テレビ業界人の筆者の“気になる”…「あんぱん」「べらぼう」なぜNHKのドラマのオープニングは長いのか?
【テレビ局に代わり勝手に「情報開示」】
私は朝ドラは見ないんですけど、やなせたかし先生が好きなので『あんぱん』は見てまして、「ずいぶん事実と違う虚構の世界を爆走してるなあ」と思いますが、それは置いといて、ひとつすごく気になることがあります。
それは「オープニング長くね?」ということ。計ってみたら1分15秒もありました。15分の長さの番組で1分15秒って、12分の1オープニングじゃん……と思って、大河ドラマ『べらぼう』のオープニングも計ってみたら、こちらはなんと2分半もありました。
2分半って! 民放の人間からしたらありえない。ミニ枠番組1本くらいの長さですよ。きっと民放関係者はみんな背筋がゾワゾワするような不安感を覚えるでしょうね。なぜかというと「数字がダダ下がっていく予感しかしない」から。視聴率が右肩下がりで墜落していく「ヒュー」っていう音がしそうです。
オープニングは番組の冒頭に近い部分で流れるわけですよね? そこで「出演者やスタッフのテロップ」を長々と流したら、確実にドラマの流れが止まってしまいます。基本的にはおんなじ音楽とおんなじ映像が毎回流れるわけですから、どう考えてもあまり意味はないしタルい。しかも、「今回出演する人と出演しない人」を先にバラしてしまうわけですから、勘のいい人ならだいたい今回の展開が分かってしまいます。
いま民放のドラマって、オープニングは超短く「タイトルを出すだけ」くらいが定番で、だいたいどのドラマも「数秒、せいぜい10秒」といったところじゃないでしょうか。それはテンポを失速させないためと、視聴者にチャンネルを変えさせないためです。
■「出演者とスタッフの格付けランキング」のため……?
では、なぜNHKのドラマのオープニングは長いのか? というとたぶん「出演者とスタッフの格付けランキング」みたいな、業界的な理由なわけですよ。誰の名前を先に出すかで「誰が偉いか、誰を重視しているか」みたいなルールが決まっているので、きちんとしないと怒られるみたいなことです。
まあそれは民放も同じなんですが、大体の局はエンドロールでやってます。そのほうが視聴率に影響が少ないからです。あるいは「板テロップ」といって、最後に画面いっぱいに出演者とスタッフの名前を一瞬出して、それでおしまいという番組もある。
NHKって視聴率をスゲー気にするくせに、馬鹿みたいに長いオープニングを流して平気なのが、なんとなく「ああオレたち民放とは違うな、殿様商売だな」と思っちゃいます。お金を必死で稼ぐ必要はないわけで、「放送するお役人」ですからね。理解し合えない気がしますね。
(鎮目博道/テレビプロデューサー、コラムニスト、顔ハメ旅人)
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