中卒の夫と愛し合って結婚。47歳で未亡人となり結婚相談所へ…【後妻業の女・筧千佐子#2】

神田つばき 女と性 専門ライター
更新日:2024-11-23 06:00
投稿日:2024-11-23 06:00

47歳、第3の挫折「夫も家も工場も失って」

 でも、チャレンジ精神旺盛な千佐子はこれぐらいで負けていない。環境が悪ければ変えればいい。Tシャツなどにプリントをする印刷工場を夫婦で起業した。ところが経営はうまくいかず、両方の親族からお金を借りまくった。

 いつも自分に冷淡な目を向けてくる貝塚の親族に頭を下げるのは、千佐子のプライドを削り続けたことだろう。

 北九州の両親は2,000万円ものお金を貸してくれた。母親は「子どもたちを連れて帰っておいで」と何度もすすめたが、千佐子はそうはしなかった。このとき離婚して故郷に帰っていたら、死刑になるような犯罪をおかすこともなかっただろう。

 でも、プライドなのか孤立癖なのか、千佐子は人に甘えることのできない性格だ。自分の力で逆転ホームランを打とうとあがきにあがく。

 そんな中、病気がちだった夫が亡くなる。無理な設備投資をしたのか、ハイリスクな投資で資金を増やそうとして失敗したのか、借金の抵当に家も工場も取られてしまった。

20年の間に10人の男性が命を落とす

 崖っぷちに追い込まれた47歳の千佐子が向かった先、それは結婚相談所だった。この年から逮捕までの20年のあいだに、彼女と親しくなった、あるいは結婚した10人の男性が次々と命を落としていく。

 手口はいつも同じで、公正証書遺言を書かせて青酸化合物入りのカプセルを飲ませる。血の一滴も流れないため証拠が残らない。まるで死の職人による手慣れたルーティンワークだ。挫折が相次いだとはいえ、どこかで悪魔に魂を売り渡したとしか思えない。

 しかし、青酸化合物はどこから手に入れたのか、10億円もの資産はどこに消えたのか、謎はまだ残る。

#3へつづく:男性たちから奪い取った10億円、痕跡も残さずに消えた…】

【参考文献・映像】

・「筧千佐子 60回の告白 ルポ・連続青酸不審死事件」(安倍龍太郎/2018年/朝日新聞出版)
・「全告白 後妻業の女: 「近畿連続青酸死事件」筧千佐子が語ったこと」(小野一光/2018年/小学館)
・「脳内麻薬 人間を支配する快楽物質ドーパミンの正体」(中野信子/2014年/幻冬舎新書)
・「サイコパス」(中野信子/2016年/文春新書)
・「ザ!世界仰天ニュース 連続殺人犯・筧千佐子…夫・交際相手を次々毒殺!カメラ前で嘘並べる」(日本テレビ/2023年8月29日放送)
・「後妻業の女」(大竹しのぶ主演・鶴橋康夫監督/2016年/東宝)
・「関西連続青酸殺人事件 筧千佐子死刑囚が泣きながら語った出生の秘密」(日刊ゲンダイDIGITAL/2022年3月13日配信)
・「「後妻業」で高齢男性を次々と籠絡、心の隙間に忍び込む毒婦の手口」(ダイヤモンドオンライン/2018年7月27日配信)
・「筧千佐子被告、死刑確定 被害者に「幸せ」といわしめた骨抜きテクと秀才少女時代」(週刊女性PRIME/2021年7月7日配信)

神田つばき
記事一覧
女と性 専門ライター
離婚と子宮ガンをきっかけに“目がさめて”女性に生まれたことの愉しみを取り戻すべく、緊縛写真のモデルとライターに。私小説「ゲスママ」、イベント「東京女子エロ画祭」「親であること、毒になること」などを企画。最近は女犯罪者や緊縛表現者に関するZINEの制作・販売を開始。Xnoteblog

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


私「復縁希望?」女友達「あと2年で吹っ切る」失恋かまってちゃんLINE
 失恋をして心が傷つくと、少しでも誰かに気持ちを聞いてもらいたくなるもの。  でも、あまりにしつこかったり、常識が...
キャンプより安近短なべランピング!楽しむコツ&それでも失敗したエピ
 空前のキャンプブームが到来していますが、やはりイチからキャンプギアを集めてテントを張って…となると、ハードルが高いと感...
見上げた青空が眼に染みて…1日に1回くらいは空を眺めてみる
 青空が眼に染みると思ったら、しばらく空を見上げていなかった自分に気が付いた。  うつむいて歩くのがクセになってい...
「俺のソーセージも試食して」じゃねえ! 40女の成人の日の思い出
 1月8日は成人の日。晴れ着やスーツに身を包んだ新成人たちの姿は、眩しいものです。  成年年齢が18歳に引き下げられま...
これって誘拐ですよね!? 遊んでいたら詰められた恐ろしいご近所トラブル
 ステップファミリー6年目になる占い師ライターtumugiです。私は10代でデキ婚→子ども2人連れて離婚→シングルマザー...
神秘的! 宝石のようなオッドアイの純白“たまたま”に幸福祈願
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
「緑の黒髪」があるなら、白髪の“褒め言葉”は?
 知っているようで意外と知らない「ことば」ってたくさんありますよね。「女ことば」では、女性にまつわる漢字や熟語、表現、地...
日本の美徳すごい!便器に汚物箱…海外で体験した考えられないトイレ事情
 日々の生活に絶対に欠かせないもの、「トイレ」。1日に何度も顔をあわせる存在ですが、実は国によってトイレの形状や使用方法...
2024-02-26 19:03 ライフスタイル
まるで宝探し!話題の木更津コンセプトストアでほっこりした男女の会話
 昨年6月、三井アウトレットパーク木更津(千葉)の隣にオープンした「木更津コンセプトストア」。サステナブルな社会を目指し...
「量と質」どちらを優先するか迷ったら経験値を振り返ろう
 大人になると「量より質」を意識する機会が増えますよね。私の場合、食事に関してはまさにそうなってきた気がします。  そ...
湧き水が心にも沁みてくる 福井県爪割の滝
 北陸地方に甚大な被害をもたらした能登半島地震。  被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。  つらいこ...
貫禄の毛繕い中をパチリ!ありがたいご神体“たまたま”に感謝
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
【2023年人気記事】セックスは嗜好品?子宮頸がんサバイバーの性生活
 2023年は「コクハク」をご覧いただき、誠にありがとうございました。反響の大きかった記事を再掲載します。こちらの記事初...
2024-01-04 06:00 ライフスタイル
近すぎなくていい 毎日は“ゆるい人間関係”に支えられている
 北海道で暮らす、まん丸で真っ白な小さな鳥「シマエナガちゃん」。動物写真家の小原玲さんが撮影した可愛くて凛々しいシマエナ...
【2023年人気記事】吉田沙保里と大久保嘉人は公認? ウロつく女が嫌!
 あけましておめでとうございます。2023年は「コクハク」をご覧いただき、誠にありがとうございました。反響の大きかった記...
【2023年人気記事】新宿立ちんぼ女性に異変…進む売春のフリーランス化
 あけましておめでとうございます。2023年は「コクハク」をご覧いただき、誠にありがとうございました。反響の大きかった記...