卵巣摘出、ホルモン欠乏…健常者こそヘルプマークの認知を

コクリコ 編集者
更新日:2019-12-17 04:16
投稿日:2019-11-19 06:00

1カ月半ぶりのシャバでリハビリ開始

 そして、退院後の私の生活についてです。その後1カ月は実家にお世話になることにしました。母にイレウス対策の消化のいい食べ物を作ってもらい、上げ膳据え膳で甘えさせてもらいました。親が生きていてよかった……。

 歩行のリハビリもしました。マンションの外をぐるっと歩くことから始め、コンビニや書店に行き、1カ月半ぶりのシャバを満喫していました。往復10分のところにあるコンビニに往復40分もかかってしまったけど。

 ホルモン欠乏による更年期障害で起こるホットフラッシュもあって、すぐに疲れてしまうので、しょっちゅうカフェで休んでいました。真夏の平日の日中に長袖でアメリカンコーヒーを飲む、真っ白でがりがりのおばさん。手術と絶飲食、そして6週間の入院生活で衰えた筋力や体力はなかなか戻りません。

 退院後3週間目の朝にC病院へ定期健診に行かなくてはならないのですが、その日を思うととても不安になりました。電車で立っていられなかったらどうしよう? 一時的にヘルプマークをつけてみたらどうだろうか?

 ヘルプマークのことはC病院の外来で知りました。C病院にはつけている人がたくさんいらっしゃいます。

「ヘルプマーク」をご存じですか?

 ヘルプマークとは、「義足や人工関節を使用している方、内部障害や難病の方、または妊娠初期の方など、外見から分からなくても援助や配慮を必要としている方々が、周囲の方に配慮を必要としていることを知らせることで、援助を得やすくなるよう、作成したマーク」(東京都福祉健康局HPより)です。

 電車内でどうしても苦しくなったら、優先席に座りたい。でも何か言われないかな? と思い、ヘルプマークをもらいにいきました。ヘルプマークは役所、都内だったら東京メトロや都営地下鉄の駅でも配布しています。

 ですが、思い知らされました。ヘルプマークがほぼ認知されていないことを。ヘルプマークをつけていてもスマホを見ている若者にはぶつかられるし、おじさんには腕でぎゅーっと押される。

 傷が痛い。誰もこのマークを見ていないし、誰もこのマークを知らない。しんどかったので途中で下車してタクシーに乗ったこともあります。

大切な目印

 私がつらいのは一時的であり、歩けないことはない、という程度だったので、すぐにマークをつけなくなりましたが、もっと深刻な症状の方にとってヘルプマークは大切な目印。多くの人に知っていただきたいと思いますし、都では無料で配布されているものなのに、メルカリで売っている人がいるのもやめてほしいなと思います。

 傍から元気そうに見えても、見えないところに疾患があったり、心が風邪をひいていたり。普通に暮らすことが大変な人もいる。自分がそうなってはじめて私は、自分が元気だから人も元気だと勝手に思っていたんだなと知りました。

 優しくて、思いやりに満ちた世の中であるといいと思っていたのに、自分自身が思いやりをもっていなかったかもしれない、と反省しきり。ヘルプマークや妊婦さんマークにこれまで以上に敏感になった今日このごろです。

 次回に続きます。

コクリコ
記事一覧
編集者
実用書の編集者(社畜)。アラフォー未婚のがんサバイバー2年生(進級しました!)。2018年、子宮頸がんにて広汎子宮全摘出術を受ける。現在ホルモン補充療法をしながら経過観察中。SNSをパトロールするのが趣味。“Twitter探偵”とも呼ばれる。でも幸せになりたい。

関連キーワード

ライフスタイル 新着一覧


SNSの誹謗中傷、なぜするの? こじらせアンチ勢の心理8つ。冗談のつもりが攻撃に…
 SNSには匿名であることを利用して、批判や否定、誹謗中傷のコメントなどを繰り返す人がは一定数いるものです。そんな“アン...
ちょ…「パチンコ通ってそう」ってどういう意味!? 身近な女のイラつくLINE6選
 口調や仕草で可愛らしさをアピールする「痛い女」に、気遣いができない「自称サバサバ女」。女の敵はやっぱり女? あなたもこ...
にゃんたま総長、おやつをどうぞ! 猫族の頂点に君臨する風格はさすがです
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
【動物&飼い主ほっこり漫画】第102回「夏のバカンスだワン!」
【連載第102回】  ベストセラー『ねことじいちゃん』の作者が描く話題作が、「コクハク」に登場! 「しっぽの...
【漢字探し】「妍(ケン)」の中に隠れた一文字は?(難易度★★☆☆☆)
 知っているようで意外と知らない「ことば」ってたくさんありますよね。「校閲婦人と学ぶ!意外と知らない女ことば」では、女性...
夫の「相手」と直接対決した結果…妻が抱いた不思議な感情。ベッドでありえない“未来”を夢想する夜
 亜理紗は夫・慶士の不自然な泊り大阪出張の真相を探るべく、浮気相手である女のインスタを見て、大磯のプールリゾートへやって...
“清純系”女の視線にゾッ…地獄を見せるはずだったのに。29歳の妻が企んだ稚拙な復讐
 亜理紗は夫・慶士の不自然な泊り出張の真相を探るべく、浮気相手である女のインスタを見て、大磯のプールリゾートへやってくる...
「なめられてたまるか」出産直前、夫は女と沖縄へ…密会場所に乗り込む“元ギャル妻”の計画
「明日の本社への出張さ、やっぱ早朝に出て新幹線で行くわ」  1カ月前から予定されていた夫・慶士の大阪出張。 ...
「ウチは犬派だ」で険悪に…義両親との会話がハードモードすぎ! 帰省時のテッパン会話5つ
 お盆の帰省で、頭を悩ませるのが義実家との付き合いです。義実家とは年に数回、長い休みの時しかにしか会わないという方も多い...
65歳の男が「完璧な人間=幸せ」じゃないと気づいた瞬間。やっぱり人間は好きなことでしか頑張れない
 コミックや書籍など数々の表紙デザインを手がけてきた元・装丁デザイナーの山口明さん(65)。多忙な現役時代を経て、56歳...
スナックで見た! 実際にあった“ホステス同士”の陰湿なバトル「京都の女、嫌いなんだよねー」にヒヤッ…
 夜の世界を描いたドラマや漫画、きっとみなさんも一度は見たことありますよね。  その中に出てくる女同士のケンカって...
“毒親”に我慢しないで。酒で暴力、友人と肉体関係…絶縁を決意した5人のエピソード
 実の親子であっても分かり合えなかったり、親に苦しめられたりする人もいるもの。場合によっては、縁を切る選択がふさわしいケ...
賃貸の壁、将来の不安…独女が「ひとりで生きていく」ってどうすれば? これからの“住まい”を考える
「アラフィフ独女、51歳、フリーランス」この3点セットで生きていると、ふとした瞬間に「このまま、ひとりで歳を重ねていくの...
41.8度だってよ! 暑すぎて働けない…夏のやる気ゼロ→私がモチベUPできた対処法4つ
 夏本番。朝から照りつける日差し、ムワッとした湿気、汗が止まらない毎日…。そんな中で「今日も仕事か…無理かも」と思ってし...
ゴクリ…日本最大級“にゃんたま”様に出会ってしまった。撮影困難な生きる伝説にひれ伏す!
「にゃんたま」とは、猫の陰嚢のこと。神の作った最高傑作! 去勢前のもふもふ・カワイイ・ちょっとはずかしな“たまたま”を見...
大切な“お盆”は何を供える? 花屋がオススメする4選。ホオズキにはご先祖様を導く願いが
 もうすぐお盆がやって参ります。  お盆の時期は地方によって7月か8月に分かれますが、お盆とは、仏教でいうところの...