加齢たるたるのあるある<1>目の下のたるみは立派な現代病

新井見枝香 元書店員・エッセイスト・踊り子
更新日:2022-08-18 06:00
投稿日:2022-08-18 06:00
 書店員として本を売りながら、踊り子として舞台に立つ。エッセイも書く。“三足の草鞋をガチで履く”新井見枝香さんのこじらせ(?)月イチ連載です。
 生きていれば、いつでも、いついつまでも何かしら悩みは尽きないものだけど、加齢が原因であろうあれは、どう対処したらいいのでせう……。

私の顔面にある変化が…

 自分のステージ写真をパソコンの画面で見ている。プロのカメラマンがシャッターを切った数千枚の中から、販売用に6枚を選ばなければならないのだが、どれも顔がイマイチで気が遠くなる。

 まさかあの怪奇現象が私の顔面にも起き始めているのか?

 ジェーン・スーさんがエッセイ集『ひとまず上出来』(文藝春秋)に、《四十代になると、どんなにメイクをしても、化粧が写真に写らなくなる》というSFのような話を書いていたが、これが、その、あれなの!?

浮き上がるシミ、眉毛はいずこへ?

 舞台化粧を施した顔はなぜかすっぴんに見え、おまけに裸で汗をかいているから、“風呂場のドアを開けて出たら、それは「どこでもドア」で、うっかりストリップ劇場のステージに出てしまった人”のように見えてくる。

 濃密なコンシーラーで消したはずのシミは心霊写真のように浮き上がり、三色グラデーションで立体的に仕上げた眉毛は、床にでも落としたようだ。

 そして逆に、楽屋の鏡には映らない何かが、目の下に出現している。厚手の肌色絆創膏を貼ったようなふくらみ。プレビュー画面を拡大すると、それは周囲が陥没したことによって取り残された陸地が、浮島のように見えているだけなのだった。

 顔面トリックアート! 私の目の下は腫れているのではなく、たるんで落ち窪んでいる。腫れは引けば平らになるが、へこんだものを盛り上げるのは難しそうだ。同年代の友人に相談すると、すぐに目の回り用のパックを買い集めてきてくれた。ありがたくて涙がちょちょぎれる。

“貼ったまま寝てください”シート

 目元用保湿パックに目元用温熱シート、中でも「マイクロニードル」なる小さな針が仕込まれた、それこそ絆創膏のような形のパックが効きそうだ。針といっても痛くはないらしく、肌に触れたら溶けてしまうが、成分が浸透するのに数時間を要するらしい。

 貼ったまま寝てはいけないパックが主流の中、貼ったままお休みください、と明記されている。横になったらすぐウトウトする私にぴったりだ。

 2枚入りの1回分で1430円。失敗は許されない。へこんでいる部分を裏側からは押せないので、表側から優しく(チクチク)応援するしかない。目の下のたるみって本当に厄介!

温泉は目の下のたるみにも効く?

 そうこうしているうちに、温泉地でのストリップ仕事が入った。源泉掛け流しの公共浴場には「リウマチ、神経痛、創傷、便秘、痔疾」などと効能書きが掲げられている。

 はたして目の下のたるみには効くだろうか。ぐっと身体を沈め、顔の半分まで湯に浸かっていると、常連のおばあさんに「髪の毛を湯に浸すでねぇ」と叱られてしまった。

 そうでなくても、既に茹だって限界だ。かくして私は、日光東照宮の〈見ざる〉となった。手のひらで湯を掬い、両目を覆うスタイルである。

新井見枝香
記事一覧
元書店員・エッセイスト・踊り子
1980年、東京都生まれ。書店員として文芸書の魅力を伝えるイベントを積極的に行い、芥川賞・直木賞と同日に発表される、一人選考の「新井賞」は読書家たちの注目の的に。著書に「本屋の新井」、「この世界は思ってたほどうまくいかないみたいだ」、「胃が合うふたり」(千早茜と共著)ほか。23年1月発売の新著「きれいな言葉より素直な叫び」は性の屈託が詰まった一冊。

XInstagram

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


猫さまについて行くと… 草むらの先には“にゃんたまの里”があるのかも
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
「丸顔でかわいい」はOK?NG? 相手を不快にさせる“外見いじり”7つの要注意ワード
 何気なく発したそのひと言、もしかすると「外見いじり」だと捉えられるNGワードかもしれません。昔は軽い冗談や褒め言葉とし...
2025-07-17 08:00 ライフスタイル
夏の納会、どうする? 幹事の “苦労あるある”と負担を軽くするコツ
 会社の飲み会、友人同士の集まり、歓迎会に送別会。イベントの数だけ“幹事”は存在します。「幹事を任されるのは、信用されて...
黄色いドライフラワーで「金運」アップを! 置いちゃいけないNGゾーン。埃まみれは問題外です【専門家解説】
 お花を飾りたい気持ちはある。それなのに…気づけば水は干上がり、葉っぱもカリカリ。そんな経験ございませんか?  ワ...
毎日バレー2時間って部活か!?地獄の「PTA役員」5つの体験談
“PTA役員”と聞くだけでゾワッとする保護者は少なくないはず。その理由の大半は、このような地獄体験が待っているからでしょ...
大容量コスメで“損”をする? お金がたまらない人がやりがちな「美容アイテム」のワナ【美容家監修】
 物価高なのに、所得は満足に上がらない我が国ニッポン。その影響は、日々の美容費にも。  しかし「おトク」だけを意識...
夏休み目前! 旅行で失敗したこと、2位は「移動」問題。老体に“夜行バス”はもう無理~
 旅行中、「ここは節約しよう」とケチったことであとから後悔した…なんて経験はありませんか? 「なんであのとき、もうちょっ...
スキマに夢中な“にゃんたま”くん、向こうに何が見える?「もう一つの世界があるにゃ」
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
あれ、意外と楽しい? PTA役員をやってよかったこと6選。変な校則を改定、学校のマル秘情報もゲット
“PTA役員”と聞くと、「なりたくない」「面倒くさそう」とネガティブな感情が湧く保護者が多いでしょう。しかし、「なってみ...
キャー!ガチで恐ろしかった5つの体験談。義父が亡くなった日、義母がニヤリと笑っていた
 あなたがこれまでの人生でいちばん怖かった出来事はなんでしょうか? 霊的な体験、人間の恐ろしさなど、今回はさまざまな“ゾ...
【動物&飼い主ほっこり漫画】第100回「お散歩のバイトだワンワン」
【連載第100回】  ベストセラー『ねことじいちゃん』の作者が描く話題作が、「コクハク」に登場! 「しっぽの...
独身と既婚、正反対な女ふたりの悲しい共通点。高級ディナーより“551の肉まん”が羨ましい理由
 実久は妻子ある男性と交際をしているが、その日は彼に「仕事が入った、先に行っていて」と言われ、大磯のプールリゾートに先乗...
仕事や恋に謳歌する私と、髪を振り乱して子育てする彼女。本当に「幸せ」なのはどっち?
 実久は妻子ある男性と交際をしているが、その日は彼に「仕事が入った、先に行っていて」と言われてしまう。大磯のプールリゾー...
子供の粗相は許して当然? 鼻につく母親の口ぶり…私は「子連れの女」に同情することにした
 東海道線・グリーン車で都内から1時間弱。それからバスで10分くらい。やっとたどり着いたのは、歴史あるのどかなリゾートホ...
プロ童貞の足が「渋谷」から遠のいたワケ。行かなくなった街と人気が出た街、どう違う?
 コミックや書籍など数々の表紙デザインを手がけてきた元・装丁デザイナーの山口明さん(65)。多忙な現役時代を経て、56歳...
夫が「子育て」のこと全然わかってない! 妻が心底ゲンナリした無知発言
 男性も育児に関わるようになった時代ですが、まだまだ女性がメインでしている家庭は多い様子。そして夫の一言に「子育てわかっ...