ベッドの上では必ずしも平等でなくていい
“セックス”というコミュニケーションのいいところ。それは、人との距離が一気にぐっと近づくことです。身体を合わせ、普段は誰にも見せない部分を見せ合い、快感を分け与えあうという、ふたりだけの共通の体験を通して、もう一段親しい関係に発展することが出来る。
今回、登場いただくのは、M性感で働いているリリーさん(21歳、東京都在住、https://twitter.com/Lily_nakaiki )です。
「M性感で働いているんですけど、責めるのも、責められるのも、両方好きなんです。ひたすら受けとってもらう愛、ひたすら責めてもらう愛もあるって思っています」
これまで、男性が能動的、女性は受動的であることが多かったセックス。しかし近頃では、ともに主体的にあることがよしとされ、女性も積極的に男性を「愛していこう」という風潮があります。けれど、リリーさんはベッドの上では必ずしも、平等に能動的でなくともいいと考えていると言います。
「16歳の時の初体験では、自分が受け身で居続けることはおかしいって思っていたんです。一方的に男性の責めを受けとるだけじゃ、愛し合うことができていない。平等にお互い責め・受けをすることで、セックスで愛し合うことができると思っていました」
心とカラダをゼロの距離に…「密接距離侵入欲求」
その心境が変わったのは、処女喪失から一年後。中イキが未経験なことに悩みはじめたリリーさんを、当時のパートナーがある日、二時間ほどかけて、じっくりと開発をしてくれた時のこと。
「開発されている最中、受け身で居続けたのに、おかしいって思わなかったんです。『なんでだろう』って考えた時に、そこに目的があったり、思いやりがあると、受け手だってとても楽しいし気持ちいいものなんだ、と思ったんです」
“中イキ”という目的を叶えてくれようとするパートナーに愛を感じ、以来は行為自体が平等でなくても、いいと思えるようになったという。そんなリリーさんの具体的な性癖は三つ。「生え際フェチ」「密接距離侵入欲求」「自己実現欲求」。どれも聞き慣れない言葉ですが……。
「『生え際フェチ』っていうのは、髪を鷲掴みにしたい願望です。鷲掴みして首を絞めたり、鷲掴みしてベッドになげたり、プレイ中、永遠に鷲掴んでいたいです」
その「生え際フェチ」を満足させるべく、ある時、男性の髪をぐっと鷲掴みしたときに目覚めたのが、二つ目の性癖である「密接距離侵入欲求」。リリーさんいわく「密接距離」とは、パーソナルスペースの一番近い距離。つまりキスできるゼロの距離のこと。相手に侵入し、もしくは侵入され続けて、心とカラダをゼロの距離にすること。
「心と距離がゼロの状態……タブーをタブーと思わない、むしろそれほどの罪深い関係性が好きなんです。これは責め手も受け手も同じく。それで、前例のない責めを発明し、実現して『世界中でこんなにおかしいことをしてるのは、私たちしかないのにめちゃくちゃ興奮してるって面白いよね』と笑いたいんです。これが『自己実現欲求』です」
「自己実現欲求」の具体的な例を尋ねてみると「歌責め」という予想外の返答が。歌責めとはいったい、どんなプレイなのでしょうか。
「女性アーティストがダンサーにやらしくボディタッチしながら歌うエロいステージってみたことありますか? ああいう感じを想像してください。ほぼ吐息のような歌い方で、相手にどんどん近づいていって、最後、ゼロ距離になった相手の耳元で囁くんです。もともと、私は音で興奮した経験が、何度もあって。それにプラス、ライブを観に行った時に、純粋にすごい歌唱力にカラダが痺れたことを、プレイに生かせないかと考えました」
まさに誰もしていないオリジナルのプレイ。けれども、このプレイで、責め手側のリリーさんはどこに感じるのでしょうか。
「歌いながら『密接距離』になること。そして、相手に誰もしていないような行為で『自己実現』すること。このふたつが、わたしがこのプレイから得ることが出来る快感ですね」
◇ ◇ ◇
「いつか誰かとした」「どこかで見た」をプレイくりかえすのではなく、ふたりでしか出来ないオリジナルなプレイを試すことが出来れば、それは特別なものとして輝き、そして、忘れられない経験となる。常識にとらわれずに、心と体が気持ちいいと思える行為をふたりで発明していくこと。セックスライフを充実させるヒントがここにあります。
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