクザと家族 The Family」が1月29日より公開。先行して鑑賞した内埜(うちの)さくらが、作品をリポートします。

家族のあり方を描いたヒューマンストーリー

「今の時代、タイトルに『ヤクザ』を入れる!?」と思う方がいらっしゃるかもしれませんが、本作はヤクザ稼業の男たちを軸に、家族のあり方を描いたヒューマンストーリーです。綾野剛さん演じる山本賢治は、証券マンだった父親がバブル崩壊後に手を出した覚醒剤で命を落とし、母親はすでに他界。身寄りがなく、その日暮らしの生活を送っていましたが、舘ひろしさん演じる柴咲博(広域指定暴力団の3次団体・柴咲組の組長)を、チンピラの襲撃から救ったことをきっかけに、血のつながらない2人は父子の契りを結ぶのです。

 本作は3部構成で、1995年から2019年の20年間を描いています。この20年間は、ヤクザが裏で幅を利かせていた時代から、暴対法の影響で、存続すら危うい状態に変化した過渡期です。時代に翻弄され稼業で生き抜くことが難しくなっている存在だからこそ、人間の原点である、家族関係を浮き彫りにできたのではと、筆者は感じました。

 キャッチコピーは「父も母もいないけど、私には《家族》がいました。」です。現在はコロナ禍で思うように人に会えず、必然的に人間関係を見直す時期に突入したといえます。本作で監督と脚本を担当し、シム・ウンギョンさんと松坂桃李さん主演の映画「新聞記者」(2019年)などでも世間に実力を知らしめた藤井道人氏と本作でもタッグを組んだスターサンズは、時代を先読む力があると、作品を鑑賞するとおわかりいただけると思います。

綾野剛さんは取材で“神対応”してくれる俳優

 藤井監督は「綾野さんのストイックな役への姿勢は、本作の脚本の世界を何倍にも広げてくれました」と語っています。何度か綾野さんを取材させていただいた筆者は、ストイックなうえにサービス精神にあふれた、紳士的な方だという印象を持ちました。綾野さんクラスの有名俳優さんは、複数媒体が同時に取材する「合同取材」から、媒体別の「個別取材」へ移行するパターンが一般的ですが、合同取材前のときでした。複数媒体のライターがそろっていると確認してから、「せっかくみなさんが早めに来てくださったのですから、少し早めですが始めましょうか」と、席についてくださったのです。そして、合同でも個別でも、ライターが良質な原稿を書けるよう配慮してくださったのでしょう。少し時間が押すぐらい、たくさんしゃべってくださいました。

 その役者魂は、作品にも惜しむことなく発揮されたようで。綾野さんは、山本が車に轢かれるシーンを、スタントマンに頼まず3回もトライしたとのこと。驚きで声が出てしまいそうなリアルな映像に仕上がっています。

セクシーな舘ひろしさんから目が離せない…

 山本を「ケン坊」と、実の子のようにかわいがる柴咲を演じた舘さんのお芝居にもしびれます。ご本人は「スカーフェイス」(1983年)のアル・パチーノをイメージしたとのことですが、ただカメラ前に立っているだけで放つ存在感は圧倒的。年齢を重ねて重みを帯びた、低く渋い声はセクシー。漢(おとこ)だけれど包容力のある柴咲は、舘さんにしか演じられなかったのでは……と、画面から目を離せませんでした。

次世代ブレーク女優 小宮山莉渚さんに注目

 作品には寺島しのぶさん、豊原功補さん、市原隼人さんなど豪華キャスト陣が物語の屋台骨を支えていますが、個人的に注目していただきたいのは本作が女優デビューとなる、15歳の小宮山莉渚(こみやま・りな)さん。綾野さん演じる山本と、尾野真千子さん演じる工藤由香の間に生まれた娘・彩役を演じています。出演シーンは少ないものの作品展開の鍵を握る重要な役を担っていて、きちんと作品に“爪痕”を残しているのです。ソフトバンクのCM「5Gってドラえもん? タケコプター篇」で若い頃のしずかちゃん役で出演もしています。個人的な意見ですが筆者は、数年後に「次世代ブレーク女優」として取り上げられるような気がしています。

 本作に話を戻しますと。海の底へと沈む山本の姿で始まり、沈んでいく山本で物語を締めくくるラストは、理由がわかるので切なくなります。家族とは。自分は家族を持つのか、持たないのか。今、大切にすべき人間関係とはーー。自分にとって大事なものはなにかを突きつけられる作品です。

1月29日全国公開(PG12)。配給:スターサンズ/KADOKAWA
出演:綾野剛、尾野真千子、北村有起哉、市原隼人、磯村勇斗、菅田俊、康すおん、二ノ宮隆太郎、駿河太郎、岩松了、豊原功補/寺島しのぶ、舘ひろしほか。監督&脚本:藤井道人

内埜さくら
記事一覧
恋愛コラムニスト
これまでのインタビュー人数は3500人以上。無料の恋愛相談は年間200人以上の男女が利用、リピーターも多い(現在休止中。準備中のため近日中にブログにて開始を告知予定)。恋愛コメンテーターとして「ZIP!」(日本テレビ系)、「スッキリ」(同)、「バラいろダンディ」(MX-TV)、「5時に夢中!」(同)などのテレビやラジオ、雑誌に多数出演。

URL: https://ameblo.jp/sakura-ment

関連キーワード

エンタメ 新着一覧


「ばけばけ」岡部たかしの“芸達者ぶり”に感心…。そして北川景子の夫・DAIGOの登場に期待したいわけ
 病に倒れた雨清水傳(堤真一)。トキ(髙石あかり)は日頃、お世話を焼いてくれる傳への恩返しのため、看病を買って出る。日中...
桧山珠美 2025-10-15 16:30 エンタメ
Snow Manが“客寄せパンダ”と物議も…無視できない多大なメリット。異様に高い“再生数”で海外の注目を集めるか
 韓国の人気音楽番組「ミュージックバンク」(KBS)が主催する12月の「2025 MUSIC BANK GLOBAL F...
こじらぶ 2025-10-14 11:45 エンタメ
【芸能クイズ】再始動のダウンタウンに期待の声。では「笑ってはいけない」第1回の“ペナルティー”は何だった?
 テレビやネットでふと耳にした、あのひとこと。記憶の片隅に残る発言の背景には、ちょっとした物語があるのかも?  ネ...
“超豊作”の秋ドラマがアツい! 大泉洋×野木亜紀子に期待爆発、三谷幸喜の“クセ強ドラマ”はジワ伸びの予感?
 夏の暑さが落ち着き、心地よい夜風が吹くこの季節。ドラマの秋がやってきました!  2025年の秋ドラマは、まさに「...
「ばけばけ」お見合い相手は“べらぼう”の29歳俳優じゃないか!過去“朝ドラ”女優も登場で今後が楽しみ
 両家の親同士も良好な雰囲気で、トキ(髙石あかり)と銀二郎(寛一郎)のお見合いはうまくいきそうな空気に。このままいけば結...
桧山珠美 2025-10-11 12:30 エンタメ
フワちゃんを許すことが“大人”なのか? 非常識な人にブチギレるのは当たり前ではないのか
 Xで芸人・やす子に対して、《おまえは偉くないので、死んでくださーい 予選敗退でーす》と揶揄する投稿をしたことをきっかけ...
堺屋大地 2025-10-10 13:06 エンタメ
永野芽郁、「お兄ちゃん」呼びの“癖”を暴露されて可哀想。“妹アピ”に騙される単純な男が多すぎる件
 今年4月、田中圭との不倫疑惑スキャンダルで世間を騒がせた永野芽郁が、3年ほど前の交際相手・坂口健太郎から二股をかけられ...
堺屋大地 2025-10-09 11:45 エンタメ
「ばけばけ」トキ(髙石あかり)の妄想に一瞬、脳がフリーズ。ほんわかテイストに賛否が分かれそう?
 ついに貧乏脱出のチャンス! はじめてのお見合いに挑む、トキ(髙石あかり)。  司之介(岡部たかし)やフミ(池脇千...
桧山珠美 2025-10-08 14:34 エンタメ
藤井風、92歳の黒柳徹子を“乙女”に変えるフェロモン。ついにシニア世代まで色気がバレたか
 最近、藤井風のことが気になって仕方がありません。9月5日に3rdアルバム『Prema』が発売。それに伴い、9月はメディ...
笑顔がこわい!「ばけばけ」トキ(髙石あかり)の“顔芸”が完璧だった。見どころの一つだと確信した回
 貧乏脱出のため結婚を目指す、トキ(髙石あかり)。しかし、チヨ(倉沢杏菜)とせん(安達木乃)と行った恋占いの結果は一人だ...
桧山珠美 2025-10-06 17:13 エンタメ
平野紫耀らの「脱退発表」から約3年…Number_iとKing&Prince、それぞれの現在地と課題。“二大天然ボケ”不在の影響はあるか?
 2022年11月、King & Prince(以下、キンプリ)から2023年5月をもって平野紫耀(28)、神宮寺勇太(...
こじらぶ 2025-10-05 11:45 エンタメ
「ばけばけ」は“聖地巡礼”したくなる朝ドラの予感。実際にある島根県・八重垣神社の“恋占い”してみたい!
 明治19年。トキ(髙石あかり)は、借金を返すために親戚の雨清水傳(堤真一)が経営する機織り工場で働いていた。しかし、膨...
桧山珠美 2025-10-04 10:42 エンタメ
「あんぱん」アンパンマンは粒あんか、こしあんか…“お遊び”が楽しかった特別編。蘭子の“その後”はモヤモヤだけど
「あんぱん」が終了したと思ったら、早くも翌週の9月29日(月)~10月2日(木)の四夜連続で、スピンオフが放送されました...
桧山珠美 2025-10-04 08:00 エンタメ
「ばけばけ」しめこ汁に“朝から残酷”の声もあるけど…ピーターラビットの話を思い出す
 突如、トキ(福地美晴)やフミ(池脇千鶴)、勘右衛門(小日向文世)の前から姿を消した司之介(岡部たかし)。何日経っても家...
桧山珠美 2025-10-02 15:48 エンタメ
「ばけばけ」は往年の名作を越えられるか? 「虎に翼」から続く岡部たかしの“父親”像が楽しみだ
 この世はうらめしい。けど、すばらしい。没落士族の娘・松野トキ(髙石あかり)と外国人の夫・ヘブン(トミー・バストウ)。怪...
桧山珠美 2025-09-29 17:50 エンタメ
「あんぱん」最終回。半年間、2人を見守ってきた視聴者にはグッとくる場面…ま、終わりよければすべてよし!
 のぶ(今田美桜)の病室に着いた嵩(北村匠海)は、にっこり笑うのぶの姿に胸がいっぱいになる。その後退院したのぶは、嵩に自...
桧山珠美 2025-09-27 15:10 エンタメ