「国際女性デー」日経広告の炎上と今こそ女性に伝えたいこと

ミクニシオリ フリーライター
更新日:2023-03-14 06:00
投稿日:2023-03-14 06:00

SNSには広告を批判するような投稿が…

 ところが、この広告には出稿主が考えていたであろう意図とは全く違った反応が寄せられ、リプライ欄・引用欄も、広告を批判するような内容が多く寄せられました。

《女性を頭が良すぎと評価する社会を変えようというのが、国際女性デーの本来の文脈であるはず》

《なぜ、私たちが変わらないといけないの?変わるべきなのは、男と社会でしょ》

《私たちもう十分、がんばっています》

《胸の谷間を見せて強調するポーズ、必要ある?》

《女性に努力を強いる御社の姿勢が浮き彫り》

 その一方で、男性とみられるアカウントからは《触らぬフェミに祟りなし》などと、ジェンダー関係の発信をするアカウント全体を揶揄するような内容もありました。

日本のジェンダー指数と、国際女性デーとの関わり

 国際女性デーは、世界的に女性の経済的地位や政治的地位、そして社会的地位においてジェンダー平等を尊重する日として設定された記念日です。20世紀初頭、二ューヨークの女性労働者たちにより、賃上げや労働条件の改善、選挙権の獲得などを求めた大規模なストライキがありました。その後世界中に広まり、ヨーロッパの国々でも国際女性デーが設けられ、1975年には国連が3月8日を国際女性デーと制定。毎年女性に関する重要課題を取り上げることとなりました。

日本は146カ国中116位

 世界的にみて日本のジェンダー観はかなり遅れを取っていること自体は事実です。実際、世界経済フォーラムが発表した2022年のジェンダー・ギャップ指数の日本の総合順位は、146カ国中116位。前回は156カ国中120位と、先進国の中で低い数値となっているのは、もはや誰もが知る事実ではないでしょうか。

 日本ももちろん、世界に引けを取るまいとジェンダーギャップの改善に努力した過去がないわけではありません。しかし国内で大々的に「国際女性デー」が認知されるようになったのは最近ですし、ジェンダー論全体に対する“解像度”も世界と同水準かと言われると、そうではない部分もあるでしょう。今回の広告も、世界水準の国際女性デーの意図を汲み取れていない部分があったのかもしれません。

感想はそれぞれ あなたはどう感じますか

 しかし、広告を見た時に持つ感情は人それぞれ。嫌悪を持った人もいたけれど、全員がそうだとは限りません。広告発信そのものを見て個人がどんな感想を持つかは自由です。他人の感想にその自由を脅かされるべきではない、とも思います。

 ですが、国民性として同調主義のあるこの国で「私は私だ」と言い切ることは、男女関わらずまだ難しい部分もあるでしょう。広告に嫌悪を感じたリプライとしてツリーになっていくと、バイアスが入って「確かに言われてみると、この広告は的を射ていないかも」と思いそうになります。

 Awichは、紙面に掲載される前に日本経済新聞社が現地ニューヨークで開催したシンポジウムでパフォーマンスをしています。沖縄出身で、現在シングルマザーでもある彼女がシンポジウムで発信した内容は、広告コピーとして掲載された内容とは少し違う印象を受けます。

 ヒップホップアーティストとして紹介された彼女は「私は強い。自分の弱さを見てきたから」と語ります。 ポエトリーリーディングのようなパフォーマンスは、彼女のこれまでの人生と苦悩、そして意思を感じる、力強い発信です。胸元の開いたミモザカラーのドレスも、彼女自身の発信を通してみると違和感なく、衣装は彼女を表現する一部であることが伝わります。

他人の意見に脅かされる必要はない

 発信が「広告」になった途端炎上するのは、フェミニズムに限ったことではありません。SNSの性質上、意見の違う人たちがリプライ欄に集まり、燃え上がることも仕方ないかもしれません。

 ですが、国際女性デーの本質を考えても、私たちはそういった「他人の感想」「他人の評価」に自分の意見を脅かされる必要はないのです。もちろん、思ったことを発信して、自分と意見の違う人に立ち向かえということでもありません。

 だからこそ、皆さんそれぞれに考えて欲しいとも思いました。女性一人ひとりが、自身の感想、自身の感性を大事にできる社会が、今後少しでも広がっていけばいいなと思います。

ミクニシオリ
記事一覧
フリーライター
フリーランスの取材ライター・コラムニスト。ファッション誌や週刊誌、WEBSITEメディアなどで幅広く活動。女性向けのインタビュー取材や、等身大なコラム執筆を積極的に行う。いくつになってもキュンとしたい、恋愛ドラマと恋バナ大好き人間。
XInstagram

ライフスタイル 新着一覧


卑しい街を男が独り行く時代は終わったね 2023.6.26(月)
 卑しい街を男が独り行く時代は終わったね。 「夜は短し歩けよ乙女」の主人公のように、どこかで李白老人に会えるかも。...
「俺んとこ、こないか」“たまたま”のクールな流し目にキュン
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
誰だって一つくらいありますよね? 大人の「好き嫌い」その原因と克服法
 大人になると、不思議と子供の頃苦手だったはずの食べ物が「おいしい」と感じることがあります。逆に「やっぱり苦手」と感じる...
職場ランチは仕事の延長ですか? 疲れる理由と苦痛から上手に逃げる方法
 職場は仕事をする場所ではあるものの、仕事だけしていればOKなわけではありません。職場の人とのコミュニケーションは避けて...
子宮頸がんの術後、初めてのセックス。痛すぎる、全然気持ちよくない!
 子宮と卵巣を失い、人工的に閉経。命が助かっただけでももうけもの、セックスは諦めなきゃいけないの?  42歳未婚で...
2023-06-24 06:00 ライフスタイル
LINEのグループ名どうしてる? センス抜群で真似っこしたい女子会用3選
 女同士で集まる女子会。たわいもない話で盛り上がる時間は本当に楽しいですよね! 女子会と一言でいっても、皆さん実にいろい...
若いうちにしかできないことってたぶんある 2023.6.24(土)
 北海道で暮らす、まん丸で真っ白な小さな鳥「シマエナガちゃん」。動物写真家の小原玲さんが撮影した可愛くて凛々しいシマエナ...
お酒は好き! だけどね…飲み過ぎで記憶なくした次の日にすべきこと
 お酒が好きな人は、ついつい飲み過ぎてしまう人も多いでしょう。中には次の日、「記憶がない」なんて経験をしている人はいませ...
神々の前で人は何を想うのだろう 2023.6.23(金)
 この夕陽を浴び、神々の前で人は何を想うのだろう。  自分と家族が健康な毎日を送ること。世界が平和と共存に向かうこ...
人間は“ド忘れリピート”が前提かも? シゴデキ女子たちの仕事観3.0
 みなさんは仕事で一回したミス、もう一度したことありますか? 私は何回もあります。そして忘れてしまうこともよくあります。...
冷え性つらいし試してみる?カフェイン断ちメリット5つ&成功させる方法
 朝起きたらコーヒーを淹れることがルーティンになっていたり、仕事中にコーヒーブレイクするも多いでしょう。眠たい時や疲れた...
身体のSOS見逃さないで!「鉄分不足」で生じる不調サイン5つと改善策
 毎日忙しく過ごしていると、ついつい自分の身体のサインを見逃しがち。「これくらい大丈夫」と高を括っている人も多いでしょう...
モテ男協議に「異議あり!」白ソックス“たまたま”が立候補するの巻
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
キンプリ見分けムリ! 40女の老化あるある2023.6.22(木)
 45歳です。もうじき46歳になります。誰ですか「40にして迷わず」なんて言った人は。40代も後半になってもなお、迷走し...
ジムのあちこちで出没する迷惑おじさん! イラッと回避の対処法は?
 夏、目前! 健康維持やダイエットのために、スポーツジムに通う人が増えるシーズンですね。思い切り身体を動かすと、リフレッ...
マジで嬉しい観葉植物ブーム!「バイオフィリア」から学ぶ新しい生活
 猫店長「さぶ」率いる我が愛すべき花屋のわりとご近所に大型ショッピングモールが出現し、何かと相談にのってくれる花屋の男友...