「かわいそうに…」かつては港区美女、今では老けた子育て女に――都落ちした親友に感じた優越感

ミドリマチ 作家・ライター
更新日:2026-02-07 11:45
投稿日:2026-02-07 11:45

「世界のはずれ」で子育て…友人への哀れみ

「ねえー、飲んでる?」

 奈江は西本が中座した隙を見て、思い切って優梨愛に話しかけた。彼に対しての強がりもある。気さくで余裕ある女だということをアピールしたかった。

「全然。明日も仕事あるから、実は早く帰りたいの」
「わかるー。ここいてもつまらないよね。なら下で踊らない?」
「踊りたいのは山々だけど…カレに怒られるの。このDJ好きなのに」
「私も!!」

 意気投合し、そこから付かず離れずの付き合いが始まった。

 ほどなくして優梨愛は西本と別れた。それを彼女から直接聞いた奈江は、秘密裏に西本と連絡をとるようになった。

 ふぎゃあ、ふぎゃあ、と優梨愛の腕の中の乳児が声をあげた。

「ごめんね、おっぱいの時間なんだ。好きなようにくつろいでいて」

 優梨愛は授乳のために、寝室へと入っていく。そして奈江は、見ず知らずの部屋でひとりきりになった。

 暇を持て余し、おもむろに窓に向かう。遠くに富士山が見えた。眼下には、緑が生い茂った森も見える。ここが世界のはずれであることを実感する。

 ――かわいそう……。

 憐みの隙間から、優越感が顔を覗かせる。あの時、あの夜の街で、どうしても勝つことができなかった高嶺の花はここにもういなかった。

 今夜は、西本が住む青山のマンションに行くつもりだ。そこで彼に、どんな報告をしようかと心が躍った。

 壁の奥から響く赤ん坊の泣き声は、奈江にとってとても心地がよかった。

#2へつづく:「100均があれば十分」その幸せは本物なの? 専業主婦に差し伸べられた港区からの“禁断”の誘い】

ミドリマチ
記事一覧
作家・ライター
静岡県生まれ。大手損害保険会社勤務を経て作家業に転身。女子SPA!、文春オンライン、東京カレンダーwebなどに小説や記事を寄稿する。
好きな作家は林真理子、西村賢太、花村萬月など。休日は中央線沿線を徘徊している。

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


#3「バカにされてる?」元彼のイヤミがつらい。女が椎名林檎を歌う理由
【#1、#2のあらすじ】  阿佐ヶ谷のスナックに勤務している紘子は、役者を目指しながらもくすぶっている日々。そんな...
「鉛筆なめなめ」「セクハラはやめて」悲しきおじさんビジネス用語3選
 会社に勤めている人なら、50代以上のおじさんたちが「おじさんビジネス用語」を使っているのを聞いたことがあるかもしれませ...
平日夜8時、話題のオーケー銀座店の惣菜コーナーに行き完全敗北した件
 10月17日、東京・銀座3丁目のマロニエゲート銀座2内に「オーケー銀座店」がオープンして話題になっていますね。銀座の一...
あなたにとっての「過去」はいつ? 過去を閉じ込めた空間で
 過去という言葉の意味が広すぎて、思い浮かべるイメージがまったく違うと気づいた。  ある人は自分が小さかった頃を、...
経験は「ナマモノ」…感情も感度も“錆びた大人”になっていませんか
 人生において経験は重要ですよね。これから先の未来や、あるいは後輩たちを助けられるかもしれません。  だけど昔の経験に...
15キロ太ったからつまんないの? “サイズ44”に教えられた自分の本音
 2度の出産と加齢と腰のヘルニアを経て、5年をかけて15キロ太りました。実はそれについては人が思うほどは気にしていない…...
奢り奢られ問題…リュウジ氏にもう港区くるなよ?の反論、私達が学ぶこと
 ネットを大いに騒がせた「奢り奢られ問題」。料理研究家のリュウジ氏のSNS投稿が火種となり、多くの意見が寄せられました。...
「出世したくない人」激増のナゼ 共通する特徴と4つの理由に妙に納得…
 令和の今、社会人の中でも「出世したくない」と考える人が非常に増えているようです。少し前まではどうにかして出世してやろう...
5年に1度の逸材にゃ!ノーブルすぎる“たまたま”に思わず合掌
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
26歳ギャラ飲み女子の貯金額は3000万円!昼はOL、非港区系の堅実生活
 経営者や著名人、人気のインフルエンサーも利用する「ギャラ飲み」なるサービスって知っていますか? 東京都内のみならず、全...
いくつになっても、誰かに褒められるのはやっぱりうれしい
 北海道で暮らす、まん丸で真っ白な小さな鳥「シマエナガちゃん」。動物写真家の小原玲さんが撮影した可愛くて凛々しいシマエナ...
ハロウィンの新顔!小粒な「ソラナムパンプキン」は枝にぶら~んぶら~ん
 まもなくハロウィン。猫店長「さぶ」率いる我が愛すべきお花屋さんに、今年も大きなパンプキンが店頭を占拠する季節がやってま...
出産を機に中途半端なキャリアに…今にマッチした働き方は?
 先日X(旧Twitter)で、米ハーバード大学教授のクラウディア・ゴールディン氏がノーベル経済学賞を受賞したニュースを...
シンデレラ城より“我が城”が好き!LINEが示すめんどくさがりやの実態
 めんどくさがりやの人は、できるだけ身動きしないで済むように、いろいろな方法を駆使し、少しでも楽な生活を追求していますよ...
水しぶきの向こうに見えた太陽 長く暑かった季節を偲んで
 次の季節に向かうとき、少し寂しくなるのはなぜだろう。  高3の夏の終わりに自分の手でプールのカギを閉めたときとは...
出産で疎遠に…結婚後に態度が変わる女友達の特徴&無理しない付き合い方
 学生時代に仲の良かった女友達も、結婚した途端に疎遠になってしまったというのはよくある話です。どうせなら、結婚しても長く...