女の執念が招いた驚愕の結末
――まさか、同じ会社の……Xさんにフラれた女性が依頼人だったとは驚きです。
「私もです。事情を知ってしばらく呆然としました。マッチングアプリから始まり、尾行、デート、そしてセックス動画にザーメンを手にするまで、かなりの金額を払っているはずです。愛情というよりも執念を感じました」
――その後、Xさんとはどうなりました?
「まずはA社長に、依頼人にデータを渡したことを伝えると、『T子さんの任務はここまでだ。あとは別の者にバトンタッチする』と任務終了を告げられました。ひとつの案件を数人でやるのがA社長のやり方なんですね。
私の前後に、どんな調査員や工作員がどのように関わったかはいっさい教えてくれません。Xさんとも、もう二度と会うことはないと思います」
惚れた弱み? 今日も新たなミッションに
――セックスまでしたXさんに、情はうつりませんか?
「それが全くありません。女は一度セックスしたら相手を好きになるって言われがちですが、ソープ嬢をしていた私からすると、『一丁上がり』という感じです。事実、翌日から別な案件の尾行が始まりましたし、今日もこのあと、張り込みの仕事があります。
今はA社長にもっと認められたい、A社長の力になりたいという気持ちのほうが強いですね。もちろん、惚れた弱みもありますから(笑)。
時間はかかるかもしれませんが、いつかA社長を振り向かせてやると意気込んでいるんです。
そうそう、今度は男性工作員とペアを組んで、対象者の人妻とセックスさせる仕込みをするんですよ。依頼人は、離婚して子供の親権を取られた夫なんです。元妻と工作員の男性をセックスさせて、『育児放棄』の場面を盗撮するんです。セックスするのは男性工作員ですが、面白い話になったらお知らせしますね」
実にあっけらかんとした感じで、T子さんはその場を去っていった。
◇ ◇ ◇
今回、T子さんが依頼されたのは「壊し屋」の依頼ではなかったが、世の中には恐ろしい依頼が多々あるのだと思い知らされた。
それにしても、自分をフッた男性のセックス動画とザーメンを入手した女性は、どんな思いで動画を見るのだろう。いや、ザーメンをどうするのか――。
あまりにも重い内容だが、あっけらかんと取材に応じるT子さんの明るい笑顔が、筆者にはせめてもの救いだった。
(了)
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