好みに応じて餅とのバランスを
10~11月はボラの卵巣が出回る時期。腕のいい和食の料理人たちは、こぞって自家製のからすみを仕込み始めます。割烹船生で出されるからすみも、もちろん自家製です。
朝早くから市場に行き、日中は仕込みをしながら、夜は客前で料理を仕上げていきます。ほかにスタッフがいるわけではなく、すべて1人。いやはやプロの仕事ぶりには感心するしかありませんが、「若い頃はしごかれ、2軒目では途中で料理長が抜けて20代半ばで自分がやるしかない立場に追い込まれました。そんな苦しい時代を経験したから、今もこうしてやっていられるんだと思います」。
そんな船生さんのからすみは塩分が控えめで、ねっとりとしたコクが引き立って。強火でサッとあぶり、焼いた餅にサンドすれば、コメの甘さとからすみの塩辛さが、歯に粘りつくような食感とともに、ほどよいハーモニーを奏でます。
「つきたてのお餅でつくると、さらにおいしいんですよ」と船生さん。とはいえ、さすがに家庭では難しいし、パックの切り餅でも十分に美味しい。
ただし、からすみの市販品は塩が強すぎるタイプもあるので、好みに応じて餅とのバランスを考えた方がいいかも。
材料
・からすみ 5切れ
(1枚約5グラム)
・角餅 3個
レシピ
(1)からすみは好みの厚さにスライスし、表面を焦がさないようにサッとあぶる
(2)お餅は半分の厚さに切り、こんがりときつね色に焼く
(3)からすみを餅で挟んで完成
本日のダンツマ達人…船生宜之さん
▽船生宜之(ふにゅう・よしゆき)
1974年、栃木県日光市生まれ。中学生の頃から料理やお菓子作りをするようになり、高校3年生の夏に料理人になると決意。調理師学校を卒業後は「器、食材、サービスを含めて最高のものを見たほうがいい」と考え「なだ万本店 山茶花荘」へ。その後、神楽坂の割烹料理店や飛騨牛専門店を経て、2011年に「割烹船生」をオープンした。
▽割烹 船生(かっぽう ふにゅう)
本格的な和食を手頃な価格で食べられる下町の人気店。無農薬の野菜など体に優しい食材を使ったメニューの数々で世のグルマンたちを魅了している。「おいしい料理でお腹いっぱいになってもらいたい」という店主の思いがあふれるコース料理はボリューム満点。自家製のカラスミや名物のだし巻き卵サンドなど丁寧な仕事がなされた料理がズラリと並ぶ八寸は圧巻だ。季節の食材を使ったシメの土鍋のご飯も絶品。東京都墨田区東駒形3-5-6 千葉ビル1階。
(日刊ゲンダイ2021年11月19日付記事を再編集)
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