更新日:2023-03-28 06:00
投稿日:2023-03-28 06:00

女性の「ぽっちゃり」を歓迎する優しい世界

 いつの時代も、女性は今より痩せたいと願っている。少なくとも私は、男性からの「スリム」は褒め言葉だが、「ぽっちゃり」は、よっぽど無邪気か、喧嘩を売られているのかと受け止めてきた。

 体質的な例外もあるが、たいていの人間は、欲望のままに食べれば太り、今の体形をキープするためには、ある程度の努力が必要だ。自分を律することができていないという点で「ぽっちゃり」は恥ずかしいことであり、スリムであればあるほど、美意識が高い。私は長年、そう信じて生きてきた。

 ところが、ぽっちゃりを寿(ことほ)ぐ優しい世界が、あったのである。

「ムチムチしてきたね」
「お尻が丸くなったね」
「もっと太ったほうがいいよ」

 ストリップの世界では、男性であるお客が女性の踊り子に対し、面と向かって体形について感想を述べたり、変化を指摘したりする。

 一般社会ならセクハラで訴えられるだろうが、ストリップ劇場においては「最近営業がんばってるね」「今日のプレゼン良かったよ」といった評価に値するだろう。

ぽっちゃり体形は営業努力のひとつ

 少なくとも私は「自分の太鼓腹を棚に上げやがって」と怒るより、素直にそう受け止めたほうが、建設的だと思うのだ。実際、そういった言葉と比例して、成績=人気は上昇し、次の仕事が舞い込んでくる。つまりぽっちゃりすることは、仕事に対する努力として間違っていないのだ。

 我慢せずに食べ、ほどよく運動、つまり踊るだけでいいのだから、こんなに簡単でわかりやすいことはない。もちろん、やせ型が好きな人もいるが、基本的に男性は、女性が理想とするスリムな体形を「痩せすぎ」と感じている。ステージで3年間、お客から言われたことを元に、私はそう結論付けた。

ステージ写真の選び方ひとつとっても…

 それはステージ写真を見ても、明らかだ。同じ衣装、同じ踊り、同じ照明で撮影しても、カメラマンによって全く違った印象の写真が出来上がる。その中からベストショットを数枚選んでもらうと、カメラマン自身の性差がはっきりと出るのだ。

 丸く膨らんだお腹、衣装が食い込んで段になった腰、ぎゅっと潰れて太もものように見える二の腕、横に張って画面いっぱいのお尻……。男性カメラマンは、多くの女性が隠したいと思う部分がより強調されたものを選びがちである。

 何百枚も撮ってこれかよ! と一瞬頭に血が上るが、彼らが良くない写真を選ぶメリットは何もないので、本気でそれがいいと感じるのだろう。

新井見枝香
記事一覧
元書店員・エッセイスト・踊り子
1980年、東京都生まれ。書店員として文芸書の魅力を伝えるイベントを積極的に行い、芥川賞・直木賞と同日に発表される、一人選考の「新井賞」は読書家たちの注目の的に。著書に「本屋の新井」、「この世界は思ってたほどうまくいかないみたいだ」、「胃が合うふたり」(千早茜と共著)ほか。23年1月発売の新著「きれいな言葉より素直な叫び」は性の屈託が詰まった一冊。

XInstagram

関連キーワード

ビューティー 新着一覧


今さらですが「ボトックス注射」って何。目尻、眉間のシワを一撃!?【目元の美容医療に定評ある女医が解説】
 イートップクリニック院長の増田えりかと申します。この連載では美容医療“若葉マーク”の方々に向けて、テッパンの不安や疑問...
えっ、麻酔は? 40女が「大手美容クリニック」でヒアルロン酸をぶち込んで驚いたこと
 今年3月、ほうれい線治療のためにヒアルロン酸を入れてきました。ヒアルロン酸の持続期間は1年から1年半。注入前よりほうれ...
タイパ抜群! 忙しい40代こそ実践したい「ながら美容」5選
 肌の乾燥、たるみ、シミ、シワ、ボディラインの崩れ…。30代までは何もケアをしなくても保てた美しさが、40代になると一気...
求心顔って何?老けてみえる? 3つのメイクテクで遠心顔っぽくごまかす
 最近よく聞く「求心顔」と「遠心顔」。「私は求心顔らしいけど、イマイチどういう意味なのかわかってない」「求心顔は老けて見...
辛口だなぁ…。20代男性に聞く「一緒に仕事をしたくない40代のリップメイク」完全再現&改善方法
 ビジネスシーンにおいて、リップメイクは印象を大きく左右する要素の一つです。40代女性の無意識メイクが、20代男性に「一...
美容医療で人気の「ハイフ」丸わかり!【気鋭の敏腕女医解説】どこまで変われる?痛くないの?
 はじめまして! イートップクリニック院長の増田えりかと申します。突然ですが、美容医療にどんなイメージをお持ちですか? ...
一重まぶたさんのメイクのお悩みに…個性を生かして可愛く盛るコツ4つ
 切れ長でシャープな印象を与える一重の女性。ミステリアスで魅力的ですが「メイクすると腫れぼったい印象になってしまう」と悩...
夏の暑さに負けない体を作ろう! お家でできるおすすめ有酸素運動4選
 猛暑日が続く夏に、屋外でのウォーキングやジョギングは危険な場合があります。特に女性は、紫外線も気になって運動不足になり...
髪の毛パサ子で10歳も老けて見られた!“シャンコン&ドライヤー”基本のお手入れに3つの+α【薬剤師監修】
 彼女の名は、えりの。女性の心を癒すためにはじめたサロン「コクハク」のオーナーで、界隈では「えりのボス」の愛称で知られ、...
「鏡を見てもやる気出ない…」自分磨きのモチベをアップさせる対処法5つ
「アラフォーにもなって見た目を磨いたところで、何になるんだろう…?」「自分が思っている以上に周りは自分に興味がないはずな...
40代でも胸は大きくなる? 垂れるのはまだ嫌!アラフォー世代向け「美胸キープ術」【薬剤師監修】
 彼女の名は、えりの。女性の心を癒すためにはじめたサロン「コクハク」のオーナーで、界隈では「えりのボス」の愛称で知られ、...
40代でもチュールコーデを楽しむ!“赤ちゃんおばさんみたい”って…残念エピ&オバ見え回避術
 おしゃれ好きには市民権を得た感のあるチュール素材ですが、40代女性としては「甘すぎるコーデになりそう」「オバ見えしない...
ピルは避妊薬だけではない。まだまだ誤解ばかりのピルの効能と「ホルモンバランスの乱れ」
 彼女の名は、えりの。女性の心を癒すためにはじめたサロン「コクハク」のオーナーで、界隈では「えりのボス」の愛称で知られ、...
顔の輪郭たるたる、ぼや~ん。アラフォーから始めるシェーディングのコツ&失敗例
 アラフォーになってから痛感する肌悩みが、たるみで輪郭がぼやけて見える問題です。そこで大事になるのが「シェーディング」。...
40代美容家愛用“パサつき髪撃退”ヘアケア3選 夏のお疲れ顔に投入中!
 猛暑にウンザリしつつも、仕事や家事、子育てに介護に…と何かと忙しい毎日を送っているみなさん! ふと鏡を見た瞬間に「なん...