すいかばかと呼ばれる男<3>「水果」でささやかな夏の贅沢を

Koji Takano フォトグラファー
更新日:2022-07-23 06:00
投稿日:2022-07-23 06:00

夕刻ふたたび畑へ

 お客も引けた夕刻。再び麦わら帽子を頭に乗せ畑に向かう。玉回しの作業が待っている。蔓になっている実は片側が地面に付いているため、1玉ずつ180度回転させまんべんなく日を当てないときれいなすいかはできないという。

 蔓や実を踏まないよう慎重につま先立って歩く。ツイスターゲームでもしているように無理な姿勢で草の中に鼻先を突っ込み玉を回す。

水の果物と書いて「水果(すいか)」

「腰が痛ぁい~」。そんなことを言いながら、日暮れまで畑を這いずり回る。

 仕事を終え疲労がうかがえるが、「明日も明後日もこれから同じ毎日が始まりますよ」と話す表情は、なんだか少し嬉しそうだ。

「すいかは漢字で『西の瓜』と書きます。砂漠で生まれた食べ物だからね。国によっては野菜の部類だったり水筒代わりに持ち歩くところもあります。でも俺が作ったすいかは、水の果物と書いて『水果』です」

 蚋(ぶゆ)に刺されお岩さんのように瞼が腫れあがらせた顔でニヤリと笑いかける。

唯一無二の「水果」を求めて

 7月27日はすいかの日だという。すいかの縞模様を綱に見立て「7(な)つのつ(2)な(7)」(夏の綱)と呼ぶ語呂合わせが由来だそうだが、本格的な暑さを迎える時期だけに相応しい。

 暑い夏が始まる。それは、旨いすいかが食べたくなる季節だ。白州まで思い出作りに行ってみたらどうだろう。

 ただし、「すいか割りするから売ってくれ」とだけはくれぐれも言わないように。

「寿風土ファーム」
address:山梨県北杜市白州町台ヶ原615
営10時~17時

Koji Takano
記事一覧
フォトグラファー
1963年神奈川県横須賀市生まれ。日芸写真学科卒業後、外国航路の船乗りとして世界を股にかけ、出版社勤務を経て、現在はフリーのフォトグラファーとして活動。近著は写真集「東京の風に漂う」(銀河出版)。
http://www.kojitakano.com/

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


猛暑の夏…健康な高齢者でも熱中症予防を“家族ですべき”理由
 介護士をしていた経験をもとにライターをしています。筆者はこれまで、認知症の症状や認知症を発症した時の具体的なケアについ...
がんでごめんね…「人生最後の生理」はある日突然やってきた
 私は42歳で子宮頸部腺がんステージ1Bを宣告された未婚女性、がんサバイバー2年生です(進級しました!)。がん告知はひと...
さくらももこさんのエッセイに学んだ 本当の「時は金なり」
「時は金なり」という言葉、年を取れば取るほど心に沁みるのはなぜでしょう。私がこの意味を意識したのは、さくらももこさんのエ...
結婚したら退職する? 自分が幸せになるための人生の歩み方
 少し前のOLだったら「寿退職」なんて当たり前だったのでしょうが、今はそうはいかないですよね。共働きが普通だし、お金の心...
産毛のような初々しさ…もうすぐ去勢する“にゃんたま”の刹那
 羊毛フェルトで作られた「にゃんたまストラップ」が巷で流行中。フニフニ揉むと、心癒され気持ちが落ち着くのだそう。 ...
大人になっても趣味に没頭したい! おすすめできる3つの趣味
 ストレス社会で闘う毎日にふと疲れた時、「何もかも忘れたい」と思うことはありませんか? 多くの人は飲み会や買い物で鬱憤を...
鬼灯って読めますか?夏の風物詩「ホオズキ」の意味と活用法
 地域によりますが、八月はお盆月でございます。  八月の声を聞くとワタクシのお店もお盆のお支度で慌ただしくなり、店...
夕陽で赤く輝いて…黒猫“にゃんたま”は美しい絵のようだった
 にゃんたマニアにみなさんこんにちは! きょうは、初めての黒猫にゃんたまωです。  黒猫のにゃんたまって、真っ黒だ...
ホステスの世界にもある「裏引き」という名の“闇営業”の実態
 世間をにぎわせた“闇営業”。「事務所を通さず仕事のオファーを受け、報酬を得る」行為は、夜のクラブでも存在します。店に許...
遠方に住む親が心配…介護サービスの上手な選び方&使い方
 遠方に住んでいる両親が介護状態になった時、多くの人が「大丈夫かなぁ……」と心配になるはずです。しかし、現代では親の介護...
住宅ローンは一生無理?がんになった場合の気になるお金の話
 私は42歳で子宮頸部腺がんステージ1Bを宣告された未婚女性、がんサバイバー1年生です。がん告知はひとりで受けました。誰...
料理下手を克服する4つの方法 もうメシマズ女と言わせない!
「料理を作ると思った通りの味にならない」「どうしても美味しくない」、そんな悩みを抱えていませんか? せっかく料理をしよう...
恋愛序盤の花火デートはキケン! 準備ゼロでは行かないが吉
「花火デートってドキドキする」――。この季節、誰もが期待し盛り上がる「花火大会」ですが、調べもせず安易にデートとして行く...
大きなチャトラ“にゃんたま”君 立派な尻尾が上がった瞬間!
 にゃんたまωに、ひたすらロックオン! きょうはみんな大好きチャトラ君の鈴カステラです。  小さな港を忙しそうにパ...
声かけが大切! 子どもの“やる気スイッチ”をONにする方法
 子どもの心スペシャリストとして子育て中のお母さんたちと接していると、「子どもにやる気を起こさせるにはどうしたらいいか?...
ピルをもらう方法と病院選びのコツ…“避妊”が理由でも良い?
 第1回「日本はピル後進国!『ピル=避妊』の考え方は遅れています」、第2回「ピルで確実に避妊するなら?心構えや男性任せの...