自治体支給の「更年期バッジ」が欲しい!子無し、未婚の中年勢にちょいと冷たくないか

小林久乃 コラムニスト・編集者
更新日:2024-12-25 14:59
投稿日:2024-12-11 06:00
 女性なら誰でも通る茨の道、更年期。今、まさに更年期障害進行形の小林久乃さんが、自らの身に起きた症状や、40代から始まった老化現象についてありのままに綴ります。第9話は「求む、更年期バッジ」。

座らせてください、ほんの少し

 電車に乗っていたら、急に目眩と暑さ(のぼせ)に襲われたことがある。ただ顔が真っ青とか、具合の悪そうな雰囲気を醸し出しているわけではなく、見た目は元気そうなおばさんだ。

(うう~…ちょっと座りたいな…。座るだけでいいんだが)

 目の前にヘッドフォンをつけて、スマホから流れる動画をガン見で座っている若い男性がいた。彼、この私に席を譲ってくれないか。でもいきなり話しかけて、

「すみません、更年期の症状が出ちゃって、足元が少しふらつくものですから座席を一瞬だけでも代わっていただけないでしょうか」

 こんなことを言おうものなら、変質者と間違われる。もし車両内で座り込んだら、私みたいなお節介おばさんが「あなた、大丈夫?」と寄ってきて、要救護者となって、病院送りになって、実家の両親に連絡が飛ぶなんて、大人としての面目がなさすぎる。

 そんなことを考えて目眩と格闘しているうちに、最寄駅に到着した。

 駅に到着するとついさっきまでのしんどさが消えていた。自分でスポーツドリンクを買って、駅構内で小休憩。そして何事もなかったかのように帰路に着く。

 更年期症状とは重病ではないけれど蓋然(がいぜん)性が高く、予測不可能なことが起きるのです。


【こちらもどうぞ】待ったなしの更年期、すこぶるつらい「おばさんの生理」どう乗り越える?

『更年期バッジ(仮)』の配布どうだろう?

 電車での一幕を経て、ふと「更年期バッジが欲しい」とひらめいてしまった。

 私の生涯に出番はなかったけれど、妊婦さんがつけている『マタニティマーク』に近いものを、40代から希望者に自治体で配るのはどうだろう。

『マタニティマーク』と違ってけしてハッピーオーラはないし、自らおばさん宣言をしているようなものなので、あくまでも任意。ずっと身につけているわけでもなく、症状が出てきたらバックからハンカチのようにそっと取り出して、ヘルプを出す。

「私ね~、更年期なのよ~、つらいからその席代わってくれない?」

 そういった押し付けではない。どちらかというと、大騒ぎをしなくても大丈夫だというサインである。

「すみません、ほんの一瞬でいいので、座らせてもらったら、すぐに立ち直ります」

 こんなふうに解釈をしてもらうためのサインである。他にもオフィスで更年期症状が勃発した際に使ってもらうのもどうだろう。先日、とある仕事相手の男性と更年期について雑談をしていたら、見た目が通常通りなので、女性のしんどさが分からないと言っていた。

 映画『夜明けのすべて』では主人公の藤沢美紗(上白石萌音)が、月経前のPMS症状が出ると、職場の同僚に対しても怒りを爆発させていた。小さな職場なので皆がPMSのことを恒例行事のようにしてくれていた。でも現実的にすべてのオフィスで、社員の納得が得られるとは限らない。そんな時に提示する『更年期バッジ(仮)』である。

中年にも少しだけ手厚い対応を

 ぼんやりと『更年期バッジ(仮)』について使用法を考えていたところに、疑問を感じるニュースがいくつか届く。

 まずは11月末。東京都知事が子育て支援として第一子から保育園無償化を提示していた。これからを担う子どもたちが数少なくなっているのだから、手厚い待遇は当然だ。でも正直なことを言うと、モヤッとする思いがないわけではない独身(私)。

 続けて東京都庁の週休3日制の導入。おそらくこれによって各企業も導入を検討することになるだろう。しがない個人事業主としては、全く関係のない話題。週休3日になろうと、私たちは変わらず働く。

 30代前半で志を持って独立したときと変わらず、自分のできることに邁進するしかない。

子無し、未婚、フリーランスに冷たくないかい?

「ふ~ん…」

 最近、子無し、未婚、フリーランスに対して東京都はちょっと冷たいのではないだろうか。独身を減らそうと婚活パーティーを開催していたけれど、あれには一部年齢制限もある。卵子凍結の補助金もあるらしいが、中年勢としてはもう少し早く気づいて欲しかったと思う。

 そんなおばさんの遠吠えを並べても仕方がないので、せめて『更年期バッジ(仮)』の配布くらい検討して欲しい。男性版があってもいい。

 繰り返しになるけれど、これからの人たちにかける予算があるのは当然。でも今まで踏ん張ってきた中年勢に対する功労というものも考えて欲しい。

 なんせ我々、少なくとも80歳くらいまでは働けという圧がかかった世代なのですから。

 次回(#10)へ続く。

小林久乃
記事一覧
コラムニスト・編集者
出版社勤務後、独立。2019年「結婚してもしなくてもうるわしきかな人生」にてデビュー。最新刊はドラマオタクの知識を活かした「ベスト・オブ・平成ドラマ!」(青春出版社刊)。現在はエッセイ、コラムの執筆、各メディアの構成と編集、プロモーション業が主な仕事。正々堂々の独身。最新情報は公式HP

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


義母「唐揚げは?」嫁「そうですね」義母「明日は鍋」献立確認もやもや!
 義母から送られてきたLINEでもやもやした経験はありませんか? 嫁いびりをするような義母であれば、不快なLINEに何度...
また!snsのアイコンコロコロ変えるの何で?4つの心理&注意したいこと
 あなたはsnsのアイコンをどのくらいの頻度で変えますか? snsを始めてから一度も変えたことがない人もいれば、月に一度...
女同士の嫌味合戦に終止符を! 相手を黙らせる冴えた返し方
 女同士の嫌味の言い合いは、いつだって熾烈。 相手が職場の上司や同僚だと、言い返すことができずストレスになってしまう場合...
ぎゃああ! 暖かいところで越冬するカメムシ(涙)、安全な捕まえ方は?
 家の中に出る虫で、ゴキブリを怖がる人はたくさんいますよね。でも、実はゴキブリと同じくらい不快度が高い虫がいます。  ...
派手な集団に遭遇 ざわついた飲み屋で包まれる昭和の空気
 とある飲み屋で派手な集団に遭遇。チンドン屋さんのお出ましだ。  年末にしんみりしても仕方がないから、ここは景気よ...
信頼の証じゃない 身内に“八つ当たりする”人の心理と対処方
 今回はお悩み相談回です。職場に好きな人がいる男性の方なのですが、よく想い人の女性から八つ当たりされるのだとか。 「信...
口づけしたくなっちゃう♡ 真っ白な“たまたま”にロックオン
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
なぜお正月の飾りに竹?めでてぇ年賀の最強アイテムはSDGs的にも超優秀
 猫店長「さぶ」率いる我がお花屋にも、まもなくお正月がやってきます。  今年の暮れも嵐が過ぎ去った後のように荒れ放題に...
クリスマスを「自分へのご褒美」の口実にしてもいいかしら?
 北海道で暮らす、まん丸で真っ白な小さな鳥「シマエナガちゃん」。動物写真家の小原玲さんが撮影した可愛くて凛々しいシマエナ...
知人「やさしいたい焼き屋のおじさん」私「あれ母親」地雷踏んだLINE
 人にはそれぞれ絶対に踏んではいけない「地雷」があります。でも、それが何かはわからないケースがほとんど。今回は、LINE...
ギャラ飲みとラウンジで荒稼ぎも…まともな恋愛ができない29歳港区女子
 経営者や著名人、人気のインフルエンサーも利用する「ギャラ飲み」なるサービスって知っていますか? 東京都内のみならず、全...
枕元にプレゼントがなくても…満天の星空に心奪われる特別な夜
 出雲の国の満天の星空を眺めていた。  日付が変わった頃、天の川を切り裂くように飛行機が音もなく飛んでいった。 ...
「こっちに付いてきて」広島で“たまたま”が秘密基地にご案内
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
再婚しても元夫・家族に子どもを会わせる?本音は「面白くない」だけど…
 ステップファミリー6年目になる占い師ライターtumugiです。私は10代でデキ婚→子ども2人連れて離婚→シングルマザー...
「不倫」と「浮気」の違い、知ったかぶりしてませんか?
 知っているようで意外と知らない「ことば」ってたくさんありますよね。「女ことば」では、女性にまつわる漢字や熟語、表現、地...
ほっこり読み切り漫画/第64回「みんな揃って、メリークリスマス」
【連載第64回】  ベストセラー『ねことじいちゃん』の作者が描く話題作が、突然「コクハク」に登場! 「しっぽ...