「国宝級イケメン」のレッテルを国宝級演技で払拭 吉沢亮はストイックな芝居バカ
【今週グサッときた名言珍言】
「イケメンって言われることは嫌な思いはしないけれど、お芝居を見てくれよと」
(吉沢亮/NHK「スイッチインタビュー」6月20日放送)
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主演を務める映画「国宝」(東宝)が大きな話題を集めている吉沢亮(31)。そんな吉沢は若い頃から「国宝級イケメン」などと称されてきた。そのことについて率直な気持ちを語ったのが今週の言葉だ。特に10代、20代前半の頃はその思いが強く、役作りで無駄に太ってみたり、芋っぽく見せることに注力した時期もあったという。
中学の頃、「学年の3分の1には告られた」(TBS系「日曜日の初耳学」2025年6月1日)と言うほど、モテた吉沢が芸能の道に進むのは必然だったのだろう。母が応募したオーディションで特別賞を受賞しデビュー。11年には「仮面ライダーフォーゼ」(テレビ朝日系)に出演するなど、はたから見ると順風満帆だが本人はそうではなかった。
同世代で10代のうちからブレークしていった人が周りにたくさんいたため、「嫉妬というか、やっぱ悔しさ」そして「もっとやれるのに」という思いをずっと抱えていた(同前)。評価されるのは顔ばかりで、オーディションにも落ちることの方が多かった。「僕、顔しかイケてないですから(笑)」(講談社「ViVi」電子版=18年11月22日)などと自嘲していたこともあった。
同じインタビューで自分が思うイケメン像を聞かれ「ストイックな人」と答えている。そのときは「僕はストイックさゼロなので(笑)」(同前)とも語っていたが、いまや業界を代表するストイックな俳優となった。
親友・北村匠海は、「彼はもう芝居に生き、芝居に死ぬ人でしょうから。僕が知りうる中で一番芝居バカ」(「日曜日の初耳学」=前出)と評している。また北村は、吉沢がイケメンという評価に「あぐらをかかない仕事の選び方」をしていると言う。実際、彼は冒頭の番組でも「人間の内側のドロドロしたものを生々しく描く」作風に憧れ、李相日監督の映画「怒り」のオーディションを受けたことを明かしている。その選考には落ちたが、それから10年、NHK朝ドラや大河ドラマなどで研鑽を重ね、ついに同監督の「国宝」での主演にたどり着いたのだ。
「やればやるほど、自分に足りないものに気づく。先が見えなくて、絶望の繰り返し」(「Web éclat」25年6月29日)だったという1年半に及ぶ歌舞伎の稽古を経て、見事に演じきった。「国宝級イケメン」という“レッテル”を、そのストイックさで払拭し、国宝級の演技を見せつけたのだ。
(てれびのスキマ 戸部田誠/ライタ―)
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