元TBSアナで画家の伊東楓さん ほぼ手ぶら&すっぴん!? メイクで現れた

コクハク編集部
更新日:2024-10-04 11:02
投稿日:2024-01-19 06:00

TBSアナから画家に転身→“凱旋個展”を開催

 元TBSアナウンサーで、現在は画家として活動する伊東楓さん(30)と待ち合わせたのは寒の入りを迎えた東京・新宿。ドイツの首都ベルリンを拠点とする彼女は3年ぶりの個展開催のため、一時帰国中だ。

 競争率1000倍ともいわれる超難関の在京キー局アナウンサー職に就いたものの5年で退社→単身渡独した伊東さんは、UNIQLOやUGGといった有名企業やブランドとコラボレーションするアーティストに転身を遂げる。

 なんの不自由もなく、とんとん拍子にステップアップしているように見えるが、きらっきら生活は、ほんの上澄みにすぎない。

まさかの(?)超ナチュラルメイクで登場

  ◇  ◇  ◇

「お待たせして申し訳ありません」

 約束した時間ちょうどに姿を見せながら軽く頭を下げた彼女は、左手にスマホだけ握りしめていた。手荷物は以上。バッグはもちろん、手鏡すら持っていない。

 目元に細いアイラインを引き、アイシャドウをうっすらとのせているが、リップは塗っていないかもしれない。「撮影あり」と伝えていたが、超ナチュラルメイクだ。

 新年のお祝いムードをかき消した元旦の能登半島地震。富山県に帰省していた伊東さんは実家で激しい揺れに見舞われ、「両親と祖母、家族みんなで避難所に身を寄せた」と話す。

 幸いにも被害は少なくて済んだというが、東京に戻るとほどなく、以前より付き合いのあった「満寿泉」で知られる桝田酒造に連絡を取り、富山県酒造組合とともに復興ボトルを手がけ、被災した蔵元や地元を盛り上げていく話が早々にまとまる。

「私に何かできることはないか。ただただその一心に尽きます」

仕事納めの日に“突撃営業”

 自他共に認める行動派。今回の3年ぶりの個展は「全額自腹での開催も覚悟の上だった」と明かすが、昨年末に帰国すると“当たって砕けろ”でスポンサーの獲得に動き出す。その1つが協賛企業となったサントリーだった。

「年内の出社最終日に貴重な1時間をいただき、『初めまして』から今回の個展にかける思いと、今後の日本をこうしていきたいといった私なりの思いをお話ししました。すると、仕事納め当日にも関わらず『そんな夢を応援したい』と話を進めてくださって……感謝しかありません」

日テレの西尾由佳理さんに憧れて

 ここで少し時を戻し、前職の話に触れたい。

 日本テレビの西尾由佳理さん(現在はフリー)に憧れ、小学生のころからアナウンサーになりたいと願った伊東さんは立教大学卒業後、TBSで夢を叶えた。

 2016年4月入社の同期アナは日比麻音子さんと山本恵里伽さん。アナウンサー職で女性のみの採用は、同局にとって11年ぶりのことだった。

 入社式の様子を取り上げたスポーツ紙には紺やグレーの無難な色合いのスーツ姿で微笑む2人の隣で、ひとり、淡いピンクのスーツに身を包む伊東さんの姿があった。

入社式のスーツはひとりピンク色

「入社前の研修中から私たち3人の共通認識として『伊東楓の役回り』みたいなものがありました(笑)。

 他の2人は学生時代を演劇部で過ごした文化系。一方の私は小4年からバトミントンのジュニアチームに所属するような根っからの体育会系。男勝りというか、はねっかえりというか、そういうポジションだったんです。

 入社式のスーツは3人それぞれ色の違うスーツにしようと決めたんですが、2人は定番の紺とグレーにするというので、じゃあ、私はピンクかなって……」

ミスコンもアナウンサーも“椅子取りゲーム”

 高校時代には、地元在住の美少女として「富山美少女図鑑」に取り上げられ、上京後のミスキャン「ミス立教コンテスト2013」ではファイナリスト6名に選ばれた。

「6人のうち私だけ補欠要員。欠員が出たので繰り上げ当選だった」と自嘲するように話すが、誰が見ても綺麗な顔立ち。遅かれ早かれ表舞台で脚光を浴びるのは間違いなかった。

 だが、このミスコン出場によって、人前に出ることへの関心は削がれていく。

「コンテストは『どちらがかわいいか』『どちらが優れているか』で優劣をつけられる“椅子取りゲーム”です。もちろん理解はしていましたが、実際にやってわかりました。『表に出るのは向いてないな』って。

 アナウンサーという仕事を選んだら、それこそ毎日職場で椅子取りゲームが続くわけです。『無理、無理!』って、憧れていた気持ちも冷めていきました」

インターンは博報堂へ

 大学3年時のインターンシップ先には広告代理店の博報堂を選んだ。営業や事業を生み出す現場で刺激を受け、就活は広告業界に絞ろうと決めかけた。その矢先、ゼミの先生から投げかけられた質問が心に刺さった。

「『小学生から憧れていたのに、たった一度のミスコンの経験だけで自分はアナウンサーに向いていないと判断するのはもったいないと思わないのか』と聞かれたんです。

 先生の言うことも一理あるし、そもそもテレビ局のアナウンサーは狭き門。受けたとしても合格するとは限りません。だったら一生後悔しないようにと、博報堂の早期選考の日程とぶつからないTBSとフジテレビの採用試験を受けたんです」

「テレビ局、受けてない?」

 博報堂の最終面接では「テレビ局、受けてない?」と質問され、合格通知は届かなかった。「なにもかも見透かされていた」と諦め、最初に内定の出たTBSへ入社する。だが早々に壁にぶち当たった。

「最初から浮いていましたね。企業は社員を型にはめる必要があります。組織を効率的に運用するために、独自のルールやマナー、思考、文化に基づいた行動を取れるように教育するわけです。

 私も『型にはまらなきゃいけない』と頭ではわかっていました。でも、なかなかはまらない。しんどい時期が続きました」

負けず嫌いと責任感、そして愛社精神

 それでも、持ち前の負けず嫌いと責任感で仕事をこなしていった。

「採用していただいたご恩があるので、まずはアナウンサーとして一生懸命やる。愛社精神もめちゃくちゃあったので、与えられた仕事はうまくできないかもしれないけれど、全力で取り組もうと無我夢中でした。

 ただし、『表に出るのに向いてない』という気持ちはごまかせません。30歳になったら事業局か営業職への異動願いを出すつもりでしたし、そのことは採用時から気にかけてくださっていた上司にも話していました」

 もっともらしく語られる「女子アナ30歳定年説」を意識していたわけではないが、いつまでも同じ立場でいられないことは理解していた。

【作品特集】伊東楓さんが制作した色彩豊かな作品はこちらからもご覧いただけます

アナウンサーにも画家にも「旬」がある

「アナウンサーは若さが“武器”になる側面も、確かにあります。それ自体を悲観したことはありません。年齢やキャリア、置かれた立場によって求められる内容が変わってゆくのは、アナウンサーに限った話ではない。

 ほとんどの仕事がそうですし、画家にだって『旬』があります。常に『旬』を意識しているからこそ、その一瞬を大事に生きられるようになると思うんです」

人生の転機となった番組

 転機は入社3年目。中居正広さんがMCを務める番組のアシスタントを任されたことで、気持ちが大きく動き出す。

 ホワイトボートに即興の似顔絵を描くコーナーを担当すると、単なる“絵ゴコロのあるアナウンサー”ではなく、きちんと絵画について勉強したいと思うようになったのだ。

 後編に続く。

(取材・文=小川泰加/コクハク編集部)

 いとう・かえで▽1993年、富山県生まれ。立教大文学部卒業後、TBSテレビにアナウンサーとして入社。退職後の2021年3月、自身初となる絵詩集「唯一の月」(光文社)を出版。同10月から拠点をドイツに移す。

 現在は東京・銀座の「東急プラザ銀座」で自身3年ぶりの個展「サントリー ジャパニーズクラフトジン ROKU<六>/日常を旅するホテル 東急ステイ presents 伊東楓展『人は、いつまで夢を見ていられるのだろう』」を開催中(~1月28日まで)。

コクハク編集部
記事一覧
コクハクの記事を日々更新するアラサー&アラフォー男女。XInstagram のフォローよろしくお願いします!

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


夏の終わりの朝顔が音符にみえた 五線譜は秋のメロディーか
 暦の上では秋でも、季節はそうガラッとは変わらない。  日陰に逃げ込んで顔を上げたら、フェンスに絡まる朝顔が五線譜...
超絶美人な友達と比べられ、つらいと思うのは仕方がない?
「仲良しの友達が超絶美人で、劣等感でいっぱいになってつらい……」  そんな悩みを抱えている女性は少なくないのでは? 人...
食欲の秋本番! ごはんコールにウキウキな“たまたま”君たち
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
ほっぽらかし園芸はズボラの味方! 秋に植えたい「宿根草・多年草」6選
 頭の構造が単純で「めんどくせぇ」が口癖。そう、ワタクシは“どうなんでしょうね”な超ズボラ人間でございます。  そ...
自分を変えるのがイヤなら場所を変えればいいんじゃない?
 北海道で暮らす、まん丸で真っ白な小さな鳥「シマエナガちゃん」。動物写真家の小原玲さんが撮影した可愛くて凛々しいシマエナ...
がっつーん、でも友達でよかった!酒に溺れた廃人寸前の女性を救った一言
 持つべきものは友達といいますが、本当につらい時に支えてくれるのは、利害関係のない家族や友達など身近な人たち。  ...
墓じまい=不幸になるは迷信です ご先祖様も子・孫も安心なメリット5つ
 跡取りがいない、遠方でお墓参りができないなどと、墓じまいを考える人が増えています。しかし、いざ現実的に墓じまいしようと...
夏の終わりはもうすぐか 去ろうとすると寂しくなる不思議
 早く過ごしやすい季節が来ないかと祈っていたけど、いざ夏が去ろうとすると寂しいもの。  自分は誰かの好意に気づかな...
毎月14日は恋人の日!韓国のカップル事情、ぶっちゃけ本当に祝ってる?
 韓流ブームが始まって以来、おさまることを知らない人気っぷりの韓国ドラマ。特にエキサイティングな愛情劇を繰り広げる恋愛系...
2023-09-29 11:10 ライフスタイル
家事も仕事も“100点”なんて無理だから!完璧主義に疲れた時の対処法5つ
 家事や仕事、子育ても「完璧にこなしたい!」と頑張りすぎていませんか。すべてを完璧にこなせれば気持ちいいけれど、完璧主義...
ご立派!器のデカさと“たまたま”の大きさは比例するのかも☆
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
おかずは最低3品!? うちの義母は連絡魔、LINEの通知来るたびにしんどい
 結婚するとほぼ漏れなくついてくるのが「義母問題」です。仲良くなれたら悩みはないのですが、そう簡単にうまくいくケースは少...
看護婦さん? それとも看護士さん? 看護師さん??
 知っているようで意外と知らない「ことば」ってたくさんありますよね。「女ことば」では、女性にまつわる漢字や熟語、表現、地...
KALDIサマサマ☆ALL500円以下! “プチプラ”ハロウィンおやつ5選
 暑い暑いと言っている間に、いつのまにか9月も終盤。秋の気配が色濃くなってきました。  となると、気になるのはハロウィ...
「卒業」ばりに花嫁略奪!事実は名画より奇なり、破天荒な友人がヤバすぎ
 破天荒とは、「誰もしなかった前代未聞の行動をする」ことを意味します。そして、世の中には、まさに「破天荒」の言葉にふさわ...
ほっこり読み切り漫画/第58回「サクラ鳴く」
【連載第58回】  ベストセラー『ねことじいちゃん』の作者が描く話題作が、突然「コクハク」に登場! 生きものたち、...