更新日:2024-05-11 06:00
投稿日:2024-05-11 06:00
【東京駅の女・小島萌香29歳 #3】
振った男の成婚報告にショック…
萌香は翌週末、国崎をホテルのカフェラウンジに直接呼び出した。
周囲ではお見合いをしている男女が2、3組いた。緊張感がありながらも、それぞれとてもいい雰囲気で会話をしている様子であった。
「え、高梨さんが成婚退会されたんですか?」
「はい…あの後、すぐに紹介させていただいた女性と意気投合して、とんとん拍子に婚約となりまして」
実は萌香、先日お見合いした福田よりもマシだったという理由で、価値観が違うと断った高梨に改めて申し込んでいた。
だが、そんな知らなくていいことまでを知ってしまうとは…。
「ええ、地味にショックです」
彼が惜しかったわけではない。自分だけが置いていかれているという事実が身に染みたのだ。
未婚が悪いわけじゃない…
自分以外みんな幸せになっている…そんな被害者妄想に打ちひしがれ、肩を落とす。国崎はただ静かにその姿を見守る。
すると、萌香の視線の中にあるものが目に入った。テーブルの上に交互に組まれた国崎の綺麗な長細い指――彼女は、ネイルも指輪もしていなかった。
「あの…こんなこと聞いて申し訳ありませんが、国崎さんは、ご結婚されていますか?」
「いいえ。それでは不安ですか?」
「そういうわけでは」
「長年連れ添っているパートナーはいます。ま、今の法律上は出来ないので」
さらっと言い切った国崎。萌香は意味を汲んで、「そうですか」とだけ返す。
すると、安心したのか、国崎はふふふと頬を緩ませ、萌香に告げた。
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