わずか7日で構築された支配のパターン 美沙さんのケース#1

神田つばき 女と性 専門ライター
更新日:2020-01-11 07:08
投稿日:2019-04-11 06:00

巧妙に植えつけられる罪悪感と自責の念

彼のトラウマを刺激してしまった!?

「8歳下なのに私をお前と呼び捨てにしたり、私の欠点も指摘する。そんなところも好感が持てました。本音で接してくれるんだ、と思ってうれしかったし、年下でドSって素敵だなあって」

 ふたりの関係が変わったキッカケは、健斗が美沙さんの部屋に居つくようになって10日が過ぎたころでした。職場の飲み会で終電になった美沙さんがドアを開けると、部屋の中は真っ暗闇。「健斗……?」と呼んでも返事がありません。

「いないのかと思ったらテレビの画面だけが(消音にして)ついていて、その前に座っているんです。視線は画面に向けたまま。今思うと笑っちゃう絵なんですけど、そのときは驚きました。名前を呼んでも、ごめんねってあやまっても振り向いてもくれない。大切な人の心を傷つけちゃった、と後悔しました」

 小学校三年のころ、宿題をさぼってテレビを見ていたのが両親にバレた健斗は、テレビの前に何時間も正座させられ、画面から目をそらすと太ももを定規で叩かれるという体罰を繰り返し受けていたといいます。

「とっさに思い出したのはそのことです。健斗のトラウマがよみがえっちゃう、と私は動転してしまったんです」

 健斗の芝居に同情を誘われ、自分のせいだと思いこんだこの瞬間が、半年以上も続くモラハラとマインドコントロールのはじまりでした。

1週間で相手のことしか考えられないように洗脳

「健斗は私が寝室に引き上げるまで、テレビの画面をにらみつけて座っていました。翌朝は起きてバイトに行ったようでしたが、その後も口をきいてくれません。健斗がおかしくなっちゃう! 私のせいで! そう思って、とにかく刺激しないように、早く口をきいてもらえるように、それしか頭になくなりました」

 美沙さんは必死に健斗の好物を食卓にならべますが、相手は箸もつけない。バイトからちゃんと帰ってきてくれますように、と祈るだけの日が続きました。

「作戦だったんですよね、すべて演技だったんです。バイト先では賄いを食べて、仲間とふつうに口をきいて仕事してたらしいです。ただ、私を精神的に追いつめるためだけに演技を続けていたんですよ」

 他人の精神を乗っ取ろうとたくらむ人間にとって、この最初の仕込みが何よりも重要なのです。健斗の顔色だけを見て1週間が過ぎたとき、健斗は突然美沙さんに話しかけてきました。

 次回、「二人きりの世界に閉じこめる悪魔のテク 美沙さんのケース#2」に続きます。

【あわせて読みたい】
夢みたいな新婚生活に落ちた黒い影…志穂さんのケース#1
無言で脅迫するモラハラ夫との2年間…真由さんのケース#1

神田つばき
記事一覧
女と性 専門ライター
離婚と子宮ガンをきっかけに“目がさめて”女性に生まれたことの愉しみを取り戻すべく、緊縛写真のモデルとライターに。私小説「ゲスママ」、イベント「東京女子エロ画祭」「親であること、毒になること」などを企画。最近は女犯罪者や緊縛表現者に関するZINEの制作・販売を開始。Xnoteblog

関連キーワード

ラブ 新着一覧


独身男性の「人妻好き」を鵜呑みにするのは危険すぎる? 隠された心理5つ
 人妻を好む独身男性はレアな存在。本来、男性は好きな女性に独占欲を抱いたり狩猟本能が働いたりするため、自分のものにできな...
恋バナ調査隊 2025-03-03 19:47 ラブ
ママ友の旦那、同僚の夫…不倫相手の奥さんと知り合いの場合、何が必要?
 職場の同僚の旦那さんや、ママ友の旦那さん…。知り合いの女性の旦那さんと不倫する女性もいるのではないでしょうか。今回は不...
恋バナ調査隊 2024-11-29 06:00 ラブ
官能小説を書きたがる女性が増殖中。プロの作家は“素人”とココが違う
「官能小説を書きたい」という女性が増えています。主婦や会社員、それから会社社長らはなぜ、なんのために、性愛を書きたがるの...
内藤みか 2024-11-28 06:00 ラブ
冬に行くと後悔するデート場所4選。イチャ通り越して、寒すぎて身も心も凍り付く!?
 最近肌寒くなってきて、冬を感じるようになってきましたよね。寒さを言い訳に、彼氏や気になる男性とデートでくっつくことがで...
恋バナ調査隊 2024-11-28 06:00 ラブ
マッチングアプリのヤリモク回避! 男の本気度4つの測り方&モテ投稿3つの法則
 顔も名前も知らない異性との出会いにドキドキできる、マッチングアプリ。上手に活用できれば、素敵なイケメン男性との出会いも...
恋バナ調査隊 2025-03-03 19:49 ラブ
なぜ女だけが罪悪感を抱く? 夕食の準備が間に合わない…ワーママが直面する仕事と家庭のプレッシャー
 セックスレスやセルフプレジャー、夫婦の在り方をテーマにブログやコラムを執筆している豆木メイです。
豆木メイ 2024-11-26 06:00 ラブ
夫に裏切られたサレ妻が離婚しない理由6選。我慢か金づるか諦めか、それとも…
 夫に裏切られたサレ妻たち。「許せない」「顔も見たくない」と、夫に憎しみを抱くのは当然でしょう。でも、離婚しない人もいる...
恋バナ調査隊 2024-11-26 06:00 ラブ
何様ですか? 根拠なき自信がキモ過ぎる“婚活おじさん”図鑑。4つのあるあるで即認定!
 アラサー・アラフォーになると、本気で婚活を始める女性も多いですよね。婚活市場には素敵な男性ももちろんいますが、「何様で...
恋バナ調査隊 2024-11-26 06:00 ラブ
「夫の様子がおかしい」妻の浮気発覚後、サレ夫の心理。ひそかに復讐を画策している?
「出来心でつい…」「寂しくて…」と、夫と離婚する気がないのに浮気してしまう女性たち。そんな妻に対し、夫はどう思っているで...
恋バナ調査隊 2024-11-25 06:00 ラブ
女性が「浮気したい!」瞬間4選。さあ理性を保ち、どうやって我慢する?
「彼氏と別れたくない! でもちょっと遊びたい」、そんな浮気心が芽生える瞬間は女性にもあるでしょう。女性が浮気したくなる背...
恋バナ調査隊 2024-11-24 06:00 ラブ
「法律婚と浮気癖は関係ない」事実婚妻に“すべて”を委ね、女遊びを繰り返す48歳男
「冷酷と激情のあいだvol.222〜女性編〜」では、事実婚の夫であるヒロツグさん(48歳・仮名)の浮気癖に悩みながらも、...
並木まき 2024-11-23 06:00 ラブ
「年収2,000万円の生活が手放せない…」浮気夫と我慢して暮らす44歳バリキャリ女性の分岐点
 男女の関係では、交際相手や配偶者の態度に悩む人も少なくありません。愛し合っている男女間でも、価値観や物事の判断には個人...
並木まき 2024-11-23 06:00 ラブ
白昼ラブホ不倫から4年、瀬戸大也と馬淵優佳に「離婚へ」報道。再構築に失敗する夫婦とは?
 リオ五輪のメダリストで、パリ五輪に出場した競泳選手の瀬戸大也(30)が、20日配信の『文春オンライン』で、元飛込日本代...
渋谷の路上で号泣ビンタを目撃!女同士の秘め事はネカフェのカップルシートで… #2
 夫とのレスから女性に恋焦がれるようになった弥生さん(33歳主婦/子供ナシ)。お相手はカルチャースクールでK-POPダン...
蒼井凜花 2025-03-03 19:13 ラブ
車デートで5つの蛙化あるある。この男ないわあ…ドライブで本性見たり!
 意中の男性としたいデートを聞かれて、「ドライブ」と答える女性は多いですよね。ドライブであれば、目的地までも車内で2人き...
恋バナ調査隊 2024-11-22 06:00 ラブ
早く離婚しろ! とキスマークをつけたら…女たちがやらかした「不倫のルール違反」4選
 不倫は周囲にバレてはいけない恋愛。そのため、暗黙のルールが存在します。そのルールを守らなかったとき、関係が終わってしま...
恋バナ調査隊 2024-11-22 06:00 ラブ