酒癖の悪い父の記憶
私の父は市役所に勤める真面目な公務員ですが、実は酒癖が悪く、家では酔って母に暴力を振るうことはよくありました。
幼いころから父の暴力を知っていたので、私自身、父との関係は良くありません。母は近所の目もあるし、愚痴ひとつ言わず耐えていたようですが、夜中に風呂場で泣いている姿を目にしたことが何度もありました。
――千鶴、なんていう会社なの? 父さんに報告しなきゃ、母さんまたひどい目に遭わされる。ただでさえ、30歳を超えて独身の千鶴のことを、親戚も心配して、母さん肩身が狭いの。父さんは『お前の育て方が悪かったんだろう』って言うし…。
――迷惑かけてごめんね。勤めている会社は『Aイベント企画』というイベント会社よ。ちゃんとした優良企業だから安心して。
――分かった。父さんに伝えるから、くれぐれも体に気をつけるんだよ。
――母さん、お願いがあるの。今後、私の同級生や同僚が電話してきても、私の連絡先は教えないで。
私は声を荒らげました。連絡先から不倫生活がバレてしまったら、すべてが終わりです。
――どうして? 同窓会の連絡だってあるんだよ。
――とにかく今は連絡先を伝えないで。
父は通話口で怒鳴り散らして
私は『なぜ?』『本当に大丈夫なの?』と聞く母をなだめ、何とか通話を切ったんです。
(今、正樹さんとの関係をバレるわけにはいかない。あと1年…どうか1年だけはバレずにいさせて…)
祈るような気持ちで過ごした1週間後、父から連絡が入りました。
――千鶴、お前の勤めている『Aイベント企画』の社長は、妻子がありながら、他の女と不倫している最低最悪の男だぞ。今すぐ辞めて実家に帰ってこい!
どうやら興信所を使ったようです。私は通話口で怒鳴り散らす父の声を聞きながら、思い描いた彼との将来が音を立てて崩れていくのを感じました」
続きは次回。
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