夫や彼のDVからサヨナラを! 逃げない女性が多いのはなぜ?

内藤みか 作家
更新日:2019-06-06 06:00
投稿日:2019-06-06 06:00
 配偶者や恋人からのDVに悩む人は少なくありません。内閣府がまとめた平成29年度の1年間のDVの相談件数は全国で約10.6万件。東京都だけで約1.4万人もが被害を訴えています。けれど不思議なことに、痛い思いをし続けてもなお、交際を続ける人がとても多いのです。

「私は悪くない」という正義感

 ドキュメンタリー映画の巨匠・フレデリック・ワイズマン監督が製作した「DV」そして続編の「DV2」という作品があります。DVの現場は多くが密室ゆえになかなか映像で捉えることが難しいのですが、ここにはフロリダ州でのDV事件の現場や、女性シェルターや、裁判所で言い争う男女の姿などが合計約6時間に渡って収められています。生々しい傷を負った女性の姿があちこちで映しだされるので、緊迫感はかなりのもの。

 DVの恐ろしいところは、被害者が加害者と同居しているという点です。首を絞められ、ナイフで刺され、命の危険すら感じるような状況なのに、彼女たちはなぜすぐに逃げ出さないのでしょう。裁判所が接近禁止令を出しても、それを守らず再び同居を始めるカップルが何組もいました。彼女らの言い分は「私は悪くないのに、どうして家を出なくちゃならないの?」なのです。

「私ばかり不公平」という怒り

 とはいえ、なかにはDV男性から逃げだせた女性の姿もありました。しかし、引っ越して、仕事も変えてやっと再スタートを切れたと思った矢先に、彼に見つかってしまいました。相談員に「再び逃げるしかない」と伝えられ、彼女は泣きだします。「私は何も悪いことをしていないのに、どうして私ばかりこんな目に遭わなくちゃならないの? 不公平よ」と……。

 言い分はもっともです。暴力を振るう同居者から逃げるということは、今まで築いてきた暮らしを失うことを意味するので、かなりの抵抗を感じるのでしょう。これはいじめられた生徒の言い分と全く同じです。「私は悪いことをしていない。悪いのはいじめた生徒なのだから、私は転校しない」と頑張ってしまう子どもがいます。強い正義感がある人は「逃げずに立ち向かう」ことを選んでしまいがちですが、それは危険と隣り合わせ。命や魂を守るために、まともに扱われていない場からは、早く立ち去るべきなのです。

「彼は私がいなくちゃダメ」という思い込み

 加害男性から離れたくない女性たちの言い分は「彼は本当は優しい人なんです」というもの。たまたまストレスがたまって暴力を振るってしまっただけ、彼は普段はいい人だから、と言うのです。けれどDVにはサイクルがあり、男性は暴力を振るった後は大抵とても優しくなるものなのです。女性はそれを見て「これが本当の彼なのだ」と誤解してしまいがちですが、しばらくするとまた暴力を振るう時期が到来する。その繰り返しです。

 また、同居している場合、生活費を2人で出し合っていることも多いので「自分が去ったら彼は家賃が払えなくなる」などと心配する女性も少なくありません。そうなったら彼も他のところに引っ越せばいいだけなのなのに「私が料理をしないと彼はろくなもの食べないし」などと自分の必要性を主張し「彼は私がいなくちゃダメ」と、彼と暮らし続けてしまうのは、問題です。「私がいなければダメ」なのではなく、「暴力をふるっているからすでにダメ」だという現実にしっかり目を向けたほうがいいのかもしれません。

「逃げるが勝ち」彼に見切りをつける時

 いじめられながらも「自分は悪くない」と歯を食いしばって登校し続けると、ストレスで心身の調子を崩すことがあります。それと同じで「私は殴られるようなことはしていない」と意地を張り続けると、そのストレスは溜まっていきます。そんな時は「逃げるが勝ち」という言葉を思い出し、まずは暴力のない平和な世界に移動することを最優先にするべきです。

 ネットで検索すれば、無料で電話相談できるところがいくつも見つけられるはず。DVに悩む女性のためのシェルターもあちこちにあります。まずは危険な状況から離れないと、落ち着いて物事を考えることもできません。映画では「なぜ(加害者と被害者とが)会うのを禁止したのにまだ会っているのですか」と裁判官が呆れるケースもありました。暴行をふるう男性が、本当にその女性を愛していると言えるでしょうか。自分を痛い目に遭わせるような男性になぜ固執しているのか、一度彼から離れてよく考えてみる必要があるはずです。

内藤みか
記事一覧
作家
著書80冊以上。大学時代に作家デビューし、一貫して年下男性との恋愛小説を書き綴る。ケータイ小説でも話題に。近年は電子媒体を中心に活動。著書に「あなたに抱かれたいだけなのに」など。イケメン評論家として、ホストや出張ホストなどにも詳しい。
XInstagram

関連キーワード

ラブ 新着一覧


LINEに隠された彼の本心は? 文章から分かる男性心理5つ
 男性の知り合いや友達とLINEのやりとりをしていると、「ん? これってどういう意味だろう?」と、相手の本心が気になるこ...
恋バナ調査隊 2021-10-10 06:00 ラブ
一緒に暮らしているのに“ホウレンソウ”を怠る彼に募る苛立ち
 男女の関係では、交際相手や配偶者の態度に悩む人も少なくありません。愛し合っている男女間でも、価値観や物事の判断には個人...
並木まき 2021-10-09 06:00 ラブ
最低限のマナーなのに…謝罪も感謝も言えない恋人に呆れる彼
「冷酷と激情のあいだvol.59〜女性編〜」では、恋人からの“ホウレンソウ”が不十分であることに、怒りを抱き続ける女性・...
並木まき 2021-10-10 05:34 ラブ
「もう、うんざりだ」夫から離婚を告げられる妻の6つの行動
 男女問題研究家の山崎世美子(せみこ)です。離婚を切り出すのは女性からというイメージはもはやありません。ここ最近目立つの...
山崎世美子 2021-10-09 06:00 ラブ
シンデレラに学ぶ恋愛に効果的な心理学♡ 終電で帰るべき理由
 誰もが知っている「シンデレラ」の話。ガラスの靴を持って探しに来た王子様と結ばれるというファンタジーに、ときめいた女性も...
恋バナ調査隊 2021-10-08 06:00 ラブ
カップルの同棲はデメリットが多い?幸せに暮らすためのコツ
 カップルの同棲は、「家賃の負担が減る」「結婚前のシミュレーションができる」などのメリットがある一方、きちんとルールを決...
恋バナ調査隊 2021-10-08 06:00 ラブ
口下手彼氏の気持ちを探るポイント5つ&上手な付き合い方
 好きな男性から、言葉で愛情を表現されると安心する女性は多いでしょう。でも、男性の中には、言葉にしなくてもちゃんと愛情を...
恋バナ調査隊 2021-10-07 06:00 ラブ
浮気された過去から彼を疑ってしまう…不安を消す3つの方法
 過去に浮気されたことのある女性は、「信じていたのに裏切られた」というトラウマから、恋人をどうしても疑ってしまうと苦しん...
恋バナ調査隊 2021-10-07 06:13 ラブ
おひとり様の期間が長すぎて…どんな人を恋人にすればいい?
 一人でいる時間が長くなれば長くなるほど、次の恋愛へのフットワークが重くなりがちですよね。最近はアプリなどで異性に出会え...
若林杏樹 2021-10-06 06:00 ラブ
“恋愛したい”と言う男性の心理って? 本音を見極めるポイント
 男友達から「恋愛したい」と言われると、ドキッとしてしまいますよね。「もしかして、これって告白?」なんて、舞い上がってし...
恋バナ調査隊 2021-10-06 06:00 ラブ
倦怠期かもしれない…5つのチェックポイント&乗り越え方
 交際期間が長くなると、どんなカップルにも訪れるのが「倦怠期」。もちろん、倦怠期知らずのカップルもいますが、ごく稀しょう...
恋バナ調査隊 2021-10-05 06:00 ラブ
“リアル離婚弁護士”が説く「結婚したら地獄な男性」特徴8つ
「何歳からでも夫婦になるのは遅くない」とお伝えする本連載。今回は番外編です。のべ3000人以上の離婚案件の相談に乗ってい...
内埜さくら 2021-10-05 13:29 ラブ
彼氏の浮気を許すor許さない? 判断ポイント&許す時の心構え
 彼氏に浮気されたら誰だって悲しいものですが、その後の対応は人によって異なります。あっさりと別れを選ぶ人もいますが、愛情...
恋バナ調査隊 2021-10-04 06:00 ラブ
元彼がしつこい…秘められた4つの男性心理&上手な対処方法
 どんなにラブラブだったカップルも、思いがけないことが原因で別れてしまうことがあります。お互いに納得して別れていれば良い...
恋バナ調査隊 2021-10-03 06:00 ラブ
いくつ当てはまる? 外見&性格でわかる魔性の女度診断8選♡
「魔性の女」とは、独自の魅力で男性を翻弄する女性のこと。男性からモテる性質を持つ魔性の女に、憧れたことがある女性も多いで...
恋バナ調査隊 2021-10-03 06:00 ラブ
彼氏の二股が発覚…“最後の火遊び”と許そうとする女性の本心
 男女の関係では、交際相手や配偶者の態度に悩む人も少なくありません。愛し合っている男女間でも、価値観や物事の判断には個人...
並木まき 2021-10-02 06:00 ラブ