夫の「相手」と直接対決した結果…妻が抱いた不思議な感情。ベッドでありえない“未来”を夢想する夜

ミドリマチ 作家・ライター
更新日:2025-08-10 16:29
投稿日:2025-08-09 11:45

私の質問に、不自然に口をつぐむ夫

 ぐっすりと、なかなかいい目覚めだった。

 午前8時。ちょっと寝すぎたみたいだ。カンタと莉奈は勝手に早起きして、自らパンを焼いて食べていた。出来た子たちである。

「ただいまー」

 一階の玄関から、なぜか夫の声がした。しばらくすると、スーツ姿の彼が帰ってきた。

「あれ、まだ寝ていたんだ」

「え、どうして? もう帰ってきたの?」

「どうせ今日会社有休だし、ガキンチョサービスでもしようと思ってさ。始発で帰ってきたよ」

 そう言って、彼は551の紙袋を私の目の前に差し出した。

「大阪から新幹線で、この時間に平塚に着くんだね」

 素直な疑問をつぶやくと、不自然に彼は口をつぐみ、私の言葉が聞こえなかったかのように別の話題を示した。

「プールにでも連れて行ってやろうかな。辻堂のジャンボプールとか」

「どうかしら? 昨日、大磯のプールに行ったの。あの有名なホテルのところ」

「へぇ…」

 なぜか夫はさらに黙って、寝室を出て行ってしまった。そしてスマホを手に、お手洗いに向かった。

幸せな日常。これで十分

 結局、私たちは朝ごはん代わりの豚まんを食べて、ゆっくり午前中を過ごしたあと、近くのららぽーとに行くことにした。

 フードコートの小あがり席から、キッズエリアではしゃぐ子供たちを眺めながら、会話のない穏やかな時間をふたりで過ごす私たち。

 これが日常。幸せな日常。これで十分。だけど、非日常を私も味わってみたい。思わず私はつぶやく。

「今度、沖縄とかに連れて行ってよ。贅沢な旅行したいな」

「いいよ。たまには家族とも、そういう場所もいいよな」

 夫は意外にも即答した。変な意味に捉えられそうな言葉尻があったが、余計なことは考えないことにする。

 今日は、ひさびさにぐっすり眠れそうな気がした。

Fin

ミドリマチ
記事一覧
作家・ライター
静岡県生まれ。大手損害保険会社勤務を経て作家業に転身。女子SPA!、文春オンライン、東京カレンダーwebなどに小説や記事を寄稿する。
好きな作家は林真理子、西村賢太、花村萬月など。休日は中央線沿線を徘徊している。

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


母の日の定番アジサイを長持ちさせるには?「伊予獅子てまり」が大注目
 猫店長「さぶ」率いる我がお花屋が位置する神奈川は、有名な温泉場がいくつも点在しているお土地柄。ワタクシが居を構える場も...
長期休暇でも帰省しない選択…6つのあるある理由、罪悪感を抱く必要なし
 皆さん、長期休暇のときは帰省しますか? 帰省を毎年のイベントとして楽しみにしている人もいれば、「帰省したくない」と悩ん...
MUJIのフレグランスオイルが優秀 価格は有名高級ブランドの6分の1以下
「無印良品」が好きなくせに知らなかった不覚…。インテリアフレグランスオイルの「ウッディ」、すでに人気の商品ですが、噂に違...
【月5万円】収入&スキルUPを目指すシンママは集合!
☆月に5万円、10万円の収入UPをしよう! ☆文章力をUPさせよう! 『コクハク』の読者選抜チームとして、メディ...
2024-04-30 13:20 ライフスタイル
40代もやらかす“プチ老害”の落とし穴 全長数十cmの長文LINEで見切れ
 40代にとっては他人事のように感じる「老害」ですが、実は今、40代の人から届く「プチ老害LINE」に困る若者が増えてい...
家事大っ嫌い~!40独女のQOL(生活の質)が爆上がりした2大時短家電
 7月よりドラマ「西園寺さんは家事をしない」(TBS系)が放送されるそうですね。 “干物女”を生み出したドラマ「ホタルノ...
友史上極ネガ、ごめん連呼、Wi-Fiジャック…LINEの異変はSOSサイン?
 毎日ネガティブなニュースが流れる現代では、メンタルがやられてしまう人が少なくありません。  自分は大丈夫でも身近...
今更「アイドル」になろう。そして、安倍なつみとCoCoの追憶
「おら、アイドルになる!」  そう叫んで、女の子走りでステージから捌けた瞬間、自分でブッと吹き出してしまう。アイド...
困り顔がたまらない! オッドアイ“たまたま”君にロックオン
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
早咲きも遅咲きも
 桜の種類によって咲く時期はそれぞれ違うのだという。  ソメイヨシノは蕾が膨らみかけている白州で八ヶ岳を背に満開の...
インフルだから修学旅行ずらせる?⇒令和も健在!“あたおか”モンペの恐怖
 モンスターペアレント、略してモンペ。自己中心的、理不尽、過保護、クレーマーとして学校や教師を悩ませる存在ですが、LIN...
「立てば芍薬 座れば牡丹 歩く姿は百合の花」って最上級の褒め言葉?
 知っているようで意外と知らない「ことば」ってたくさんありますよね。「女ことば」では、女性にまつわる漢字や熟語、表現、地...
ほっこり癒し漫画/第72回「爪切りはイヤイヤ」
【連載第72回】  ベストセラー『ねことじいちゃん』の作者が描く話題作が、「コクハク」に登場! 「しっぽのお...
私が見た最凶の闇ホステス!後輩いびり、“ブルーカラー”のお客様を蔑む女
 ホステス歴10年。スナックへの愛は今も増しており、これからもスナックの良さを知っていただくべく、何か綴れたらと思ってい...
“取り柄のない”自分の才能の見つけ方 手作りも副業も無理…深く悩まないで
 コロナ禍以降、近場のイベントを楽しむ人が増えました。そのなかで伸びてきているのが、手作りのものを販売する市場的イベント...
お花畑に2匹目の“たまたま”が♡ 今日の恋愛運はいかがかにゃ
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...