死ぬまでにしたいことはなんですか――? そんなことを突然聞かれても、どれだけの方が答えられるのでしょうか。
ある日、自分の人生のタイムリミットが思いのほか迫っていて、「死ぬまでにしたいことを叶えてあげる」と言われたら、あなたならどうしますか?
ワタクシには答えられる自信なんて到底ございません。ですが、これに答えた人とそれを叶えてあげた人たちがいるのです。
今回は、強い心を持った一人の女性と、それを支えた心優しい人たちの「花のチカラを信じます」のお話でございます。
彼女の最期の望みは「花に触りたい」
「斑目さん、ちょっと相談がある」
ある日、精神障害のグループホーム施設長の友人から連絡がございました。
「ウチの利用者さんで末期の乳がんの女性がいるんだ。孤独な彼女は全てを受け入れ、治療はせずに緩和ケアに入ったが、最期にしたいことは何かある?って聞いたら、花に触りたいって言うんだ」
この女性Aさんは、以前は普通にOLをしていましたが、ある日突然、統合失調症を発症します。
その後、たくさんの悲しいトラブルの果てに家族から見捨てられ、独りぼっちになってしまうのでございます。孤独な時間を過ごしてきたAさんは、施設長をしているワタクシの友人と出会うのですが、やっと安住の地を手に入れてほどなく、乳がんの診断をされてしまったのでございます。
本来ならばグループホームでの看取りはないとのことですが、施設長とスタッフさんたちは会社に掛け合い、「大好きな人たちと最期まで一緒にいたい」というAさんの希望を叶えてあげることにしたのでございます。
そして、いつしか食べられなくなり、身体が動かなくなり、最期の時が近づいてきたその時、「人生の最期は大好きな花に触りたい」と言ったそうなのでございます。
ワタクシは彼女にお会いするため、何度か施設に呼ばれましたが、体調の急変でなかなか約束が叶うことは難しく、いよいよこれがラストチャンスという日……。
Aさんはその日も、がんが裂けて大出血を起こしたのでございます。
慌ただしく訪問スタッフやドクターがやってくるのを見て、「今日もダメだろうな……」と帰ろうとした矢先、「待って、斑目さん! 今日しかない。決行します」と、呼び止められたのでございます。
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