夫の「相手」と直接対決した結果…妻が抱いた不思議な感情。ベッドでありえない“未来”を夢想する夜

ミドリマチ 作家・ライター
更新日:2025-08-10 16:29
投稿日:2025-08-09 11:45

不思議な魅力の女――亜理紗に芽生えたある感情

「そうなんですね、お疲れでしょう」

「ええ…毎日ゆっくり眠れてなくて」

 彼女には、どこか声に包容力があった。

 不思議だ。夫と浮気している女なのになんでこんなに話すことができるんだろう。同じ男を知っているという安心感なのか…それはそれで密かに私の心を解放させていた。

 ――あの人も、こんなふうにいろいろな私の愚痴を吐いているのだろうか。

 女は、うん、うん、と聞いてくれているだけだったけど、私の心は癒されていた。匂わせようとか、既婚女性としてマウントをとろうとか、話し始めた時に生じていた下衆な感情は、どこかに消え失せている。

 女は、日が暮れるまで、ひとりでいた。

 プールに入ったのを見たのも最後だけ。結局、何のためにいたのかは、考えないでおこうと思った。

 ひとしきりのたわごとに付き合ってもらった後、私はお礼代わりに彼女のインスタの投稿にハートマークをつけた。

 辿れば正体がバレてしまう可能性もある。あの人の妻であると。

 でも、別にいい。むしろ、そうなってもいい。

 あの人には、もっとふさわしいいい人がいるはずなのだ。

 存在証明。あなたが入り込んだ夫の世界は、彼の広い世界のたった一部分にすぎないことを、教えてあげるという優しさだ。

その日、彼女とミセスを歌う夢を見た

 その夜、女の投稿を見ると、彼女の行きつけらしい居酒屋で、バカ騒ぎをしているリールをあげていた。

 常連らしい若者と、ミセスを熱唱している。とても楽しそうだ。私もその中に入りたいと思うほどに。

 ――私も、夫に出会わなければ、こんな今があったのかな。

 私の隣では3人の子供がスヤスヤと眠っている。羨望でも憐みでもない、ただの傍観。そんなことを考えていたら、いつのまにか夢の中にいた。

 そこでは、私とあの子が、カラオケで一緒にミセスを歌っていた。夏によく耳にするあの歌を。

ミドリマチ
記事一覧
作家・ライター
静岡県生まれ。大手損害保険会社勤務を経て作家業に転身。女子SPA!、文春オンライン、東京カレンダーwebなどに小説や記事を寄稿する。
好きな作家は林真理子、西村賢太、花村萬月など。休日は中央線沿線を徘徊している。

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


スマホを持たないサブカル老人の願い「本屋に行く楽しみを奪わないで~」
 コミックや書籍など数々の表紙デザインを手がけてきた元・装丁デザイナーの山口明さん(63)。多忙な現役時代を経て、56歳...
大人の「友達がいない問題」はスナックで解決!?常連同士が仲良くなるわけ
 みなさんは大人になってからできた友達、どのくらいいますか? 「言われてみればもゼロ」なんてこともあるのでは?  ...
気高いオーラにゾクゾク! コワモテ“たまたま”の意外な素顔
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
自分の選択に誇りを持って。子どもを産まない理由、そして6つの決断
「DINKs」という言葉があるように、「子どもを産まない」ということが近年では夫婦の選択肢の一つとして普通になってきまし...
お店で見かけたら幸運! 超レア「バードネスト」の正体は野良ニンジン!?
北海道出身の主人とは衣食住、風習や慣習など折に触れ、関東で生まれ育った者(ワタクシ)との違いを感じます。結婚当初は行き来...
Threadsで実感!「クソリプを送る人」は概ねコレ、主婦の心の闇は深い
 セックスレスやセルフプレジャー、夫婦の在り方などをテーマにブログやコラムを執筆しているまめです。  私はX(旧T...
銀座で“750円のみほ&時間無制限”の「AOU銀座の森」がまさかの改悪!?
 コロナ禍以降、基本在宅勤務な方も多いのでは? 出勤のわずらわしさから解放されるのはいいけれど、たまには気分転換をしたい...
階段道の“たまたま”君♡嬉しいスリスリ攻撃であわや転落危機
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
南アルプスのコントラスト【春】
 柔らかな陽の光、鮮やかな桃色、雪をかぶる南アルプス。  まだ少し冷たい空気と一緒に胸に入り込まれてしまう。
ぐはっ!金欠で焼き肉のお誘い…ギクシャクも翌日リスケも回避する断り方
 金欠の時、友達から飲みや遊びの誘いが入ると、どうやって断るか悩んでしまう人は多いはず。  断り方によっては、人間...
【難解女ことば】「湯湯婆」パソコンで変換できないかも…なんて読む?
 知っているようで意外と知らない「ことば」ってたくさんありますよね。「女ことば」では、女性にまつわる漢字や熟語、表現、地...
資格勉強中の彼。ウザイも既読スルーも回避!気遣い上級国民のLINEテク
 せっかくLINEを送ったのに、相手から返信が来ないと不安になりますよね。特に、LINEに気づいているのに既読スルーだっ...
義母と喧嘩したら仲直りは?顔見ずLINEで「韓ドラで仲良くなりたい」
 義母と喧嘩してしまうと、とても気まずいですよね。  特に子供がいる家庭では、祖母としてこれからも付き合いが続くで...
脱力と見せかけて宇宙と交信中?くねくねコロンな“たまたま”
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
LINEで退職届は“フツーにある”と聞いてたが…辞めるの簡単すぎじゃね?
「退職する場合は1カ月前までに申し出ること」などと、会社ごとにルールが設けられている場合が多いですよね。でも最近は「今日...
嘘吐きピンクローター
「知ったかぶり」という言葉がある。実際は知らないのに、知っているようなフリをすることだ。  知らなかったことを恥ず...