スズ子と愛助の無償の愛、平和ボケの今とは違って生きるも愛するも命がけ

桧山珠美 TVコラムニスト
更新日:2023-12-28 14:10
投稿日:2023-12-28 14:10

NHK朝ドラ「ブギウギ」~第13週「今がいっちゃん幸せや」#64

 東京に戻ったスズ子(趣里)は、空襲で一面ががれきになっている惨状を目の当たりにする。

 スズ子が三鷹の家に戻ると、幸いなことに家の付近は空襲はなく、愛助(水上恒司)とも無事再会する。

 坂口(黒田有)からは、トミ(小雪)も無事だと聞くが、東京や大阪の多くの知り合いの安否はわからないままだった。

 空襲警報が当たり前の日常となる中、スズ子は慰問で地方に行き、愛助と離れることを不安に思うようになっていた。

【本日のツボ】

「福来スズ子の歌は生きるの糧。生きる希望になるんやから」(愛助)

 ※※以下、ネタバレあります※※

 あの瓦礫は東京駅だったのでしょうか。そういえば赤レンガも映っていたような…。だとすれば、駅が壊滅状態で京都からの汽車はいったいどこに着いたか、と疑問が生じますが、三鷹の家も愛助も無事でひとまず安心いたしました。

 庭にいる愛助を見つけ、飛びついて抱きつき、「良かったあ、生きてたあ」と叫ぶスズ子。対照的にのんきな顔の愛助。ふたりの温度差に笑ってしまいました。

 マネージャーの山下(近藤芳正)が富山での慰問の仕事を持ってきても、「断ってください。ワテどこにもいきとうない」と断ります。

 そして、愛助に「あんたと一緒におりたい、はなればなれはもういやや」と。

 平和ボケした今とは違い、生きることも愛することも命がけ、いつどうなるかわからない中で、愛する人と片時も離れたくないというスズ子の気持ちが痛いほど伝わります。

互いに相手を一番に想い合うスズ子と愛助

 ほどなく空襲警報が鳴り、スズ子と愛助、小夜(富田望生)は防空壕へ。泣き出した赤ちゃんのために、「アイヤ可愛や」を歌うスズ子。

 その歌声で殺伐とした防空壕の中には笑顔が溢れ…。その様子を目の当たりにした愛助は、「スズ子さんの歌には力がある。ぼくはな、こんなときやからこそスズ子さんに歌って欲しい」とスズ子の背中を押し、スズ子も再び慰問に行く決意を固めます。

 スズ子と愛助の互いに相手を一番に想い、自分よりも相手を優先する心、自分のすべてを惜しみなく与え、見返りは求めない。ピュアなふたりにほんとうの愛とは、を教えていただいた気がします。

年末年始もブギウギ

 28日をもって年内の放送は終了。明日(29日)は総集編が放送されるということで、これまでのおさらいをするには格好のチャンスです。

 さらに大晦日31日。NHK紅白歌合戦で「ブギウギ」コーナーがあるかどうか注目したいところです。

 新年の放送は1月4日から。それまで「ブギウギ」公式Xなどで、「ラッパと娘」ほかスズ子の名曲フルバージョンを楽しみながら待つとしましょう。

 良いお年を。

桧山珠美
記事一覧
TVコラムニスト
大阪府大阪市生まれ。出版社、編集プロダクションを経て、フリーライターに。現在はTVコラムニストとして、ラジオ・テレビを中心としたコラムを執筆。読売新聞「アンテナ」、放送批評誌「GALAC」、日刊ゲンダイ「あれもこれも言わせて」などで連載中。

関連キーワード

エンタメ 新着一覧


【写真特集】懐かしい!16年前の渡辺梓さん
  【この写真の本文に戻る⇒】「じゅん散歩」のロケに突然、朝ドラ女優が登場! しかも黒髪から“ファンキーヘア”になって...
「じゅん散歩」のロケに突然、朝ドラ女優が登場! しかも黒髪から“ファンキーヘア”になっていた
 リモートワークの日は、羽鳥さんのモーニングショーからそのまま「じゅん散歩」(月〜金曜9時55分、テレビ朝日系)を見るの...
「クソばばあ」に「クソ小僧」、涼子のリアクションにも注目
 寅子(伊藤沙莉)は、戦争によって航一(岡田将生)が背負った苦しみに寄り添いたいと思う。  一方、寅子から「よりど...
桧山珠美 2024-08-08 16:37 エンタメ
早くも“NHK御用達俳優”の片鱗が?「虎に翼」出演の岡部ひろきはそんじょそこらの2世俳優とは違う
 1日放送「ダウンタウンDX」(日本テレビ系・読売テレビ制作)に故・西城秀樹さんの息子・木本慎之介(20)が出ていました...
なぜ令和ロマンは賞レースに出続ける?3冠制しヘイトも無視する戦闘力
 芸歴10年以下のお笑い賞レース「ABCお笑いグランプリ」(テレビ朝日系/以下ABC)が7月7日に開催。M-1に続き、令...
帽子田 2024-08-03 06:00 エンタメ
航一の秘密、明かされる。久々の回想シーンでも発揮した直道の顔芸パワー
 判決後、涼子(桜井ユキ)の店で寅子(伊藤沙莉)らと杉田(高橋克実)たちは偶然顔を合わせる。  戦争で娘と孫を亡く...
桧山珠美 2024-08-02 16:00 エンタメ
【写真特集】ワンピース姿を披露する、珍しく清楚なあやまん監督
【この写真の本文に戻る⇒】 【独自レポ】あやまんJAPANは健在だった! Tバックにぽいぽいコール、コンプラ無視の危ない...
優未の言葉「困っている子を助けるのは普通」に教えられた真っ当なコト
 寅子(伊藤沙莉)と航一(岡田将生)は、涼子(桜井ユキ)の店がたびたび嫌がらせを受けていたことを知る。警察に相手にされず...
桧山珠美 2024-07-31 16:30 エンタメ
赤いミサンガの女・美佐江、来た~!“放置エピソード”の回収がお見事
 寅子(伊藤沙莉)と優未(竹澤咲子)の姿を見ていきなり号泣した杉田(高橋克実)。実は杉田は昭和20年の長岡空襲で娘と孫を...
桧山珠美 2024-07-29 16:45 エンタメ
目黒、ニノを“沼落ち”続出の松村北斗「西園寺さん」が猛追!視聴率やTVerではない意外なデータが急上昇
 7月も後半に入り、2024年夏期主要ドラマの初回がほぼ出揃った。その中でも特に、STARTO ENTERTAINMEN...
こじらぶ 2024-07-27 06:00 エンタメ
「ごめんなさい」を連呼する航一。“戦時中の何か”は来週判明する?
 玉(羽瀬川なぎ)の将来を奪ったのは自分だと、涼子(桜井ユキ)も悩んでいた。寅子(伊藤沙莉)は2人の決断を応援するため、...
桧山珠美 2024-07-29 15:49 エンタメ
涼子さまの消息も明らかに…「ヒロインじゃない面々」のその後を描く意味
 寅子(伊藤沙莉)は「学校に友達はいない」という優未(竹澤咲子)の発言が気にかかる。  出勤すると、杉田(高橋克実...
桧山珠美 2024-07-23 15:45 エンタメ
夏ドラマ何見てる?『新宿野戦病院』『ブラックペアン2』への本音を調査
 2024年7月スタートの夏ドラマが出揃ってきましたね。今期もたくさんのドラマが放送していて、どれを見ればいいのかわから...
“カウンセラー”星航一(岡田将生)、ちぐはぐぶりがチャーミングだった件
 父親の話が聞きたいと言う優未(竹澤咲子)に、寅子(伊藤沙莉)は優三(仲野太賀)の話をすることができない。寅子は航一(岡...
桧山珠美 2024-07-18 15:50 エンタメ
なぜ塚地武雅、藤井隆はドラマ出演が続く? 不人気芸人との決定的な違い
 7月に入り、2024年夏の新ドラマが次々にスタートしています。なかでも話題になっているのが、宮藤官九郎脚本の『新宿野戦...
高橋克実「ショムニ」超えの名演技に注目!歴代朝ドラで舌打ちといえば…
 山の境界線をめぐる現地調停で書記官の高瀬(望月歩)と申立人の森口(俵木藤汰)との間にトラブルが発生。寅子(伊藤沙莉)も...
桧山珠美 2024-07-17 15:30 エンタメ